【感想・ネタバレ】上海 多国籍都市の百年のレビュー

あらすじ

アヘン戦争後、一八四二年の南京条約によって開港した上海。外国人居留地である「租界」を中心に発展した街は、二〇世紀前半には中国最大の「華洋雑居」の地となり繁栄を極める。チャンスと自由を求めて世界中からやって来る移民や難民たち、英米日の角逐、勃興する中国の民族運動。激動の時代のなかで人々はいかに暮らし、何を思ったのか。本書は国籍別の検証を通じ、上海という都市独特の魅力を余すところなく伝える。

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Posted by ブクログ

中国の一地方都市にすぎなかった上海が、アヘン戦争後の南京条約により開港し、約100年間の租界時代を経て国際都市に発展して行く様子について、日本人や英国人、米国人、白系ロシア人、ユダヤ人などが租界および中国社会に与えた影響や、これらの外国人たちの租界でのライフスタイル、中国人との交流などを通して描いている。個人的には太平洋戦争前後の上海と言って思い浮かぶのは、魔都、アヘン窟、ジャズ、紫煙といった漠然とデカダンなイメージだったけれど、行政や経済、文化活動、建築スタイル、居住外国人の本国の政策などの説明を受け、上海という都市の変遷をより細かく分かることができて面白かった。

上海を開港させた英国が租界を設置したのが1845年。同じくアヘン戦争で英国の植民地となった香港とは異なり上海は引き続き清朝の領土であり続け、英国は行政権を持ってはいたものの実質的な租界の運営は当地に居留する外国人の行政組織に委ねられた。もともと自由貿易を行う商人の便宜のために設置された租界は、後に米国の租界と合併して共同租界となってからより自由都市の性格が強まり、ユダヤ人やロシア革命を逃れた白系ロシア人が大挙して押し寄せている。日清戦争を契機とする外国の投資の増加で産業革命が進み、英国への茶の輸出が減少する代わりに紡績業などが急速に発展、1920〜30年の大戦間には金融の一大センターとして繁栄の極みに達したが、上海事変の辺りから日本の進駐が進むに連れ雲行きが怪しくなる一方、それ以前から上海の中国人知識人が租界を帝国主義の象徴だとして回収を求めるなどの運動があり、領土でもない租界を守るという英米など本国の意志表示がないまま、租界の歴史は一旦幕を閉じることになる。

本書に掲載されている第二次上海事変後の日本軍による共同租界を貫く大規模なヴィクトリーマーチの写真には、私服の外国人が行き交う中6000人もの日本兵が行進する様子が写っており、これはもう超KYという感じで興味深かった。地名や建物の名前などわりと細かく出てくるので、現地に行くときに読むのがより良いと思う。

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2012年06月05日

Posted by ブクログ

上海租界の設立から第二次世界大戦を経た租界の終焉までを扱う。イギリス人、アメリカ人、ロシア人、日本人、ユダヤ人、中国人のそれぞれの視点から見た租界像を描く。実際には上海には多数の国籍の人が混在し相互に影響し合っているが、確かに国籍別に眺めると理解しやすい面があるようだ。
西洋人が支配したからこそ発展できたこと、華開いた文化があり、中国においても極めて特殊な街だ。

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2024年11月23日

Posted by ブクログ

ここ数年、散々っぱら上海に行ったのに歴史について何も知らないなあと思っていた。上海の近代史を知りたかったのでこの本を。といっても近代史しかないんだけど。そもそも租界って何なのかもあやふやだったのだけど、こんなにも色んな国が出張っていた場所とはしらなかった。その色んな国、イギリス、アメリカ、日本、それぞれの視点からみた上海の変遷を垣間見ることができる。こんな人たちもいたのかと驚きだったが、ロシア難民とかユダヤ難民から見た上海というのも描かれる。そして中国近代史の主人公たち、孫文、蒋介石とか毛沢東たちが、上海を舞台に戦争・革命が繰り広げる。ああこういうことが起きてたのねって、初めていろいろな中国史が腹落ちした気分になれた。上海ってイベントフルな場所であったことをつくづく感じさせられる。文革後10年以上眠っていた上海を、最後に蒋介石が再び目覚めさせる、っていう終わりも良かった。

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2020年05月08日

Posted by ブクログ

上海に行くにあたって読んだ本。
新書だろうと思って手にしたが、上海の歴史がかなり細かく書かれており、特に外国が上海の発展にどうかかわったか詳しく書かれており勉強になりました。
歴史的背景の勉強には良書だと思うが、その歴史が現代にどうつながっているのかをまとめた記述も欲しかった。

序章 上海租界の百
第1章 イギリス人の野望
第2章 アメリカ人の情熱
第3章 ロシア人の悲哀
第4章 日本人の挑戦
第5章 ユダヤ人の苦難
第6章 中国人の意志

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2012年05月05日

Posted by ブクログ

上海の歴史を知るには便利な一冊。
上海に入り込んだ国を、各国ごとに章に分けているので、読みやすかった。

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2010年07月14日

Posted by ブクログ

近代上海において、主に外国人(英米日、白系ロシア、ユダヤ)がいかなる思いで暮らしたのかが書かれている。そこには人種の問題はもとより、階級、ジェンダーの問題も垣間見える。
ただ、日本人と中国人の章にはいささか物足りなさを感じた。

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2011年09月05日

Posted by ブクログ

 上海の歴史。今いる場所がどのように歩んできたのか。陸の孤島として、ほぼ完全に多国籍都市として成長と沈没を繰り返してきた歴史だ。
 まず権益を独り占めにしたのはイギリス。1845年に租界地を勝ち取ったイギリスは、支配層として優雅なくらしをしている。娯楽の少ない中国において、食事とりわけディナーが重要で、本場顔負けのフルコースを楽しんでいたそうだ。1900年初頭には、中国人の中にもかなりの所得格差が表れ、洋服を買うように車を買う人がいるという記述もあるくらい。なんとなく、今の中国と同じだ。外国人が裕福な暮らしをしていて、一部の中国人がそれに乗って大金持ちに。1920年代には日本人が多数移民し、虹口エリアに10万人規模の日本人街ができた。今の古北エリアに似ているが、日本語だけで生活でき、まるで日本のようであったというのは、今の古北とまったく同じ。日本の本の記述ということで割り引いて考えても、それにしても日本軍はひどい。今の文化とレベルの高いモラル、クリーンな都市とデザインを守りたい。それが、日本の孤高の良さだから。

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2011年03月20日

Posted by ブクログ

租界としての上海のはじまりから終わりまでを解説している本。

わかりやすく、概要をつかむことができる。
面白いかどうかは微妙。単純に、勉強になる。

日本軍が戦時中にやってたことの影響とか、あんまり意識したことなかったけど結構このへんは影響あったね

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2010年03月20日

Posted by ブクログ

上海租界について書かれた本は多数あって大変なのですが、榎本泰子さんの新刊は上海租界に住み着いた人々を国籍別に1.イギリス人の野望2.アメリカ人の情熱3.ロシア人の悲哀4.・日本人の挑戦5.ユダヤ人の苦難6.中国人の意思と章立てて描いているのが特徴。あ、中国に関しては文化大革命まで触れてます。章を改める毎に1830年代〜二次大戦終結までを繰り返し描くのが判りやすかったです。収録された図版も今までの租界を描いた本の中でとても判りやすいものでした。

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2011年08月19日

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