あらすじ
桜宮市に新設された未来医学探究センター。日比野涼子はこの施設で、世界初の「コールドスリープ」技術により人工的な眠りについた少年の生命維持業務を担当している。少年・佐々木アツシは両眼失明の危機にあったが、特効薬の認可を待つために5年間の“凍眠”を選んだのだ。だが少年が目覚める際に重大な問題が発生することに気づいた涼子は、彼を守るための戦いを開始する。人間の尊厳と倫理を問う、最先端医療ミステリ!
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【電子書籍・共通あとがき】
【著作解説】電子版あとがき『モルフェウスの領域』
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付録1【海堂尊・全著作リスト】
付録2【作品相関図】
付録3【桜宮年表】
付録4【「桜宮サーガ」年代順リスト】
付録5【「桜宮サーガ」構造】
付録6【「海堂ラボ」登場人物リスト】
付録7【関連小文索引】
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Posted by ブクログ
最新の医療技術は誰のためにある? 最先端医療ミステリー!
日比野涼子は未来医学探究センターで、「コールドスリープ」技術により眠りにつく少年の生命維持を担当している。少年が目覚める際に重大な問題が発生することに気づいた涼子は、彼を守るための戦いを開始する……。
Posted by ブクログ
今後、コールドスリープする装置ができるかもしれないですね。
涼子の思い、アツシが一番良い状態で目覚める事、それだけを考えてお世話をしてきた思いが伝わってきた。全体的に言葉や表現、専門用語も多く難しいが海堂先生らしい。
田口先生もちらっと出てきましたね。
西野はとってもミステリアスだけど、
ほんとに涼子の事を思っていたんだなぁっと感じた。
最後の結末も、うーんそうきたかって感じでしたが、なかなかおもしろく読めました。
Posted by ブクログ
「桜宮サーガシリーズ」の未来編。SF小説である。未来の世界が描かれている。物語は「ナイチンゲールの沈黙」に登場した佐々木アツシを巡る展開。愚痴外来の田口、高階院長、小児科「オレンジ新棟」の如月師長らお馴染みメンバーの揃い踏み。今はない人間を長期間人工的に眠らせる医療技術が出てきて興味を誘う。
桜宮市に新設された未来医学探究センター。日比野涼子はこの施設で、世界初の「コールドスリープ」技術により人工的な眠りについた少年アツシの生命維持業務を担当している。アツシは両眼失明の危機にあったが、特効薬の認可を待つために5年間の“凍眠”を選んだのだ。だが少年が目覚める際に重大な問題が発生することに気づいた涼子は、彼を守るための戦いを開始する。人間の尊厳と倫理を問う快作。
いわばタイムスリップさせるわけだが、その間の時間との整合性をどう取り扱うか、作者の苦心の跡がうかがえる作品。
Posted by ブクログ
“私はモルフェウスの守護天使だ。”
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未来医学探求センターに勤める日比野涼子。
世界初となるコールド・スリーパーを見守ることが主な仕事だ。
目の治療をするために5年の凍眠を選択した少年。
涼子は彼をモルフェウスと呼び、目覚めの時を待つ。
そして、目覚めた後の彼をも守るべく涼子は動く。
*****
今まで海堂作品で出会った登場人物が多く出てくる本作。
時代設定は現実とほぼ同じ。
しかし、すごくSFチック。
実際凍眠はまだ現在の医療では不可能のよう。
そういう意味でちょっと現実味に欠けてしまうように思え、遠巻きに読んだ感覚もある。
多くの方もそうなんだとは思うけれど、眠った状態とはいえ棺の中に5年間。
想像してみると、かなり怖い。
でも、9歳のアツシは選択する。
5年後の未来に望みをかけて。
初の事例ということで法律や原則が組み立てられてゆく。
涼子は完璧と思われる凍眠八則を打ちたてた曾根崎伸一郎教授とメールでコンタクトをとる。
二人のやりとりは論理的思考が苦手な私はただただ「おぉ…」みたいなことになっていました…。
曾根崎教授をはじめ、今まで読んだ海堂作品のキャラクタがいっぱい出てくるので、他の作品を読んだ人はさらに楽しめるでしょう。
私は田口先生が出てくる作品群を読んだのがかなり前なので、また読み返さなきゃなぁという思いが強かった。
特に他の人間と親しくなるでもなく5年間公私ともにほぼスリーパーの傍におり、彼だけを見つめてきた、それゆえどうにかして彼を守ろうと決意する涼子。
彼女の出した答えはやり過ぎとも思える行為にも思える。
がんじがらめの鎖とならなければいいけれど…。
マニッシュ・リーパー、西野は怪しげで対峙したくないタイプのキャラクタながら何をするか読めなくてハラハラさせて盛り上げてくれた。
あくまでも主導権はいつも彼が握っているんではないだろうか。
彼の今後もかなり気になる。
どうやら続編?もあるようなので、そちらも楽しみ。
Posted by ブクログ
ナイチンゲールやらジェネラル・ルージュから伸びた枝葉の先。
続編のアクアマリンの神殿もそろそろ文庫化しないかな。
専門用語も多いけど、サクサク勢い良く読めてしまうのが相変わらず凄い。
バチスタシリーズよりはセンチメンタルな雰囲気。
Posted by ブクログ
この人の本はとにかく前半はゆっくり物語が進行して、後半で突然急展開する。これも目覚めまではゆっくりで、後半でなぞときが急展開。
でもこの話はこの作者に今までにない透明感で、終わり方もなかなかオツだった気がする。新しい方向?
Posted by ブクログ
続きが気になってどんどん読める。
後半一気に読んでしまったので、分かりにくい部分もあった。後でまた読み返してみようと思う。
西野のキャラが憎めない。
田口先生や佐藤先生など、他の作品のキャラがたくさん出てきてテンション上がった。
Posted by ブクログ
近未来。自らの病気を快癒させてくれる新薬が開発されるのを待つため人工凍眠を受けることを選んだ少年を、守ろうとする1人の女性の物語。冒頭、ちょっととっつきが悪かったが、話自体は面白くどんどん読めました。著者の他の作品の登場人物がたくさん出てくることも楽しい。ただ、個人的に主人公に感情移入しきれなかった。ラストの彼女の選択も、衝撃は覚えたものの感動につながらなかったのでちょっと残念。
Posted by ブクログ
【天才同士の空中戦を楽しめる本】
コールドスリープで眠っているモルフェウス(ギリシャ神話の夢の王)ことアツシとそれを見守るサポーター日比野涼子。
スリーパーの人権などを保護する、または遺棄する凍眠8則の在り方を吟味しながら、コールドスリープの社会概念を考える物語。
製作者西野がコールドスリープを世に送り出す価値を説く。社会に封印されようとする自分の作品を残すために、マッドサイエンティストながらもその方法を模索する。涼子に恋心を抱き、次第に互いに信頼を寄せるようになる。
涼子はモルフェウスに愛情を持つが、契約上目覚めたアツシには触れられることができない。誰も身寄りのないアツシの存在を正当化するために、ひとりぼっちにさせないために自らをコールドスリープすることにした。
アツシは自分への涼子の深い愛情を感じたため、西野とともに、涼子のサポーターになることを決意する。
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涼子のモルフェウスに対する愛情はとてもよく感じられた。涼子の過去の話は大きくは出てこなかったが、アツシと重なる部分があってこの子を守りたいと共感できたのかな、と読み解くことができた。
ステルスシンイチロウとのメールでのやりとり、西野との攻防は知的でとても面白かった。正直、理解が及ばない部分や置いて行かれた部分もあったが、それも天才同士の合戦と思えば部外者的に楽しむことができた。
最後のシーン、涼子がコールドスリープを決め装置に入る直前の西野の独白はどんな意図があったのだろうか、推察するのが面白い。
海堂さんの文章がとても魅力的で専門語を駆使ししながらも、感情を揺さぶるような表現が随所に現れていた。
どのキャラクターが前作に関わっていたのかも知りたくなったので、バチスタシリーズもゆくゆくは読んでみたいと思った。