【感想・ネタバレ】人類哲学序説のレビュー

あらすじ

日本には「草木国土悉皆成仏」という偉大な思想がある――。原発事故という文明災を経て、私たちは何を自省すべきか。デカルト、カント、ニーチェらを俎上に近代合理主義が見落としてきたもの、人間中心主義が忘れてきたものを検証し、持続可能な未来への新たな可能性を日本の歴史のなかに見出す。ここに、新たな「人類哲学」が誕生する。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

ヘレニズムやソクラテスなどの省察がまとめ終わっていないけれど、ひとまずまとめてみた。
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前提として、哲学は古代ギリシアで生まれ近代西欧で発達した。
インド哲学や中国哲学は思想について語ったもので、哲学は一部地域に偏っており、普遍的なものとは言えない。
そして近代の哲学に支えられた、現代の科学技術や資本主義は行き詰まりを見せている。
したがって、今の哲学(西洋近代哲学)を見直す必要がある。
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日本の『草木国土悉皆成仏』という思想が解決の糸口となる。
万物すべてに魂が宿っているという思想で、日本の思想であると同時に、世界の原始的文化の狩猟採集・漁労採集文化の共通思想でもある。
cf. アニミズム etc.

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近代の哲学に支えられた、現代の科学技術や資本主義は行き詰まりを見せている。
つまり近代の哲学は行き詰まりを見せている。

その近代の哲学を支えたデカルトについて省察してみる。

・・・・

デカルトの「コギト・エルゴ・スム(われ思う、ゆえにわれあり)」は、懐疑によって哲学を突き詰めた結果、
「疑っている自分が存在する」ということだけは否定できない、つまり実在する、としたことを言い表している。

「疑っている自分の存在」を肯定することは、理性(疑っていること)を肯定すること。
つまり理性をベースとする、近代の西洋哲学の理論がこれに支えられている。

加えて、デカルトはこの世界に存在する実体は三つであるとした。
①神という完全な実体
②内側による思惟を本質とする実体
③外側にある延長と本質とする物質という実体

デカルトは自然の本質を延長と考え、数式によって表現された法則によって機械的に把握されるとした。
この思想が、近代科学技術文明を裏付ける理論となった。

・・・・

このデカルトの自然を機械的に把握できるという思想と逆の思考が、
『草木国土悉皆成仏』、「自然は生きている」という思想なのではないのか。

原子力発電、異常気候、エネルギー資源問題など、自然を征服することが人類を滅ぼす危険性を持っているとわかった今、
生きとし生けるものすべてと共存する哲学、『草木国土悉皆成仏』が、人類の哲学の根本にならなければならない。

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『草木国土悉皆成仏』の考えを表してる文化人
・宮沢賢治
 :『草木国土悉皆成仏』→「いちょうの実」、「利他行」の考え→「なめとこ山の熊」
・伊藤若冲
 :「動植綵栽」

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2017年07月18日

Posted by ブクログ

ネタバレ

主に気になったところや勉強になったところを以下に記します。

・インドでは、命を持っているのは動物までで、植物に命はない。仏教者はベジタリアンで、命あるものを食べない。……P14
・アイヌの再生の祭り。……P29
・アイヌの思想はまさに「草木国土悉皆成仏」。山も川も人間も生きている。昔の日本人もそう考えていた。……P33
・神道は多神教。明治以来の神道は一神教的。本来の神道ではない。……P36
・デカルトの『方法序説』第5部は「人間機械論」。「医学の発展で、人間は100歳まで生きられるようになる」とデカルト。……P58。今、確かにそうなった。
・イギリスの歴史学者 トインビーによると、西洋近代文明の源流はギリシャ哲学とキリスト教。……P63
・動物や植物の命を食べることに罪の意識を持つか持たないかで、ずいぶん異なる。……P73
・ニーチェの「ツァラトゥストラ」はゾロアスター教の教祖 ゾロアスターで、ニーチェ自身。……P84
・ショーペンハウエルは仏教、インド哲学に大きな関心を寄せた。……P95
・「神は幻想である。弱い人間が強い人間に復讐するために神をつくった」(ニーチェ)。ニーチェの思想はヒトラーに引き継がれた。ヒトラーはキリスト教に批判的だった。その思想的根拠をニーチェの哲学に求めた。……P96
・ヨーロッパ哲学の伝統には人間中心主義がある。……P96
・四聖人のうち、ソクラテスとイエスは不遇の死を遂げる。一方、シャカと孔子は生を全うした。……P97
・ソクラテスとプラトンによって理性の支配が始まった。……P110
・ハイデガーはキリスト教をほとんど信仰していなかった。……P113
・サルトルは選択することを実存と考えた。これは完全に人間中心主義。P114
・日本では、ウグイスもカエルも和歌を詠む。天地自然のすべての声が歌である。まさに「草木国土悉皆成仏」の思想。「言葉を持ち、詩を作るのは人間だけ」というハイデガーの思想と100%反する。……P116~117
・ギリシャの自然破壊は凄まじい。プラトン時代に始まり、キリスト教で決定的になった。南ヨーロッパ文明は自然破壊によって滅んだ。……P119
・『旧約聖書』の「創世記」。人間が動植物を支配することに。近代西洋の基になったデカルトの思想を先取りしている。……P125
・ゼウスは残忍で乱倫な神。ギリシャ神話は日本の神話と大きく異なる。……P128
・神話は歴史の反映。……P129
・「無知の知は無知の無知より上だ」(ソクラテス)……P134
・ニーチェとハイデガーはプラトンに始まる理性の哲学にノーを突きつけた。ニーチェとハイデガーはソクラテス以前、イオニアの自然哲学に帰れ、と言った。……P142
・吉村作治によると、古代エジプトのアメンホテプ4世の一神教はモーゼの一神教に引き継がれている。……P147~148
・世界四大文明はすべて小麦。しかし、長江文明は稲作。……P152
・小麦農業と稲作農業の違い。……P165
・中国の北半分には、森はほとんどない。……P167
・長江文明の国が滅ぶと、一部が日本に来て、稲作を伝えたと考えられる。……P168
・先進国こんなに森が残っているのは日本だけ。……P170
・宮沢賢治と「草木国土悉皆成仏」。……P171
・鉱物も植物も動物も、すべて同じ生き物(宮沢賢治)。……P171
・伊藤若冲……P178
・かつては豊かな森の国だった、ギリシャ。人間中心主義のキリスト教。森の破壊によって古代文明は滅んだ。……P199
・レバノンの森は残っていない。……P200
・ユーラシア大陸の西側は森を破壊する文明。そこでデカルトが生まれ、産業革命が起きた。……P200
・ヨーロッパ人が侵入してわずか200~300年で北米大陸の森の8割が失われた。……P200
・龍樹の思想「空」。欲望を肯定も否定もせず、欲望にとらわれない。……P202

著者の考えには共感する点が多かったです。ただ、文章はやや単調で、盛り上がりに欠けるところがあり、ときおり眠くなってしまった・・。

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2016年06月25日

Posted by ブクログ

ネタバレ

第四章の、プラトンのイデアはエジプトに起源を持つという説を吉村作治が唱えてる、という話が面白かった。カーという概念がイデアの原型ではないかいうことです。ユダヤ教の起源に関して吉村作治がイクナトンのアテン教ではないかと言ってると、書いてあるが、これは少し不正確かも。この説は既に昔からあって、フロイトなんかも主張していて、それに関する筑摩学芸文庫から訳本が出てます。

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2013年05月27日

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