あらすじ
仕事を辞めて親友の元へ身を寄せるため、岩手県盛岡市行きの電車に乗ったあさひ。だが電車はいつの間にか「まほろば温泉駅」という存在しないはずの駅に到着してしまう。聞けば、ここは命を落とした人々が現世の心残りを洗い流すため、山の姫神が開いた温泉郷だという。戸惑うあさひに、電車の運行と宿を管理する湯守の少年が仕事を手伝うように促す。姫神の眷属の霊狐・白夜や湯守に見守られながら客をもてなすうち、あさひは切ない真実にたどり着く。
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Posted by ブクログ
宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」を思わせると帯にあったように、どこか彼の思い描いたイーハトーブの空気を感じたように思います。
また、理不尽に訪れた死に対しての向き合い方とか、別れの仕方とかも、宮沢賢治のエッセンスを感じました。
これは間違いなくイーハトーブの物語。
プラス遠野物語の空気も。
死に対して肯定的に捉える人が前半多かったので、後半に否定派の方が出てきたのもよかったです。
誰もが素直に受け止めてしまったら、ただの都合のいい物語になってしまうので。
湯守の正体は分かりやすい伏線が用意されていたので、自ずと察することができましたが、あさひの現状までは考えが至らず、クライマックスでは大いに驚きました。
無事に帰ることができて本当によかった。
「銀河鉄道の夜」のラストが納得できなかったという作者さまのアンサーとして、最後に彼女の親友と電車内でお別れできたのも素敵だったと思います。
この親友の正体にも途中で驚かされましたが……
死者と電車の要素、雪に包まれた東北の大地。
宮沢賢治の物語が好きな人にはたまらない物語だったと思います。
また登場する食事がどれも美味しそうで。
家庭料理から郷土料理まで、逐一美味しそうなので、物語に泣けばいいのか、お腹を空かせばいいのか、大いに悩みました。
ただ言えることは、読み終わった後は、食事の一つ一つをより大切に思えるようになる、ということでしょうか。
日々悔いなく生きて、悔いなく食べたいものです。