あらすじ
殺された鈴木の祖父で、名家の当主義麿が綴ったノートを託された浅見は、事件の核心に迫る記述に引き込まれていく。戦時中の阿武山古墳盗掘疑惑、考古学者同士の対立、新たな殺人――。さらなる悲劇を招いたのは、「鎌足の秘宝」なのか? 内田康夫の筆を継ぐ新人が、誰も予想しなかった結末に読者を誘う!
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Posted by ブクログ
被害者の祖父が残したノートを託された光彦、読み進めていくうちにノートの内容に魅了されていく。そんな中、新たな殺人事件が。そして核心に迫ったとき肝心のノートが数冊盗まれていることに気づく。過去と現代が交錯してゆくなか、光彦の推理がさえわたる。「孤道」完結編募集プロジェクトに、100編を超える応募があったなか選ばれた作品。ただ、登場人物が多く、この人誰と思い読み返したところが数か所あった。内田先生が書かれた「孤道」から違和感なく読めたのには、単純に凄いと思いました。
Posted by ブクログ
内田康夫の絶筆に伴い、内田本人も選考に加わったという完結編。内田康夫の世界観は所々に引き継がれて、さらに独自の浅見光彦ワールドが展開されている。浅見は鎌足の墓から持ち出された物は天智天皇から賜った香炉だと辿り着いた。その行方を追って事件は展開していく。義麿ノートを読み進めながら時代は進み、同時に犯人の男のモノローグも織り込まれている。義麿は孤独な人だったのだろうか。千尋を想い続けていたが、千尋の方はそうではなかったようだ。犯人は三千惠の異父兄だったが、姿は最後まで出てこない。もしも内田康夫だったら「いつも浅見の側にいたあの男が…」という展開になりそうだが。正直、三千惠が共犯者というのもこじつけのように感じた。そして香炉の行方も少々雑な印象だ。作者は女性らしいが、全体的に見ても女性的な感じは確かにする。女性の仕草や感情の描き方など。作者には内田康夫に遠慮があるのか、世界観や人物像を壊さないようにするためか、既存の登場人物達は大人しめで、セリフも存在感も何となく薄い。だがラストの義麿と森高が果たせなかった約束を果たすためか、浅見も熊野古道を歩く旅に出る。その結末には胸が熱くなった。内田康夫も今頃は浅見光彦と日本中を旅しているだろう。
Posted by ブクログ
真犯人はともかく、香炉や鎌足の遺体など古墳関連の落とし所が弱かったような気はするが、本作は別に歴史ミステリーや伝奇の類ではないから、こういうものなんだろう。
内田康夫氏は存命時点で自身の手による完結を断念し、新人公募企画に転じてでも話を終わらせる手段を取り、その結果として本作が生まれたが、そこに物語をすることへの責任感が感じられた。あれだけの大ベテランが自作を他人の手に委ねる決断をするのは相当難しいことだったのではないかと思う。
全く関係ないが、作者急逝で第2章から先が永遠に読めなくなったミステリー小説『殺人者の舞踏会(魔界百物語4)』(吉村達也)に未だに心を囚われている自分としては、作者逝去後も後腐れなく後継に手渡されたこのシリーズの読者が羨ましくて仕方ない。