【感想・ネタバレ】愛と経済のロゴス カイエ・ソバージュ(3)のレビュー

あらすじ

カイエ・ソバージュ第3巻。 モース、マルクス、ラカンを超えて、21世紀の贈与論へ! 本当の豊かさとは? 資本増殖の秘密とは? 貨幣と 貨幣と魔術。愛と資本主義。 全体性の運動としての経済と精神の構造は同一である。 資本主義の彼方に出現する「未知の贈与論」を探究する。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

初期マルクスの「経哲草稿」には、愛に触れたこんな一節があるとは些か不意をつかれた感がした。
「きみが愛することがあっても、それにこたえる愛をよび起すことがないならば、換言すればきみの愛が愛として、それにこたえる愛を生み出すことがないならば、きみが愛する人間としてのきみの生活表現によって、きみ自身を、愛された人間たらしめることがないならば、きみの愛は無力であり、一つの不幸なのである。」

これはまさしく愛の互酬性、贈与としての愛の言説ではないか、と。自分自身を愛するのではなく、他者を愛することによって、かえって自分自身が愛される人間になるという、愛についてのこの謂いが格別特殊なものでもなく、ごく自明の言質というべきなのだが、マルクスの言というだけで、私が抱いてきたマルクスへの既視感を逸脱して、私にはかなり新鮮に映るのだから奇妙なことではある。

本書で中沢は「資本論」に結実していくマルクスの思考は、その出発の時点では贈与論の思考をあらわに表に出しながら展開されていたものとし、マルクスは最後まで贈与論的な思考に支えられていたと想定したうえで、マルクスの思考の背景に流れる、愛の互酬性、贈与としての愛を読み解き、貨幣の交換原理に互酬と純粋贈与の贈与論を対置させ、すでにグローバル化してしまった資本主義社会に対抗し、これを突き抜けうる人間世界の理論を構築しようとする。

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2022年08月21日

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