【感想・ネタバレ】始皇帝 中華統一の思想 『キングダム』で解く中国大陸の謎のレビュー

あらすじ

【秦は「ベンチャー的体質」ゆえに中華統一できた】初の中華統一を成し遂げた秦は、もともと「田舎の小国」に過ぎなかった。しかし、既得権者も少数だったため、リーダーが「抵抗勢力」を封じ込めることができた。「技術革新」にいち早く対応し、新たな社会体制を構築できたのだ。一方の六国は、フットワークが重く、テクノロジーがもたらす「新しい秩序」に背を向けたことで、秦に敗れた。【法家は歴代帝国に引き継がれた】秦が社会体制変革を行なう際に、理論的支柱となったのが「法家」の思想だった。これにより、国内の全リソースを「君主」一人が管理・収奪するシステムを作り上げる。秦の滅亡後も、法家は形を変え、歴代国家に引き継がれた。結果、人類史上、中国大陸でだけ、繰り返し統一帝国が興ることとなった。中国大陸の帝国が、広大な領土を中央から一律に支配し続けたのは、「始皇帝の遺産」を引き継いだからなのだ。そして、法家は現代中国でよみがえりつつあるように見える。【『キングダム』で通奏低音のように流れる法家】原泰久氏の漫画『キングダム』では、法家改革後の秦と、旧式の社会体制である六国の対比が見事に描かれている。本書では、『キングダム』という物語に流れる地下水脈を、25点もの名場面を引用しながら縦横に解説する。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

漫画『キングダム』を題材にした秦による中華統一の謎に迫った書籍。法家の思想や当時の情勢、その後の歴史などが解説されている。

秦は法家の思想を取り入れ信賞必罰の原則によって国を運営していた。しかし、これは画期的なことであった。なぜなら、当時の常識と言えば封建制社会であり、また、血縁関係によって支配する氏族制社会だったためである。実力はあっても要職に就くことができない社会と実力があれば成り上がれる社会。どちらが強い国になるかは明らかだった。結果、秦は中華を史上初めて統一するに至った。(ただ、秦はその苛烈な法制度から民の不満を増大させすぐに崩壊してしまうのだが…)

キングダムをより深く楽しむことができる一冊。

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2022年05月31日

Posted by ブクログ

ネタバレ

キングダムを絡めた発想は良かったと思うが、タイトルの「キングダムで解く」ほど内容がリンクしているとは感じられなかった。
そもそも、著者の熱意が伝わってこない感じを受けた。
秦の行った体制の変革は特異な物で、その後の2000年以上(著者によれば現代でも)にわたって中国を支配したものであり、秦による統一がなければ、中国は南北で分かれていた可能性すらあることをもっと強く(熱く)語っても良いのではないかと思った。

記載されている内容は高校世界史の枠を出ない内容で、知識として真新しい物は一切無いと言ってよく、また、支配制度に関しても、「後続の漢王朝により継承され、洗練・周知されたことが大きい」という当初の印象を変えるものではなかった(むしろ強まったとも言える)。
より深い内容がないのであれば、秦前後の体制を比較することで、秦の制度改革が特別なものであったかや、(統一への原動力らしい)周辺異民族の侵入についてまとめを行ってもよかったのではないか。
また、封建制度の崩壊に食料生産の大幅な向上があるとのことだが、食料生産量の増大は人口の増大に直結する。商、周王朝の時期と秦が統一を果たす時期では、支配地域が大きく拡大しているはずでもある。秦の統一前後(〜より後の時代までも)の人口の変化や支配地域の変化に着目して、図を用いて示せば、秦が現代中国の礎となったことをより強調できるのでは無いかと思った。

農機具や農作物の変化による食料生産量の増大は、中国に限ったことでは無く、ヨーロッパなどでも何度も起きていたはずであり、それだけで封建社会が崩壊していくという理論は乱暴なように感じる(他国では起きない)。他に理由があるのではないかと思ってしまう。
本書の論旨からはみ出そうだが、他の地域との比較(中国の”異常性”の強調)があっても良かったのでは無いか。

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2024年03月04日

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