【感想・ネタバレ】オートフィクションのレビュー

あらすじ

22歳の女性作家・リンが新たに執筆を依頼されたのは自伝的創作=オートフィクションだった―。なにものによっても埋めることのできない、深い孤独を抱えた彼女が語り始めた「オートフィクション」は抹殺したはずの過去を描き出す。切り取られたいくつかの季節と記憶。通り過ぎる男たち。虚実が錯綜し破綻した世界の中で、彼女が見いだしたものとは。著者渾身の傑作長編。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

オートフィクション(自伝的創作)にもかかわらず、リアルを感じるというか

22th winter から15th winter と22歳から15歳のリンまで話は遡っていくわけだが、どれも男との衝突。
その中で、他人に責任を押し付けたい、責任逃れしたい、でも自分が全ての責任を持てる様になりたい。という価値観がみえ、それは子どもで自分じゃ何も決められない、家に帰る時間すらも決められなかった子ども時代の堕児の経験からなのか。

想像の話でしかないが、作中のリンにオートフィクションとして語らせることで、自分の私小説を書くことを試みたのだろうか

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2023年11月03日

Posted by ブクログ

ネタバレ

リンは、勉強も嫌いで、ろくに学校にも行かずにふらふらしているギャルだ。でも頭の中ではたくさんのことを考え、考え、考え続ける。自分がなぜこんな言動をとるのか、自分が今何を感じているのか。頭の中は言葉でいっぱいだ。いっぱい過ぎて、「本当の自分」と「言葉によって考えられた自分」の間にさえ乖離が生じ始める。言葉にすればするほど、嘘が混じり始める。それが、22歳の時点で小説家となっているリンだ。
解説の中で山田詠美が指摘していた「小説家という病」。まさにこれは「小説家という病」を発症した(あるいは、生まれ持った)人間の記録なのだ。多分、ごく普通の人間は小説を書かない。書く必要がないから、書かない。リンのような書かざるを得ない人間が、小説を書く。
言葉、言葉、言葉。一時も休まる暇の無いほどの言葉の海の中で、沈まないために、息をするために、言葉を吐き出す。それが小説になる。それはリンの言葉でありながら、リンの言葉ではない。頭の中にあった時からすでに乖離は始まっているから。リンは男にすがっているように見えて、そうではない。リンは言葉にすがっているのだ、ずっと。15歳の冬、そのことに気付き、22歳の冬、自分からシンに別れを告げてパソコンに向かう。本当はずっと、言葉だけが自分を救ってくれると知っているから。

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2016年12月11日

Posted by ブクログ

ネタバレ

4つの連作短編。22歳の章が良かった。意味不明な奇声は影を潜め、じっくり読ませる地に足のついた作品。細かな心理描写、深く掘り下げられた冷静な自己分析。著者の真摯な姿勢が読み取れ実に清々しい。猥雑な卑語の連発も全然気にならなかった。
「生じている矛盾に不満や不安を感じ思い悩み、震えながら取り乱しながら、それでも、無視することで目を逸らすことで生きてゆく上で必要な自分自身のバランスをとっている。」著者の面差しがよぎった。
オートフィクションとは、著者の自伝ではないかと読者に思わせる作品のこと。

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2012年07月17日

Posted by ブクログ

ネタバレ


身勝手で自己愛に溢れた主人公を中々受け入れられず、堪えるように読み進めていたつもりが、いつの間にか自分もこの物語のスピード感に巻き込まれて読み切っていた。

リンのセックス中心の世界は15歳まで立ち返ってもその理由となるようなものはなかったように思う。正しく愛情を享受出来なかったから、なんて安い理解はしたくない。

ただそういうものなのだろう、と思った。
直感であり宿命的なもの、それがリンの場合、極端に発出しているだけで、人は誰だって理由もなく好きなものがあり、嫌いなものがある。

22winterの最後はこれまでの生き方や呪縛から束の間解消されたように思えて印象的だった。
(束の間、とあえて書くのはきっといずれ彼女はまた誰かと出会い、猛烈に衝突することは免れられないと思うから。金原ひとみさんの他の著作での言葉を借りれば猪と衝突するように。)

16summerでもパチンコ屋で文庫本を片手に男を待つように放浪していても彼女の身近に文学があったこと、22winterでの小説家という職業

書くことで救われてきた、金原さん自身のオートフィクション、として素晴らしいと思った。

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2023年09月19日

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