あらすじ
文化遺産に登録されたことで、世界の人々から注目を集める「日本食」。
本書は、日本の食事に息づく「精神」や「美意識」について、しきたり、作法、ルーツなどの切り口から解き明かす。
ビジネスでは今後もグローバル化が進み、自国のアイデンティティーをますます問われる時代になる。
ビジネスマン向けの教養本として、食にまつわる伝統文化を紐解き、日本人としてのルーツを探る1冊。
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Posted by ブクログ
・おかわり
通夜の席で、茶碗にご飯を高く山盛りにし、真ん中に箸を揃えて垂直に
立てることを「一膳飯」と言う。
ご飯を一膳だけで終えるのは、通夜を連想させるため、ご飯をお代わりする
ほうが礼儀にかなった振る舞いとなっている。
・お通し
お通しは、客の注文が帳場に通ったことの証として提供されている。
・寿司
「酸っぱい(酸し)」という意味から名づけられている。
元は、魚の保存性を高めるために、塩とご飯の中に魚を付けて発酵させた
保存食だった。
手で食べる際は、親指と中指で寿司の両脇を挟み、人差し指でネタを軽く
押さえて裏返して、ネタの先端に少しだけ醤油をつけるのが作法。
これは、ご飯に醤油をつけるとほぐれてしまうのを避けるため。
・日本酒
正宗→臨済正宗(リンザイショウシュ)の正宗の音読みが清酒と似ていたため
語呂合わせで名前が採用された。
・器の位置
食べる人から見て、左手前がご飯、右手前が汁椀。
これは、日本では古くから、左のほうが右より上位にあるという考えがあるから。
(例:左大臣>右大臣)
・箸
個人で箸を所有する文化がるのは日本だけ(銘々箸)。
これは、箸が神が宿る依代とみなされ、箸を使った人の魂も宿ると
考えられたため、この文化が定着した。
・割り箸
割り箸は、食べるときに割って使うことから「引裂箸」と呼ばれる。
これは、食べるときにお客に自ら割ってもらうことにより、その箸が
未使用であることを示すためである。
日本の箸は木製で煮沸消毒に向かないため、衛生上この文化が根付いた。
・米
炊き立ての米がおいしいのは、主成分であるでんぷんの特徴によるところである。
生米は、水に溶けにくくおいしくないものの、保存には向いているβでんぷんの
状態で、それを加熱することにより、おいしくなるが、保存には向いていない
αでんぷんになる。
・カツオのたたき
カツオのたたきとは、表面をあぶることではなく、あぶった後に包丁の背でたたく
調理法のことを指している。
昔、塩が高価な調理法であったため、少量でもまんべんなく身に馴染むように
包丁でたたいた。
・卵
世界の一般常識では、「卵は加熱して食べるもの」。
これは、鳥の排卵個所は、糞尿の排泄箇所と同じため、腸内のサルモレラ菌が
付きやすいためである。
日本では、徹底した卵の品質管理がされているため、生でも食べられる。
・海苔
1帖、2帖と数える。
・日本酒
日本酒の味を判断するポイントは、日本酒度、酸度、アミノ酸度の3つである。
・味付け
一般的に、東日本では濃い味、西日本では薄味を好むと言われている。
元々江戸は幕府開設以来、武士と肉体労働者の集まる都市で、
特に塩化ナトリウムを豊富に摂取できる、塩分の濃い味が好まれてきた。
一方関西では、北前船によって大量の昆布が入ってきており、
その影響から出汁の味を濃厚に使う出汁文化が栄えた。
・果物
水菓子とは、フルーツのこと。
日本では、木になる果実を「果」、草の果実を「菓」と言っていた。
和食には、デザートという概念がなく、最後に出てくるのはあくまでも
フルーツである水菓子。
これは、和食には糖分がしっかり含まれているため、食後にデザートとして
甘味を必要としなかった。
・ごぼう
ごおう自体にはビタミンはわずかしか含まれていないが、腸内のビタミン生成
を助けている。
・枝豆
大豆の未成熟な状態。
枝豆は栽培しやすく、昔は田の畔に植えられていたことから、「あぜ豆」と
呼ばれていた。
豆を鞘から取ると急激に鮮度が落ちるため、枝付きで売りまわっていたことから
「枝付き豆」と呼ばれ、省略して「枝豆」と呼ばれるようになった。
・懐石料理
いつも空腹で困っていた禅寺の修行僧たちが、懐に温めた石を入れて、
お腹を温め凌いでいたことから、「会席料理」が「懐石料理」に漢字が変化
していった。
・佃煮
摂津の国の佃村の漁師によって生み出された。
・鉄火巻
花札などの博打で熱くなる人が集まる場所を鉄火場で定番メニューとなった
ことから、「鉄火巻」と呼ばれるようになった。
海苔巻きにすると手が汚れず、賭け事を中断せずに食べられることから鉄火場で
流行った。
・たこ焼き
たこ焼きの元は、大阪で明治から大正時代にかけて流行した「ラジオ焼き」。
元々、主役としてコンニャクが入れられていたが、明石焼きを参考に改良され、
タコを主役とするスタイルとなった。
・羊羹
元は、羊肉を練り固めて、山芋、しいたけやタケノコと一緒に煮た汁物。
中国から伝わってきた平安時代には、羊どころか肉を食べる習慣がなかったため、
羊肉の代わりに小麦粉やくず粉など植物性の材料を練って汁物に入れたのが
始まり。
その練るものが蒸されて、甘みが加えられ、今の蒸し羊羹になった。
・お節
元来、お節料理は節句の時に出される料理のことで「節会料理」と呼ばれていた。
節句は1年に5回あるが、一番重視された正月の節会料理だけ残り、
「お節料理」となった。