【感想・ネタバレ】「読まなくてもいい本」の読書案内 ──知の最前線を5日間で探検するのレビュー

あらすじ

「何を読めばいいんですか?」と聞かれるたびに困った。「読むべき本」が多すぎる! だから「実は読まなくてもいい本」を決めればいいのでは、と考えた。「知のパラダイム変換」が起きた今、複雑系、進化論、ゲーム理論、脳科学、ICT(情報通信技術)の分野で「読むべき本」が浮かび上がる驚きの読書術。文庫版書下し「リベラル化する世界の分断」を加えパワーアップして再登場!

...続きを読む
\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

Posted by ブクログ

ネタバレ

【複雑系】
マンデルブロ、ベキ分布、世界の根本法則とは複雑さにも秩序がある→リアス式海岸、カリフラワー、
それはフラクタル。自分を次々複製する自己相似により自己組織化、ラフネス(複雑さ)を生み出すことでベキ分布に至る。マンデルブロ集合。世界は単純なものの重なりで複雑になっている、複雑系のスモールワールド。
【進化論】
生命の本体は遺伝子であり、身体は乗り物。遺伝子を広めるためには自分が子供を産むだけではなく姉妹に産ませる方が効率的なこともある(アリやハチなどの社会的昆虫)、感情や心も遺伝子を残すために進化して生まれた。ダイエット出来ないのも進化論に通づる。
遺伝子残したいって思うものなのか、思うか確かに。
【ゲーム理論】
理性的で合理的な人の考えなら読むことが出来、それを元に未来を予測できるもの。米ソ冷戦の際には核の牽制が行われたがゲーム理論により不発に終わった。経済に利用しようとしているが人の心には損を嫌う非合理性があるため上手くいかない、最近はビックデータに基づいて傾向を掴んでからその理由を後付けする方法「新しいマクロ経済学」が生まれる。
でもこれ予測がしづらいし再現性が不確定だから株の大暴落とかは予測できないんじゃ?逆に高騰するものを見つけるとかも。活かしたら強そう。
【脳科学】
脳は生き残るために平面の模様よりも立体のパターンを認識しやすくなった、これにより様々な目の錯覚が起きる。
意識の観測は難しく、未だ出来ていない。
リンゴはなぜ赤いのか、葉の緑の反対色で目立たせ、果実の中の種子を食べさせて運ばせるため。より赤く進化していくことが進化論で示される。
左右の脳のちょうど真ん中にある網様体賦活系と髄版内核群を少しでも損傷すると意識は永遠に失われる。
記憶は植え付けられる。それを利用した過去の記憶を用いた訴訟が昔流行った。
幼年時代を共有した異性とのセックスを避けよという進化の司令がある。
【功利主義】
正義を巡る立場には「自由主義(リバタリアニズム)」「平等主義(リベラリズム)」「共同体主義(コミュタリアニズム)」「功利主義」の4つがある。真の平等のためにはロールズが提唱した「無知のヴェール」による最も不遇な立場の人の利益の最大化を求めることが必要だという。併せてセンも機能と潜在能力の最大化による公平かつ衡平な分配が必要だという。車椅子の人でも普通の人と同じように生活を楽しむための社会保障、普通の人を超えてはいけない。「新しい功利主義」はマーケットデザイン、ナッジ、アーキテクチャなど環境を用いて人類の幸福な社会を目指す、サイバー・リバタリアンの台頭。

でも結局、何を幸福とするかに向かう必要があるのでそこでぶつかるんじゃないだろうか。
また複雑系のスモールワールドによってできた今の社会を後から変革は難しい気もする。
筆者は古いパラダイムの知識(哲学、心理学、社会学、法律学、経済学)を学んでも意味が無いと言うが、環境を整えどこに向かうかの方向性を考えるための哲学は大切なのではないか。

0
2025年11月08日

Posted by ブクログ

「はじめに」にある通り、読むのが大変そうな名著たちの触りをさらりと知ることができる。各章末のブックガイドに挙がっている入門書は読んでみたいものばかり。またいろいろな豆知識も得ることができた。「キューバ危機」って単語としては知っていたけれど、本当に核戦争一歩手前まで行っていたこと、そして、アメリカ側の当事者がジョン・F・ケネディであること。フォン・ノイマンがすば抜けた記憶力を持つ人物だったこと。「新車をもっとも安く買う方法」「プロスペクト理論」。

0
2024年02月04日

Posted by ブクログ

勉強になる本が紹介されてる本。実際に紹介されている本を読むと面白かった。ただし、難しい本も多いので、入門として紹介されている本から読むのがおすすめ。順番に読んでます。

0
2023年10月31日

Posted by ブクログ

土台は進化論で、その上に
進化心理学、行動ゲーム理論、行動経済学、遺伝学脳科学などの新しい知識が成り立っているらしいです。
各学問については、例を交えて解説があるので、自分がどの学問に引かれるかはこの本で把握できると思います。
おすすめとして取り上げられている本はどれも難しそうですが、意識高い系のインフルエンサーが書いた自身の成功体験書等よりは、脳に負荷をかけてしっかり学べる気がします。(まだ読んでませんが)
自分は脳を鍛える筋トレとして割りきって読もうと思いました。

0
2023年02月11日

Posted by ブクログ

非常に面白い本です。
数百年にわたって前提としてきた知の集大成が、今まさに再構築されようとしていると言うことがわかります。
ここ数十年での進化論の発達により、大きく様相が変わってきています。
端的に以下の文章が本書の内容を示しています。


遺伝学、脳科学、進化心理学、行動ゲーム理論、行動経済学、統計学、ビッグデータ、複雑系などの新しい〝知〟は、進化論を土台としてひとつに融合し、ニューロンから意識(こころ)、個人から社会・経済へと至るすべての領域で巨大な「知のパラダイム転換」を引き起こしている。

0
2022年04月13日

Posted by ブクログ

ネタバレ

「読まなくてもいい本」の読書案内 2019

「読まなくてもいい本」の読書案内
知の最前線を5日間で探検する

古いパラダイムでできている知識をどれほど学んでも、何の意味もない。

橘玲氏による著作。
2019年5月24日初版発行
本書は、2015年11月筑摩書房より刊行された。

本書は橘玲氏の「言ってはいけない」や「もっと言ってはいけない」のオリジナルとも言える本だ。
「言ってはいけない」は本書からのスピンオフなのだという。
橘玲氏によると世の中で出版される本の数は凄まじく多い。
人生で読めるのはその内のごく一部に過ぎない。
それが多少多かろうが少なかろうが、そこまで意味は無いのだという。
まあ、当たり前と言えば当たり前だ。
立花隆氏レベルなら違ってくるのだろうが、あれを真似することは不可能だ。
全ての分野を深く知ることは出来ないのだから、信頼できる著者の主張に乗っかるしかない。
本書は橘玲氏による科学の最先端を紹介してくれる。
読むべき本も見つかるだろう。

印象に残った点

人生において無駄な苦労をあえてする必要などまったくない。だが、既にしてしまった苦労をどのように位置づけて無害化ないし再利用するかは、重要な課題のひとつである。

本書が扱う領域は広大だが、これら全てのベースとなるのが進化論である。

読書の対象である学問や文化には時代に固有のパターンやプロセス、すなわち歴史がある。だから歴史をよく知る先輩からアドヴァイスが役に立つことがある。求めるべきは「読まなくていい本」をさんざん読んできた先輩からのアドヴァイスである。

古いパラダイムでできている知識をどれほど学んでも、何の意味もない。

1980年代には、NEC(日本電気)が開発したPC-9800が日本ではパソコンの主流で、98(キュウハチ)のOSを専門にするプログラマがたくさんいたけれど、マイクロソフトのWindowsの登場で全て駆逐され、その知識は無価値になってしまった。哲学や(文系の】心理学は、いまやこれを同じような運命にある。「社会科学の女王」を自称する経済学だって「合理的経済人」の非現実的な前提にしがみついたり、複雑系を無視してマクロ経済学の無意味な方程式をいじったりしている学者はいずれ淘汰されていくだろう。
大学教員の仕事は教養という権威を金銭に換えることで、ほとんどの文系の大学は彼らの生活のために存在している。その現実が明らかになるにつれて、風当たりが強くなってきたのは当たり前なのだ。

国際競争に勝つために高度な教育はごく一部のトップ校(G大学)だけにして、それ以外の大学(L大学)は職業訓練に徹すればいい、という提言も話題を呼んだ。
これに対して人文系の学者は(当然のことながら)「人間力を鍛えるためには教養が必要だ」と反論している。たしかにこの複雑で残酷な世界を生きていくためには知力だけでなく人間力も大事だろうが、彼らは根本的なところで間違っている(あるいは、知っているのに黙っている)それは、人文系の大学で教えている学問(哲学や心理学、社会学、法律学、経済学のことだ)のほとんどがもはや時代遅れになっていることだ。

「権力はきみの中にある。きみ自身がきみをしばりつけている権力なんだ」(フーコー)

その時以来僕は、「自分は善で(自分の外にある)悪=権力と闘っている」という物語をいっさい信用しないことにした。でもあれから40年近く経つのに、いまだ陳腐な善悪二元論を振りかざす人は減らないーというか、「韓国人を殺せ」と叫ぶ異様な集団を見ればわかるように、ますます目立つようになっている。
このことから僕は、もう一つの教訓を学んだ。
科学や技術は進歩するけれど、人は進歩しないのだ、ぜんぜん。

たとえばひとには「いったん手にしたものを失うことはものすごく抵抗するけど、最初から手に入らなかったものはすぐにあきらめる」という顕著な特徴がある。
(中略)
この性質をうまく利用したのが税金の源泉徴収制度

オプト・インとオプト・アウトで社会に対する影響に違いがないのであれば、どちらの政策が優れているかは明らかだろう。すべての社会問題を解決する魔法の鍵はないとしても、ヒトの進化論的なバイアスを利用して社会の厚生を大きく改善することは可能なのだ。

オプト・イン(ドナーに登録する方式)
オプト・アウト(臓器提供したくない人が登録名簿から名前を外す方式)

日本でもドナー登録をオプト・アウトにすれば、デフォルトを変えようとする人は殆どいなくなり、臓器提供の問題はたちまち解決するだろう。

オプト・インでもオプト・アウトでも本人の意志が尊重されることは同じだ。それにも関わらず結果に大きな違いが生じるのは、人が無意識のうちに「デフォルトを変えない」という選択をしているからだ。

市場のルールは株式取引などやったこともない法学者ではなく、経済学(ゲーム理論)を活用してつくった方がずっといいんじゃないだろうか。このように考える人が多くなるのは当然で、経済学的に合理的な法律をつくろうという「法と経済学」が今では世界の主流になっている。
日本の大学は法学部と経済学部が別々になっているが、これは完全な時代遅れだ。
法律(ルール)を功利主義的にデザインすることが当たり前になれば、経済学(ゲーム理論】の基礎づけのない市場の法は駆逐されていくだろう。
古い法律の世界に安住している人達は困るだろうけど。

マーケットデザインとは「市場の機能が使えない時に、ゲームを上手にデザインすることで市場と同じようなコアの分配を成立させる」技術のことなのだ。

囚人のジレンマから抜け出す→しっぺ返し戦略
1最初は協力する
2それ以降は、相手が前の回にとった行動を選択する

しっぺ返し戦略では、とりあえずどんな相手でも最初は信頼する。
それにこたえて相手が協力すれば、信頼関係を続ける。
相手が裏切れば、自分も裏切る。
だが一度裏切った相手が反省して協力を申し出れば即座に相手を信頼して協力する。

しっぺ返し戦略の強さの秘密は、その単純さにある。
複雑な戦略は、何をされるかわからないという恐怖を相手に与え、協力をためらわせる。
それに対してしっぺ返し戦略は、自分が協力すれば相手も協力し、裏切れば裏切り返される(搾取できない)ことが明らかなので、安心して付き合うことができるのだ。

人はなぜこれほど正義に夢中になるのか。
その秘密は、現代の脳科学によって解き明かされた。
脳の画像を解析すると、復讐や報復を考える時に活性化する部位は、快楽を感じる部位と極めて近いのだ。
復讐がなぜセックスと同じ快楽になるのか。
その理由は簡単で、せっかく手に入れた獲物を仲間に奪われて反撃しないようなお人好しは、とうの昔に淘汰され絶滅してしまったからだ。
生き残ったのは「復讐せざる者死すべし」という遺伝子なのだ。
共同体を維持する上でも、私的制裁(やられたらやり返す)は必要不可欠だ。
右の頬を殴られたら左の頬を差し出すのは立派だが、そんな聖人が増えれば好き勝手に相手を殴りつける無法者(フリーライダー)が跋扈するだけだろう。
こうして人やチンパンジーのような社会的な生き物は「正義」の行使(裏切り者を罰すること)を娯楽=快楽と感じるように進化してきた。ハリウッド映画から時代劇まで「悪が破壊した秩序を正義が回復する」という勧善懲悪の陳腐な物語がひたすら繰り返されるのも無理はない。
こうした説明を胡散臭いと感じる人は、インターネットの匿名投稿を見てみるといい。
ネットメディアの世界では、もっともアクセスを稼ぐ記事が有名人のゴシップ(噂話)と正義の話だというのはよく知られている。

人の一生は限られているから、人生で最も貴重な資源は時間だ。
「学問」の世界の既得権を守るために、使い物にならない古臭い理論を「アカデミズム」の名で(それも大学の高価な授業料まで取って)押し付けてくる人たちを相手にしている暇はない。パラダイム以前の学問を新しいパラダイムで読み返す、という学術研究はあり得るけど、それは専門家の仕事だろう。


生徒たちのつながり(社会的ネットワーク)はハブ&スポークに似たネットワーク構造になっている。

友達の法則
異なる友達グループ同士は交わらない
枝の末端にいる男子や女子が別の友達グループに恋人をつくることはない。
友達グループの中で、他の友達グループと交渉を持つのは一人だけ

幼少期に一緒に暮らした異性には性的感情を持たない
(フィンランドの人類学者エドワード・ウェスターマーク)

アベノミクスをめぐる論争を見ればわかるように、マクロ経済学の大きな特徴は専門家同士が罵詈雑言を浴びせ合うことだ(ちなみにミクロ経済学ではこんなことはない)
いうまでもなく科学に論争はつきもので、お互いに感情的になることもあるだろう。
だが科学論争は、最後は実験や観察によって理論を反証できるかどうかで決着がつく。

それではなぜ、アベノミクスをめぐって賢いはずの経済学者同士が口汚く罵り合っているのだろうか。この疑問に、マンデルブロならたった一言で答えるだろう。
それは、「マクロ経済学は科学ではない」からだ。

「動物行動学者」竹内久美子についても言及する必要があるだろう。
1980年代から1990年代にかけて、進化生物学や進化心理学を日本に広めたのが「浮気人類進化論 きびしい社会といいかげんな社会」(文春文庫)など竹内の一連の著作で、週刊誌の連載も人気を博した。だがこれらの著作は、現在では「進化論の乱用」として厳しい批判にさらされている。動物生態学・比較生態学の泰斗、伊藤嘉昭は「新版 動物の社会 社会動物学・行動生態学入門」(東海大学出版会)で、竹内の著作を「世界で一番大胆といえる社会生物学の悪用」として以下のように述べている。
「竹内はこれらの本(「浮気人類進化論」など)で自分を「動物行動学の一学徒」と称し、社会生物学の普及とある側面の発展で功績のあったR・ドーキンスの「利己的な遺伝子」の説を採用するならば、男の浮気は当たり前だから、「お偉方に複婚(特に一夫多妻)の合法化を提案してもらう」(「そんなバカな!」とか、福祉は「<子だくさんを望む><貧乏人の>遺伝子をふやす」だけだから悪である(同上)とか「特権階級は・・・最高で最善のシステム」だから「君主制が絶対正しいと私は思う」(男と女の進化論)などと書き散らしている。
竹内は、京大大学院にはいたものの、そこが中心だった日本動物行動学会で発表したことは一度もなく、研究論文も全く書いていないと思われるので、動物行動学者とは到底言えない。そして社会生物学の理論をねじまげ、全く反対のことまでいう」

これは学者としては極めて異例の、罵詈雑言に近い批判だ。伊藤がここまで書いたのは、竹内が日本の動物行動学の草分けで、瑞宝重光章を授与された京都大学の日高敏隆の門下生で、多くの共著を出していることから、専門家・研究者が日高に遠慮して「進化論の乱用」を指摘できないことに危機感を抱いたからだろう。
竹内は進化論を「悪用」して、一夫多妻制や福祉制度廃止、君主制待望など独自の政治イデオロギーを展開した。これは、現代の進化論が「右派」の主張と重なる部分を持つことを示している。その一方で、伊藤の批判の背景には明らかに「一夫一婦制」や「民主政」が正しいというリベラルなイデオロギーがある。竹内が反論すれば極めて興味深い論争になったかもしれないが、沈黙を守ったことで、現在はアカデミズムの世界では彼女の著作は存在しないものとして扱われている。


よく知られているように、ゲイとレズビアンの愛情やセックスのあり方は大きく異なっている。ゲイはバーなどのハッテン場でパートナーを探し、サウナでの乱交を好む。
エイズが流行する前にサンフランシスコで行われた調査では、100人以上のセックスパートナーを経験したと答えたゲイは全体の75%で、そのうち1000人以上との回答が4割近くあった。彼らは特定の相手と長期の関係を維持せず、子供を育てることにも殆ど関心を持たない。

それに対してレズビアンのカップルはパートナーとの関係を大切にし、養子や人工授精で子供を得て家庭を営むことも多い。レズビアンの家庭は、両親がともに女性だということを除けば(異性愛者の)一般家庭と変わらず、子どもたちはごく普通に育っていく。
(母子家庭の子供よりも社会的に成功する比率が高い)
一方、高齢のゲイ同士のカップルというのは殆どなく、養子をとることもないので、
人生の最後は孤独にさいなまれるのだという。


異なる生殖戦略を持つ男女は、利害関係が一致しないのだ

ローコストの男がより多くの子孫を残そうとすれば、できるだけ多くの女性とセックスすればいい。すなわち、乱交が進化の最適戦略だ。それに対してハイコストの女性は、セックスの相手を慎重に選び、子育て期間も含めて男性と長期的な関係をつくるのが進化の最適戦略になる。セックスだけして捨てられたのでは、子供と一緒に野垂れ死にしてしまうのだ。
男性は、セックスすればするほど子孫を残す可能性が大きくなるのだから、その欲望に限界はない。一方、女性は生涯に限られた数の子供しか産めないのだから、セックスを「貴重品」としてできるだけ有効に使おうとする。

「進化論的に優れた生き物」を議論するよりも、全ての生き物がそれぞれの進化の頂点にいると考えたほうがすっきりする。進化論は、生き物には優劣も貴賤もないというリベラルな科学なのだ。

知の最先端に効率的に到達する戦略は簡単だ。
書物を『ビッグバン以前」と「ビッグバン以後」に分類し、ビッグバン以前の本は読書リストから(とりあえず)除外する これを「知のパラダイム転換」と呼ぶならば、古いパラダイムで書かれた本を頑張って読んでも費用対効果に見合わないのだ。そして最新の「知の見取図」を手に入れたら、古典も含め、自分の興味のある分野を読み進めていけばいい。

人生は有限なのだから、この世で最も貴重なのは時間だ。たとえ巨万の富を手にしたとしても、殆どの大富豪は仕事が忙しすぎて、それを殆ど使うことなく死んでいく。
同様に、難しくて分厚い名著で時間を浪費していては、その分だけ他の有益な本と出会う機会を失ってしまう。

人類が生み出した知の圧倒的な堆積を知ると、どの本を読んだとか、何冊読んだとかの比較に何の意味もないことがわかる。15歳から85歳まで毎日1冊読んだとしても、死ぬまでに書物の総数のせいぜい0.02%(2万6000冊)にしかならない。それを0.03%に増やしたとして、いったいどれほどの違いがあるのだろう。

本の世界もこれと同じで、読者の興味の多様化、学問分野の細分化、新刊点数の増加によって、ハリーポッターや村上春樹といった例外を除けば、みんなが共通の話題にできる作品は無くなってしまった。

0
2021年12月23日

Posted by ブクログ

ネタバレ

著者の作品に興味を持った方には是非おすすめしたい一冊。

著者の数々の本でベースとなっている知識が部分がたくさん詰まっています。

この本を読む直前にショーペンハウエルの「読書について」を読み、文庫版解説に同書の引用がされていたことには個人的に痺れるものがあった。

0
2021年12月19日

Posted by ブクログ

進路を考える前の若い世代の必読書。私自身、残念な法学部卒だ。この本を高一までに読んでいたら「理系」(この分類も時代に遅れているけれど。)を選択していたはず。

0
2021年09月18日

Posted by ブクログ

橘さんの本は好きで、よく読んでます。その博識ぶりから察するに、橘さん自身もものすごい読書家なのではないかと思います。そんな橘さんが、『現代の知を語るならこれくらいは知ってなきゃダメ』という内容を整理し、それらを学ぶために最良の書籍のリストを作ってくれました。内容は完全に『読むべき本』の読書案内です。タイトル後半部分の、『知の最前線を5日間で探検する』の方が内容をよく表しており、まさにこの書籍は知的探検のための最良の指南書です。本文中に、『古いパラダイムでできている知識をどれほど学んでも、なんの意味もない』と書いてあり、古い知識のいくつかが紹介されていますが、それらも歴史として学べばさらに自分の教養の引き出しが多くなると思います。ただ、膨大な知識体系を300ページの本1冊でまとめようという野心的な書ですので、やはり説明は簡素ですし、橘さんの私見も多分に入っていますので、やはりこの本を読んで終わりにするのではなく、紹介されている多くの本にチャレンジしてみるべきだと思います。 何にしても、おススメの本です。

0
2020年09月06日

Posted by ブクログ

複雑論や脳科学といった雑多なジャンルの内容を一気読みする本。読書案内というよりも、これ読めばその分野についてだいたいわかるよという感じ。
確かに、その分野のプロでもなければこの本の内容だけで十分すぎるほどの知識が手に入る。2015年の本だから、現在のバージョンで読みたい一冊。幅広い内容をコンパクトにまとめており、作者の頭の良さがフルに発揮されている。

0
2024年11月16日

Posted by ブクログ

自分がいかに教養に欠けるかを思い知らされます。本書では、「複雑系」、「進化論」、「ゲーム理論」、「脳科学」、「功利主義」といった5つの領域の歴史と概要がわかりやすく説明されていてとてもためになりました。

特に印象に残ったのは最終章の内容の中の以下の4つの政治思想のところ。

・平等主義(リベラリズム)
・共同体主義(コミュタリアニズム)
・自由主義(リバタリアニズム)
・功利主義

なるほど。古いパラダイムを勉強するより、今の時代に即した新しいことをどんどん学ばねばなりませんね。それって、、AI?


8年も前の本だけれど普遍的な

0
2023年09月15日

Posted by ブクログ

歯ごたえがあり過ぎて噛み切れない。ようやく嚥下しても消化できない。知的欲求が深く、広く満たされる本。読まなくても良いというより、今必要なパラダイムに触れる事が重要で、上書き更新される前の価値観は優先度が低いという事。

カニッツァの三角形という錯視図形がある。三角形そのものを描くのではなく、パックマンが三匹口を開けたような配置で、その空白部にまるで三角形があるかのように錯視させる。これに対し、純粋意識がどうとかいうが、単に人間の脳が進化論、生物学的に、その空白部に意味付けをしているに過ぎない。この話は本著にも引用されるが(橘玲は学者ではなく、論文の紹介、オムニバスをしているだけだ)、本著の構成にとっては示唆的。つまり、不要な本を消去する事により見えてくるパラダイム。誤ったパラダイムに限らず、実際、1を聞いて10が分かる経験論的ショートカットにおいて2や3は不要。世の中、同義反復が多い。

面白い話、勉強になる挿話多数。私が最も好きな話を編集して引用する。

ー 80年代思想家はロックスターみたいなものだった。しかし日本ではなかなか翻訳がなかったので、何が凄いのか誰も知らなかった。とある思想書が日本語で読めると言うことで当時の文系学生の間で事件になったリゾームという雑誌。それを読んでもう何が書いてあるのかさっぱりわからなかった。こうしたムーブが急速に廃れていく。そのきっかけは、物理学者アラン・ソーカルによる一つの論文だ。ソーカルはずっとポストモダンの思想家が物理学や数学の専門用語を濫用することが不満だった。文系の知識人が使う科学的な概念や述語がほとんどデタラメだからだ。そこでソーカルは、そのでたらめを適当につなぎ合わせて論文ぽく仕立て、最も権威があるとされた思想誌に投稿。すると、そのインチキな論文が掲載されてしまった。これにより、実は誰もが論文の内容を全く理解していなかったことが明るみになった。

今でもこうした事は良くある。本読みとして、肝に銘じておきたい錯視だ。

0
2023年08月06日

Posted by ブクログ

これから先の未来を見通してみたい。だが、モヤモヤするなぁ。とそんな気分の時に知り手にした書籍。世界はミクロマクロの中でトレードオフされゲーム理論で修練する。そう言うお話でしょ。と事軽く論破してくれた様子が小気味良い◎タイトルの程は論の後に出典形式で参考書籍を列挙し態を保つが、それはどうでも良く。心はシュミレーションマシンで有るのワンセンテンスで十分だ(^^)あぁ気持ち良い晴れ渡る。美味しい読書体験完了

0
2022年08月24日

Posted by ブクログ

読まなくていい本というよりは、オススメの本を噛み砕いて教えてくれる本。
全部面白そうに感じた。オススメされた本をこれから読んでいこうと思う。

0
2021年11月21日

Posted by ブクログ

本書は、読書案内といいながら、筆者の考える重要概念を、筆者の言葉で一通り解説している本。読まなくてもよい本が実際に書いてあるわけではない。

初めて橘氏の著作を読んだが、1959年生まれということで、自分より7年年上の先輩にあたるといえる。重要概念の説明の仕方が非常にうまく、例えば、PC(Politically Correct)のあたりの話はうまい。PCにひっかからないように、イデオロギー化する危険を指摘しているバランス感覚がある。

1複雑系
・フラクタルをマンデルブロが考えた後で、カオス理論が出てきた。

2進化論
・グールドの進化論批判は道義的な動機で行われたので、アカデミックには今一つ
・竹内久美子は、動物行動学者としては、まったくもって不適格の烙印

3ゲーム理論
・ベスト&ブライテストの動きとしてのキューバ危機
・経済学より国際政治にあてはまる

4脳科学
・ここ(意識)がニューロンの電気的・化学的反応、すなわち物理的現象にしかすぎないことを明らかにしつつある
・行動は7秒前に予測されている
・意識に現れる「自由な心」はよくできた幻覚にすぎない
・社会科学は自然科学に統合されていく

5功利主義
・トレードオフがある以上、すべてのひとが満足することはありえない
・正義はエンターテインメントである
・自由、平等、友愛が政治的党派のオリジン
・功利主義には進化論的基礎がない

0
2021年09月27日

Posted by ブクログ

進化論、遺伝の影響、行動経済学など新しい科学の知恵を取り込んでいない本は、世界の実情を移していないので読まなくて良い、と断言する。

0
2021年08月08日

Posted by ブクログ

絶望とともに、希望をもたらす一書。複雑系・進化論・ゲーム理論・脳科学・功利主義という「知のビッグバン」は、諸学をそれ「以前」と「以後」とに明確に分けてしまう程のインパクトを持っていた。それ「以前」に拘泥している私は、これからどうすればいいのだろうかw

0
2021年07月09日

Posted by ブクログ

2019年の5月に出た本。
書き方が良かったのか、とても面白くてすぐに読めてしまった。
現在の知識社会を知るには何を知ればいいのかを、
 複雑系、進化論、ゲーム理論、脳科学、功利主義について簡潔にわかりやすく書いてある。

それだけだったら、☆3だけで普通の本だけど、これらが一個バラバラでなく、見事に点と点を繋いで線になって統合されておて、思わずおお!となった。
まさに知のガイドブックって感じ

0
2021年01月02日

Posted by ブクログ

後に『言ってはいけない』へと続く論理展開。読まなくてもいいのは、自然科学の進歩によって、その存在意義を失った哲学やフロイトの精神分析など古い認識・考え方で書かれた本。人生は短く、読める本は有限だからこそ、本を選ぶ必要性を教えられた。進化論ではヒトの不合理な経済行為まで説明し得る。各章末のブックガイドで、また読みたい本が増えた!

0
2020年04月06日

Posted by ブクログ

本の案内本としての著書だが1冊の読み物として十分知識を得られる内容になってました。
進化論が各学問へどう影響しているか。またそういった新しい学問がまだまだ日本では定着しきってない現状でどう古い知識を払拭して世の中を少しでも良くしていけたらいい。そういう思考のヒントになるかと。

そうとはいえこの内容を自身の為になるようにはどう使っていけばいいかは少し考える必要があった。
そして紹介されてる著書はとても読みごたえありそうで興味ありそうなものから手にしようと思う。

面白い本でした。

0
2024年09月25日

Posted by ブクログ

面白かった。脳科学やゲーム理論など、単語は知ってはいるけど、どんなものなのかを説明した本。きっと大学1年生の授業レベルの知識はつくのではないか。ただ、読み終えて、さあ何に生かせるのかと思うと、あれっと思う。飲み会の話題で話すには長すぎるし、そしてそこまで会得してないぞ気づく。分かった気になるには良いかと思う。

0
2021年12月17日

Posted by ブクログ

こんなビジネス書はゴミみたいだから読むなみたいな内容を想像していたけど全然違った。複雑性や進化論など一見すると小難しいことをざっくりと紹介する本。
この本が取り扱うテーマは進化論、複雑性、ゲーム理論、脳科学、功利主義。

なぜこのテーマなのかはこの本を最後まで読むとわかるこれら全てつながっている。

進化論や複雑性など自分が知っているつもりだったテーマが多いと思っていたが知っている事と人にわかりやすく説明できることを文章としてまとめられる事は全然違うことであると感じる。その、この本の著者はこれらのテーマのことをよく理解していると思う。

しかしなあ。自分が興味ある分野がこれだけ一個人に網羅され解説本も出されてるとなると自分が貪るように本を読んでいるのは何なんだろうという気持ちになるな。自己満足のために読んでるはずなのに。

......
行くのはマンデルブロ単純な規則が複雑なものを乱すフラクタルと言う概念を見いだす。それを駆使し金融市場で成功したナシームニコラスタレブも登場

象の時間ネズミの時間 生物の個体の寿命は体重の4分の1乗に比例する。体が大きいほど動物の寿命が長い

ポリコレ、メリークリスマスはキリスト教特別扱いしているとしてクリスマスから新年にかけての挨拶はハッピーホリデイズに変わった

ゲーム理論。自分がだす情報は最小限に相手から引き出す情報は最大限に

プロスペクト理論は進化により説明ができる。得をするすなわち職業を得る事はリスクを取った大きなリターンよりも少ないリスクを取る確実なリターンが重要で奪われることつまり死に直結する事はリスクを取ってでもゼロにしたいと言う選好があった

統計は理論がなくても答えが導き出せる手法。経験的

記憶や感情意識意思といったものは脳の神経細胞の集まりとそれらの活動に過ぎないと言う論文が1994年に出版されている。意外と最近

近代科学の最大の武器は還元主義

フルーツが赤やオレンジなのは緑の反対色で動物に見つけてもらいやすかったから

ニューロンの仕組みはほぼ解明されておりそれが電気信号と化学反応による情報伝達やエントロピー増大の法則などの物理法則に従うのは当然のことであるがここから意識と言う奇妙なものの発生は説明ができないこれが心脳問題における最高度の難問

進化心理学における心とはシミュレーションマシン
脳科学における正義は娯楽(エンターテイメント)である

リベラルはデモクラット(平等主義者)と言う意味で使われている古典的自由主義はリバタリアン

0
2020年07月11日

「雑学・エンタメ」ランキング