【感想・ネタバレ】パリ警視庁迷宮捜査班のレビュー

あらすじ

停職処分が明けたばかりのパリ警視庁警視正アンヌは、新結成される捜査班の班長になった。しかし、集められたのは警視庁の落ちこぼれ、曲者ばかり。一癖も二癖もあるメンバーとともに、アンヌは20年前のフェリー沈没と二件の未解決殺人事件の不可解な謎を追う

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Posted by ブクログ

特捜部Qは動画しか見た事ないが、好きなジャンルだったため思わず手に取って読み始めた作品。特捜部Qとは違ったコメディ系のミステリー。
捜査班のみんなが何かしら問題ありで個性的なのがまた良い。役立たずそうで役立つ。そんな流れがスムーズで夢中になって読んでしまった。
最後まで犯人、動機が分からず、それもまたミステリー好きには新鮮な作品。
第二弾も是非とも読もうと思った。

変な部署に飛ばされても、腐らずそこでの最善を尽くす事が大事!と何気に日々頑張る力も与えてくれた作品。

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2022年09月18日

Posted by ブクログ

発砲事件により出世の道を閉ざされた停職中の警視正アンヌ・カペスタンをリーダーとする特別班

集められたメンバーは
因縁浅からぬカタブツで警察内の差別に苦しむルブルトン警視
脚本家として大成功をおさめた大金持ちのロジェール警部
相棒となった者が次々と事故にあい“死神“と呼ばれるようになり人嫌いを装うトレズ警部補
アルコール依存症でおしゃべりなサボり屋“鉛筆おじさん“ことメルロ警部
ヴァイオリンの教師から転職した警察官の汚職を暴き続ける垂れ込み屋オルシーニ警部
ギャンブル依存症のブロンド娘エヴラール警部補
パンチドランカーの元ボクサーで元凄腕のサイバー犯罪捜査官ダクス警部補
スピード狂で警察車両を次々と破壊するレヴィッツ
巡査部長
そしてそしてロジェールの飼い犬ピルー(彼だけは辞令なし)

はい、もう面白い〜!
こんなんもう面白いに決まってるじゃん!

あとはもう作者が余計なことはせずに特別班の面々に自由にやらせるだけで至極のコミカル・サスペンスの出来上がり!というあんばいです
実際作者のソフィー・エナフの絶妙な舵取りでそれぞれに得意分野を活かして迷宮入り事件を追って行きます

もうね〜こういうの大好きです
★5じゃ足りない面白さ!!
出会いに感謝!

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2022年05月06日

Posted by ブクログ

「パリ警視庁迷宮捜査班」1作目にして、作者のデビュー作。
落ちこぼれ警官が集められ、迷宮入り事件を捜査することに。
これが面白くて~大歓迎!

アンヌ・カぺスタンは、パリ司法警察の警視正。
30代半ばにして出世しているエリートだったが、犯人を射殺した件が過剰防衛とみなされ、半年間の停職になっていました。
局長のビュロンに呼び出され、特別班のリーダーに任命されます。
ところが、職場は警察署内ですらない古ぼけたアパート、捜査員はまだ停職中だったり何かと問題がある人間の寄せ集め。

有能そうなのは、ルブルトンぐらい?
彼はカぺスタンの処分を担当した堅物で、体格のいいハンサムだが、ゲイであることをカミングアウトしたために部署で浮いたのだった…
警察内のことをモデルに書いた小説がヒットしドラマ化もされた女性ロジェールは、収入があるのでアパートに次々に家具を持ち込み、飼い犬まで連れてくる。
ギャンブル依存症だった若い女性や、スピード狂の若者などまで。

相棒が次々にひどい目に遭ったトレズは疫病神と敬遠され、自らも怯えて人に近づかない。
カぺスタンはそんなトレズを気にせずパートナーにし、変わり者の部下たちの特技を生かして、臨機応変に捜査を進めていく。
左遷される前のカぺスタンが精神的に限界だったことも優しさを垣間見せ、出来ることに手を付けて淡々と進んでいくさまが好もしい。
変わり者たちの奇行っぷりは笑えます。

「特捜部Q」フランス版ともいわれるようで、確かに左遷された刑事にポンコツな部下がつき、意外な活躍をする話で、ユーモアもある。
「特捜部Q」だと部下は警官ですらないのだが…背景が重いものを含み、よく書き込まれています。
内容的には、パリが舞台のこちらの方が軽やかな雰囲気ですが、それはいかにもパリっぽい洒落のめした楽しさがありますね。
謎めいたモチーフの見え隠れする構成で、一見関わりなさそうな事件の重なり具合、迫力ある終盤、切ない幕切れと、面白く読めました。

カぺスタンは刑事を続けられるのかと自問し、上司の思惑も測りかねていたのが、ビュロンはただ厄介者をまとめて放り出したわけではなく、只者じゃないらしい。
そのあたりも~先が楽しみです☆

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2021年06月19日

Posted by ブクログ

なぜか憎めいない、個性豊かな登場人物に、いつの間にか親近感を覚えて・・・
後半は、早く事件の真相を知りたいような、痛快なやりとりをずっと読み終わりたくないような、そういう気分になる作品でした。

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2020年04月16日

Posted by ブクログ

フランス版SROシリーズと言う感じのミステリー。パリの街中も堪能できるし軽いけど確かな読み応えを感じた。兎に角続編が待たれてやまない。

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2019年10月12日

Posted by ブクログ

 まさに手作りの警察チームがパリに誕生する。セーヌ川中州シテ島の司法警察局ではなく、古びたアパルトマンの最上階に。ヒロインは、発砲事件で進退を危ぶまれた挙句、半年間の停職処分と離婚の後、警察署の掃き溜めの任命されたリーダーのアンヌ・カペスタン。パリ警察の問題児ばかりをここに集めて世界から隠したい。それがパリ警察の狙い。カペスタンは明確にそう言われる。取り組むのは迷宮入り事件のみだ、とも。未解決事件の段ボール箱が積まれた古く黴臭い部屋。

 対象警官は40名だが、ほとんどの者は停職中だから、勝手に集まってくる人間だけで遊ぶなり働くなり、勝手にやってくれ、という指示である。事件の解決など、はなから期待されていない。余計なことはせず、そこに隠れていればよい。そんな感じである。

 フランス版<特捜部Q>シリーズとも言われているみたいだ。デンマーク・ミステリの代表格でもあるユッシ・エーズラ・オールスンの<特捜部Q>は、警察署の地下室で、やはり未解決事件のみの捜査を任され、どこからスカウトされてきたのかわからない謎の最小人数の部下とともに難事件に挑むカールの大格闘ミステリである。なるほど。確かに凶悪な犯罪に対し、コミカルでユーモラスで開き直ったリーダーの存在が、一見使い物にならぬような部下たちを纏めて、組織の鼻を明かしてみせるという構造は、類似するところがある。それに、何よりもいい構図ではないか。

 花の都パリ。心に傷を抱えた部下たちとともに、本署が解決できなかった事件に立ち向かう部署。そんな設定の本書は、フランス国内で大いに人気を博し、現在のこの続編も既に二作が上梓されているらしい。本書は作家ソフィー・エナフのデビュー第一作であり、本シリーズの第一作でもある。だからこそ、新部署立ち上げの破天荒な様子が、まず奇妙で愉快だ。次々に登場する怪しい捜査官たちとその奇行には圧倒されるけれど、古いアパルトマンがどんどん風変わりな改装を施され、備品が思い思いに持ち込まれ、それぞれがコミュニケーションを重ねてゆく毎に、疑似家族を形成してゆく。それに捜査も何故か進んでゆき、出来損ないたちの表情も明るさを増してゆく。うーん、やはり、手作り警察、いいぞ!

 さて段ボール箱の中の複数事件に、二人チームずつ当たって始まる捜査なのだが、実はここが凄い。入り組んだ、文字通り迷宮のような段ボール箱の事件が、実は本書の完成図を作る上で重要なファクターとなるのだ。事件は事件であって事件ではない。事件は、チームの存在や根幹に関わるものとなり、捜査は実はスケールの大きな風呂敷となって作品全体に広がってゆくのだ。あまりに核心に触れる部分なので、謎めいた表現になるが、要はミステリとしての根幹も素晴らしいのが本書なのである。

 1991年フロリダキーウエスト島でのどう関連するのかわからない人物の旅行中のエピソード、1993年の船員銃殺事件、2005年の老女絞殺事件、2012年現在のどう関連するするのかわからない人物の婚約のエピソード、2012年現在、迷宮捜査班チームの始動。さらにいくつものこまごまとした捜査模様。まるでバラバラの破片だ。

 しかし、それが見事に大団円に向けて、大きな一枚の画幅となってゆく。この仕掛け、凄い! コミカル・サスペンスとあるけれど、さほど軽くはないように感じる。むしろ、何らかの負の心を抱えた傷だらけの警察官たちが、互いに思い合える疑似家族の優しさの中で、徐々に再生を果たしてゆくヒューマン・ミステリとして捉えたい。傷を負った者たちが一丸となって事件を収束させる、言わば「やり切る」ことで癒されてゆく心と心の物語なのだ。とても良い読後感。人間中心のミステリって、やはりいい。ちなみに、登場人物表に犬が一匹紛れ込んでいるけど、この子も存在感があります(笑)。

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2019年05月12日

Posted by ブクログ

パリオリンピックも始まるので、現代のパリを舞台にしたミステリーもいいかなと思い読む。

帯にはコミカルサスペンスと謳ってあるが、タッチは軽いものの、そこまでコミカルではなく、むしろ一癖も二癖もあり、警察組織の中で落ちこぼれた面々の再生物語としての側面が強調されていたように思う。

解明される事件の中身もズッシリしたもので中々衝撃的な結末を迎える。そもそもの事件の動機が少し弱く感じるがミステリーとしても楽しめた。

二作目が出版されているようなので読んでみたい。

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2024年07月27日

Posted by ブクログ

フランスの作家ソフィー・エナフの長篇ミステリ作品『パリ警視庁迷宮捜査班(原題:Poulets grilles)』を読みました。
ジャン=ジャック・フィシュテルに続き、フランスの作家の作品です。

-----story-------------
フランスの『特捜部Q』!  スリリングで愉快な警察小説、開幕
フランスで15万部突破! 「コスモポリタン」名物ライターがおくる、スリルと笑い満載の傑作!

喧嘩っ早い性格がたたって停職処分を食らった警視正、アンヌ・カペスタン。
復帰後の仕事として、新しく結成される未解決事件捜査班を率いることを命じられる。
ところが、集まったのは、大酒飲み、ギャンブル好き、スピード狂、作家活動が本業と化している片手間警部、組んだ相手が次々不幸な目に遭う通称「死神」などなど、くせの強いメンバーばかり。
カペスタンは20年前に起きたフェリー船員殺人事件と、8年前の強盗殺人に目をつけ、捜査を始めるが……。
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2015年(平成27年)に刊行され、アルセーヌ・ルパン賞やポラール・アン・セリー賞等、複数の文学賞を受賞したパリ警視庁迷宮捜査班シリーズの第1作です、、、

小口と天・地が黄色に染めてある、懐かしく、心ときめく装丁のハヤカワポケミス(ハヤカワ・ミステリ、HAYAKAWA POCKET MYSTERY BOOK)版で読みました。

6カ月の停職から復帰したパリ警視庁警視正のアンヌ・カペスタンは、新結成された特別捜査班を率いることを命じられる… しかし、あてがわれたオフィスは古いビルの一角、、、

集められたメンバーは、売れっ子警察小説家(兼警部)、大酒飲み、組んだ相手が次々事故に遭う不運の持ち主など、警視庁の落ちこぼれ、厄介者、曲者ばかり… アンヌは一癖も二癖もあるメンバとともに、20年前と8年前に起きたふたつの未解決殺人事件の捜査を始めるが、落ちこぼれ刑事たちの仕事ぶりはいかに……。

「フランスの『特捜部Q』」と評されるコミカル・サスペンス、開幕!

パリ警視庁の厄介者、はみ出し者たちが集められた特別捜査班… セーヌ川中州シテ島の司法警察局ではなく、古びたアパルトマンの最上階に押し込められた一癖も二癖もあるメンバが、班長のアンヌ・カペスタン警視正のもとで過去の未解決事件を捜査、解決するストーリー、、、

使い物にならぬような警察官たちが、難事件を解決して組織の鼻を明かしてみせるという構造は『特捜部Q』に通じる設定ですが… 登場人物が多いし、コミカルな雰囲気が漂っているので、『特捜部Q』とは、ちょっと違う印象でしたね。

アンヌ等は段ボール箱の中の押し込まれた複数の迷宮入りの事件から選んだ、1993年の船員銃殺事件と2005年の老女絞殺事件の2つの殺人事件の捜査を始める… 2つの殺人事件は、いずれも1991年にマイアミとキーウエスト島を結ぶフェリーがメキシコ湾で難波して43人が死亡(うち16人がフランス人)した事件に関連していた、、、

ここで物語の中で断片的に描かれていたキーウエスト島での、ある人物の旅行中のエピソードと事件との繋がりが徐々に判明し、一気に真相解明に… ここの展開が巧かったですねー 旅行中のある人物が、あの人物だったとは! バラバラの断片が、ひとつのカタチになる展開が愉しめました。

面白かったです… 続篇も出ているようなので、ぜひ、読んでみたいですね。

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2023年07月21日

Posted by ブクログ

ネタバレ

ソフィーエナフの迷宮捜査班シリーズ第1作。
裏表紙のあらすじにも書いてあるとおり、特捜部Qのフランス版、チーム版。

高確率で相棒が負傷する死神や、兼業作家、ギャンブル狂、アル中など、問題児ばかりを集めた特別班が未解決事件に挑む。
筋としては20年前の船乗りの殺害と、七年前の老婦人殺害。バラバラな二つの事件を追いかける二つの班が、どこで合流するか。間に入る一見無関係そうな話は何なのか。軽快なストーリーと問題児のキャラのおかげで楽しくサクサク読めた。

ミステリ要素は薄めで、オチは結構アンフェアな感じもしたけど。爽やかな読後は良かった。
死神のトレズ刑事が異常に警戒されていて面白い笑

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2023年03月05日

Posted by ブクログ

内容はシンプルだけどボリューミーだった。

中盤で物語が追いにくくなるのはなんでだろう、、
(洋書にありがち笑)

でも最後は真相がはっきりしたので面白かった。

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2022年08月21日

Posted by ブクログ

「落ちこぼれ刑事たちのアベンジャーズごっこ」

主役は一見クールビューティ、実は「ブチ切れ」してエリート街道を脱落した30代後半の女性警視正。

メンバーは「死神」「クールなゲイ」「ドラマの脚本家」「アル中」「ギャンブル狂」「スピード狂」「マスコミ通」「パンチドランカーの元サイバー担当」など今回登場者のほか、登録だけでも40名の大所帯。
これまでどこの部署でも嫌われてきたリストラ寸前のメンバーが、持ち味を発揮して活躍するという……もうこれだけで面白そう。

相方が必ず不幸になるという「死神」の伝説を知っている被疑者とわざとふたりきりきりにして尋問したり、「ビスケット三枚早食い」で盛り上がったり、赤ちゃん見守りグッズで盗聴したり、スピード狂に至っては「犬のフン回収車(道路清掃車)」をパワーアップして街中を暴走し、逃走者を捕まえたり……。

事件は勧善懲悪ではなく「悲しみ」が根底にあるにもかかわらず、暗くならずにワクワクするストーリーで、肩の力を抜いた楽しい読書の時間は、あっという間でした。

今回のメンバーの隠れエピソードや、まだ登場していないキャラクターなど、まだまだ続編やスピンオフが出来そうで、
とっても期待大!

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2021年04月13日

Posted by ブクログ

停職復帰後のカぺスタン警視正が率いることになったのは、新しく結成される未解決事件捜査班。アルコール依存症、ギャンブル狂、スピード狂、作家、「死神」…実体は厄介者を集めた形だけの捜査班である。しかし彼らはただの厄介者ではなかった。それらを武器にし、元々持っていた能力を駆使していくつかの未解決事件に挑む。彼らはなんて個性的で魅力的なのか。時折はさまるドタバタ劇と犬のピルーの可愛さにくすっと笑いながらするすると読み進んだ…その先で、思わずoh!と声が出た。想像以上に綺麗なミステリで面白かった。次作も楽しみだ。

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2020年10月22日

Posted by ブクログ

アンヌ・カぺスタンはパリ司法警察警視正。同期の中では一番の出世頭だったが、逮捕時に犯人を射殺したことが過剰防衛と見なされ、六カ月の停職処分を受けた。降格、左遷が妥当な線だが、警察局長のビュロンはカベスタンを新設された捜査班の班長にした。その班というのが、アル中やら賭博依存症、誰も組みたがらない不運をもたらす刑事、といった問題のある連中ばかり。放り出したいのはやまやまだがそうもいかないので、警察本部から隔離しておく、いわば不用品を放り込むための物置だ。

鼻つまみばかりを集めた集団が、それぞれの隠された能力を発揮し、周囲を驚かす大活躍をする。よくある設定だ。捜査権を持たない特捜班が扱うのは、警察内部に残されている未解決事件、というのもハリー・ボッシュや『特捜班Q』シリーズでおなじみのところ。オフィスはシテ島にある本部とは打って変わって、猥雑な街なか。ベル・エポックの残り香漂うイノサン通り三番地の建物の六階。寄せ集めの机や椅子と何本かの電話は用意されていた。

個性あふれるメンバーは、相棒が次々と事故にあったり変死を遂げたりするので「死神」とあだ名されるトレズ警部補。高身長の美男でゲイであることを隠さないルブルトン警視。刑事とミステリ作家・脚本家を兼ねる派手好きな女警部ロジエール。アル中だが警察内部に人脈を持つメルロ警部。警察内部の不正を暴きマスコミに流しているオルシーニ警部。賭博依存症のエヴラール警部補。サイバー犯罪に強いダクス警部補。スピード狂のレヴィッツ巡査部長。

カぺスタンの発砲事件を尋問したのがルブルトンだった。敬遠しあう二人はそれぞれ別の段ボール箱を漁って、二つの未解決殺人事件を見つけてくる。一つは七年前、一人暮らしの老女が室内で殺されていた事件。強盗の仕業と見られていたが、犯人が見つかっていない。もう一つが二十年前の船員殺し。錘をつけてセーヌ川に沈められていた。射殺だったがナイフで弾が抜きとられるというプロを思わせる手口。

誰も組みたがらないトレズとカぺスタンが組んで老女殺しの再捜査を始める。ただ一人の身内である老婆の弟はパリから遠いクルーズ県に住んでいるため、七年もたつのに家は事件当時のままに残されていた。少々都合のよすぎる設定ではある。鎧戸が閉まっているのに差し錠がかかっていなかったり、絞殺した老婆の身なりを整えてソファに座らせたり、犯人のしていることが妙にちぐはぐなことから二人は強盗事件ではないと考える。

ルブルトンとロジエールは殺された船員の妻から、被害者がかつての海難事故の生き残りであったことを聞く。アメリカのキー・ウェストで起きたその事故は船の設計に問題があったと被害者は考えており、事故の関係者を訪ねて回り嘆願書を作って設計者に訴訟を起こそうとしていた。妻はその設計者を疑っており、二人はその男ジャラトーに会いにレクサスを走らせる。

無関係と思われた二つの殺人事件につながりがあることを発見したことで再捜査は勢いづく。ところが、船員の妻が刺殺されてしまう。現場には以前にも殺された老婆を訪ねてきたことのある自転車に乗った青年が居合わせた。必死で追うカぺスタンがバスに轢かれそうになるところを助けたのは「死神」のはずのトレズだった。

ほとんど相手のことを知らない者同士が事件の捜査を通じて、気心を知りあってゆく。同僚に「疫病神」と呼ばれ、避けられ続け、人を寄せ付けないように見えたトレズは有能な刑事であるだけでなく家庭的でおしゃべり好きな男だった。融通の利かない法の番人であるルブルトンは、虫も殺せない平和主義者だった。優れた刑事でオリンピック銀メダルの腕を持つ射撃の名手カぺスタンは一度怒りを覚えると抑制が効かず、人を殺しそうになるという弱点を持っていた。皆が皆、完璧ではなく、どこか弱味を持っている。その事実が本部から追いやられた者の吹き溜まりである「物置」を居心地のいいものに変えていく。ここでなら誰もが息がつけるのだ。

ミステリとしての完成度はさほど高くはない。事件の真相について、そのあらましを知る者がいて、全てはその掌の上で踊らされていたということが分かると、さしもの特捜班も観音様の掌の上を飛び回り、いきがっていた孫悟空のように見えてくる。ただ、読後感は悪くない。殺人犯にも人の心が備わっているし、メンバー同士の会話はユーモアが溢れている。フランスの話らしく、美味しそうな料理や酒が次々と出てくるのも英国物と違って楽しい。

陰惨な殺害方法やサイコパスの猟奇的な犯罪がもてはやされるようなところがないでもないのがミステリの世界だ。そんな中にあって、互いを尊重し合いながら、弱点を補いあって協同して仕事をする、はみ出し者ばかりの特捜班というのが、人の温みがあって心地よい。こういう警察小説もあっていい。すでに続編が刊行されているというから、シリーズ化されるのだろう。次は誰に焦点があてられるのか愉しみなことだ。

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2019年12月19日

Posted by ブクログ

パリ警視庁の厄介者たちで新たに結成された未解決事件捜査班。大酒飲み、ギャンブル好き、売れっ子小説家(兼警部)などくせの強いメンバーたちは、二十年前と八年前に起きた二つの未解決殺人事件の捜査を始めるが…
捜査班のメンバーがみんなすごくキャラが立っているのが楽しい。特に組んだ相手が次々と不幸な目にあう通称「死神」が捜査班に入って変わってゆく様子がよかった。
それにしても職場でパスタをゆでて食べたりとか、捜査中でも美味しいもの食べたりしっかり休憩をとるところがフランスなのかなと羨ましい。
「特捜部Q」よりライトな感じだが、こちらの方が好み。
ぜひ続編も訳してもらいたい。

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2019年08月04日

Posted by ブクログ

未解決事件を再捜査するお話はどこの国のでも面白い。
窓際部署に追いやられた警察官たちだけど
決して無能ではなかった(一部除外) そしてキャラが濃い(笑)
次第にチームとしてまとまっていく様子は読んでいて楽しかった!

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2019年07月04日

Posted by ブクログ

問題児ばかりを集めた新しい捜査チームで、テンポ良く様々な事件が解決される。物語が煩雑な印象だが、軽く読め、読後感も良い。

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2022年11月04日

Posted by ブクログ

パリ司法警察署で厄介者ばかりを集めた特別捜査班が組織された。同僚を不幸にさせる疫病神、アル中、スピード狂、ハッカー、脚本家もどき、ギャンブル依存症等、警察官として不適格な集団を一纏めにして蓋をした。
 その班長は、精神異常者を逮捕時に誤って射殺し6ヶ月の謹慎をくらったカペスタン警視正。

・厄介者達の掃き溜め特別捜査班
・オフィスも古ぼけたアパート
・扱うのは陳腐な未解決事件
ガラクタの警察官達とガラクタオフィスにガラクタな事件。の筈が、事件資料の中に2件だけ殺人事件が混ざって居りカペスタン率いるガラクタチームは手分けしてこの2つの事件を再捜査する。

今まで警察署で日陰の人生を送ってきた怠惰な警察官達が協力し合い犯人を追い詰めて行き2つの事件に関連性を発見した矢先に20年前のゲナン事件の未亡人が刺殺される。
 ・20年前の海難事故乗船の船員ゲナン殺害事件
 ・7年前の老女ソーゼル宅への押込み強盗事件
 ・現在、ゲナンの妻刺殺事件

偶然に探り当てた2件の殺人事件は関連性が有った事で恣意的に資料が選別された可能性から件の犯人は警察関係者かもと思いはじめる。

舞台はパリ。シテ島やノートルダム寺院、セーヌ川等の観光地の情景が思い浮かび、また街中のブラッスリーでカペスタン以下が散々に飲み食いする描写は仄暗いパリ下町のレストランやブラッスリーのしっとりとしたやさしい雰囲気が伝わってくる。

作中には過激な殺人描写やスリル溢れる追跡劇、拳銃の弾が飛び交う戦場さながらの激しさは全く無く、穏やかに進み出来損ないの警察官達が警察官らしい自分を取り戻して行く姿を微笑ましく見届ける。

本作はシリーズ化されており本国では3作目が出版されています。

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2021年05月02日

Posted by ブクログ

さくさく読めるフランス捜査班シリーズ。
個々のメンバーのキャラクターが立っていて、
楽しい。
事件も意外な展開でおもしろかった。
次回作も期待!

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2021年04月23日

Posted by ブクログ

ネタバレ

警察のあぶれものたちがチームを作って未解決事件を解決する。特捜部Qシリーズに通じる感じ。 ミステリーとしては少しあっけない気がしたけど次作に期待。

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2021年03月06日

Posted by ブクログ

フランス版『特捜部Q』と言われると読まないわけにはいかない。フォローしているレビュアーさん方のレビューを読んでさらに気になった。
手にしてみると案外薄い。『特捜部Q』に比べれば三分の二程度か。だがメンバーは『特捜部Q』の倍以上いる。

組んだ相手が次々怪我したり死んだりする通称〈死神〉トレズ、ゲイであるゆえにはじかれたルブルトン、書いた作品がドラマ化されるほど有名作家でもあるが仲間たちを小説に書きすぎたロジエール、アルコール依存症のメルロにギャンブル依存症のエヴラール、タレコミ屋のオルシーニにスピード狂のレヴィッツ、ボクシングのやり過ぎで落ち着きを失ったダクス。
今作登場しただけでも八名だが、出勤してこない掃き溜め警察官たちを合わせると総勢四十名ほどもいるらしい。問題警察官がそんなに?大丈夫か、フランス警察。個性豊かなメンバーとは言え、今後も登場人物が増えていくのかと思うと覚えられるのか不安になる。

こんな特別捜査班を率いるのは武器を持たない犯人を射殺したことで六ヶ月の定職処分を受けたカペルスタン。
新しく発足した特別捜査班リーダーにカペルスタンを任命したのは元上司・ビュロンだが、彼の立ち位置がなかなか読めなくてモヤモヤする。カペルスタンの敵なのか味方なのか、彼女を上手く利用して何かをしようとしているのか、それとも彼女の居場所を作ってあげた心優しい元上司なのか。
お荷物でしかないが切るわけにもいかない掃き溜め警察官たちを閉じ込めるためだけにつくられたと思われた特別捜査班だが、与えられた二つの未解決事件を調べていくうちに別の目的が見えてくる。

ミステリーとしてはこれまた『特捜部Q』と似た構成で、時折挟まれる回想シーンが未解決事件とどう繋がるのか、誰と繋がるのかを中心に展開していく。
ただミステリー要素を追求するというよりは、このダメ烙印を押された警察官たちが様々な障害を乗り越えつつ真実に迫り、特別捜査班には許されない送検まで持っていくのかというところが焦点なのかなと思った。

何しろ特別捜査班には殺人事件の現場に入る資格もないし、当時の詳しい捜査資料も見せてもらえない。当時捜査した警察官に話を聞こうとしても相手にされない。捜査車両は窓も閉められないおんぼろ車、サイレンもない。まさにないない尽くしなのだ。

だがそこはさすがはみ出し者軍団、自由奔放さも半端ない。
職場として与えられた古いアパルトマンのフロアをどんどん改装し家具も持ち込み、無いものはあるもので代用し、清掃車を魔改造した特別車両で容疑者を追いかけ、各自得意分野や自前のネットワークを駆使して自分たちの環境を改善し捜査に取り組んでいく。
追い詰められた者ほど強いというが、はみ出し者軍団のチームプレーを楽しめる。ダメ烙印を押された者にも人より優れたところはあるし、そこを上手く引き出して補い合って助け合えれば良いチームになりそうだ。そこはカペルスタンのリーダーとしての腕の見せ所だろう。

フランスでは警察官の副業は許されているんだな、とかアメリカの警察物と同じく昼間から飲んだりパーティーしたりして良いんだ、とか色々発見する一方、事実婚が正式な婚姻と同じ権利を認められるほど自由恋愛の国というイメージのフランスで同性愛についてはいまだ狭量なのかという現実は興味深い。

すでに第二作も出ているようなので、この特別捜査班が更に活躍するのか、どんな方向性に進むのか、そのうちに読んでみたい。

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2020年10月19日

Posted by ブクログ

ネタバレ

組織の奇人、変人、問題児ばかりを集めた体の良いお荷物置き場特別捜査班。
とある捜査の過程で容疑者を射殺したことを過度の防衛行為として扱われ処分されたエリート女性警察官カペスタンはこの組織の責任者を任されることに。
問題児達の過去を受け入れキラリと光る一芸をうまく利用しながら未解決事件の再調査に乗り出す。

フランス版特捜部Qと名打たれるようにあるあるの警察物の設定、展開のシリーズもの。

第1作目だけあって登場人物のキャラを説明するのに多くのページが割かれ土台づくりをしている印象。
おもしろくないわけではないが、特捜部Qにはアサドという強烈なキャラがいるのが特徴的だがこのシリーズでは何がリーダビリティを示していくのかが未知数だった。

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2020年08月02日

Posted by ブクログ

厄介者扱いされたメンバーでつくられた特別班が未解決事件を追う話。

メンバーがちょっと多い上にフランス名なので覚えられないかなと思ったけどキャラひとりひとりにしっかりした個性があるので大丈夫だった。
キャラと読みやすさやテンポの点では良かったけど、謎の部分は大した驚きもなく案外すんなりと犯人が捕まった感はあった。
終わり方は爽やかな感じで良かった。

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2019年10月28日

Posted by ブクログ

キャラクターは抜群でワタシのお気に入りはもちろんエヴァ・ロジエール。ロジエールが警部で売れっ子小説家なのをもう少しいかして欲しい。あと、パリのことが分からないので地図つけて欲しい。ちょっとあざとい登場人物紹介に☆は3。でも一気読みするくらいにはポップで面白かった!

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2019年08月21日

nao

購入済み

映像化を狙っているのかなー
海外ドラマのノベライズを読んでいる感がどうしても拭えない
これに音楽と映像を付けて出せばいい感じでしょ!どう?みたいな
ミステリーの批評サイトで高評価だったので読みました
この話が気に入った人には申し訳ないですが、正直ガッカリでした
捜査側のあれこれや、犯人側の事情を見せるのでも、もうちょっと何とかならないのかー…全然感情移入できないぞー…うまく言葉に出来ませんが、私は連続ドラマの一話目を見せられているようで、はっきり言って面白くなかったです
あと、私は犬好きですがここに出てくる犬は御免ですね、ちゃんと躾ましょうね

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2019年09月27日

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