あらすじ
2018年1月に逝去した政治家・野中広務の生涯。政敵とは徹底的に闘う、強面のイメージが強かった。だが、その一方で、戦争を憎み、沖縄に寄り沿い、平和を愛した政治家でもあった。その素顔に迫る。
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Posted by ブクログ
覚書
信頼関係が癒着となってしまえば記者の堕落だ。
それまでの地方政治は地元有力者、いわゆる名望人が支配する世界だった。しかし、戦後の混乱の中地方も大きな財政赤字を抱えすでに長老の名誉だけでは事態を動かせないことを街の人々が理解していた
政治の担い手がエリート富裕層から
叩き上げ大衆、弱者に移ったことを外連味なく語った
1947生活苦より共産党躍進、しかし急進的な変革活動は訴求力を失うも吉田も許せないと
社会党が躍進、他ghqケーディスが介入
東西冷戦より反共秩序維持、ウィロビーは白洲次郎とパイプを太くし自由主義に転換
社会党片山の傾斜生産、石炭国家管理制に反対する角栄、中小企業の振興をおす
自由経済推しの吉田とそれを反対し憲法改正、再軍備復古派岸信介、
野中の魅力は人の心を打つ言葉に合った長い苦労を重ねた人生から心の奥底からほとばしるのうなものだ 二之湯
愛のない社会は暗黒であり汗のない社会は堕落である 野中
政官業のトライアングルの中でも土建行政を支配する建設族は巨大な利権を支配した、
建設委員会
権力者は後継者ができれば権力は後継者に移るという非情な原理を知り抜いている
世代交代しなければならないことは分かっていたのだろうと野中は思った
野中たちが作り上げた戦後保守政治の本質の一つが調整だった、できるだけ多くの意見を聞いて足して二で割り三で割り妥協点を見出す作業だ、なぜ必要か、エリートは間違うから、野中
日本はエリート官僚が真面目に国を思い破滅の道を邁進した、例岸信介
民衆の二三歩前に立って民衆とともに歩むのが本当の民主主義のリーダーシップ 岸信介
エリート主義を嫌う大衆は安保闘争へ
戦前も決められない政党政治に対するいら立ちが岸たち革新官僚の台頭と軍部の暴走を許した
自分たち(岸信介など)の勢力の伸張を図らんがために、反英米を特に強調したということは見逃せない事実、吉田
だから戦後の政治家は調整を重視した
その体制から脱却を図る中曽根
戦後保守政治に陰りが見え始めた90年前後、戦後民主主義は身分制もなくし平等意識を植え付けた、庶民レベルを超えた利権を掌握した成功者に対して嫉妬する、ロッキード事件、リクルート事件
国民は政治構造改革を求めた
小沢一郎の登場pko協力法お金のかかる中選挙区の終わり、はっきりした構図新党ブーム
それに反する野中
権力攻撃のセオリーは敵大将を支える足腰に狙いを定める
小沢一郎の足腰、公明党への攻撃
社会党が自滅すると分かっていながら自民党が生き残るために社会党を利用するという怜悧なリアリズム
攻められている側は隙間にさせのべられた甘い言葉と情をありがたく感じる
東京17区山口那津男と自民平沢、野中は平沢に比例区を進めるも自民基盤があるため、ヒラサワ断る。野中山口を応援、野中権勢絶頂期、
加藤の乱、反森政権で野党の内閣不信任に同調する動き、野中切り崩しも最後に加藤ひとりで本会議出席不信任賛成を投じようとする
森に愛想尽かし野中辞任、竹下派の時代の終わりを感じる
2000田中真紀子、平沢を仲間に加え小泉を担ぐ。古い保守政治対改革派の図式
テレビにはまる、視聴率を取るため劇場政治にはまる、テレビマンは仕事をすればするほど劇場演出に貢献してしまうジレンマ
調整文化の破壊、多数決至上主義、規制緩和推進、自衛隊海外派遣
メディアは客観性のため政府案には反対意見を盛り込む、しかし、小泉に反対を語る議員が多くなっていた。野中は反対意見をカメラの前で語った
目先のポストに惑わされている仲間がおらんではありません 毒まんじゅうを食うた、野中
官房機密費の存在使い道金額を暴露
野中は人の弱点を突いて取引する手法が批判され続けた、批判をかわすため弱者の味方という話を作ったんじゃないか、本当の仲間はいなかったと思う、地元関係者
実は優しかった?
全く額に汗しないタイプの人間である私が意見して良いものか、とは考えましたが……やはり頗る名著なのでレビューします。
難しい政治の話は疎くて理解しきれなかったものの、本書を通じて伝わってくるものがありました。
野中氏は、最後まで優しさを貫いた政治家だったのでは、という事です。
故人・加藤紘一さんの様な「人間は優しくなくては」と自分に言い聞かせるタイプのソフトな優しさとも違って、「ここで優しさは邪魔だ!」という場面でも、どうしても人への優しさを捨てられず、現実との狭間に相当苦しんだのではないか。そうした苦労は、生まれ持っての良心が無いと耐えきれないと思います。
人生の境遇において必ずしも恵まれてはいなかったのでしょう、人相はハッキリ言って恐い、悪人面でいらっしゃいました。だけど心の根は温かかったと信じられる数少ない権力者です。(上に立つと誰でも冷徹になってしまいますから……)
ずっと生きていて欲しかった、ただそれだと彼の有難みが分からなかった気もします。
気持ちがささくれた時、野中氏の折れない優しさとそんな御人柄に触れてみたい時、ぜひ一読をおすすめします。
Posted by ブクログ
【愛のない社会は暗黒であり、汗のない社会は堕落である】(文中より引用)
戦後保守政治の体現者であると同時に、時に「旧体制」の代表のようにも目された野中広務。弱者に寄り添う姿勢を常に保ちながら、同時に「政界の狙撃手」とも呼ばれた複雑な人間像に迫る作品です。著者は、日本テレビで総理官邸クラブのキャップなどを歴任した菊池正史。
著者が本作で指摘するように、戦後政治を体現する政治家の一人が野中氏だったのかなとの思いを強く抱きました。著者の思いが強く滲み出た作品ではありますが、野中広務という人物を補助線としながら戦後の日本政治を俯瞰していく上で大変参考になる一冊かと。
「ひろむちゃん」というコントが昔あって......☆5つ
Posted by ブクログ
戦争を知り、部落差別を知るという昭和日本の暗黒面を体現した政治家。この本では、たたき上げの存在として野中広務を描き、エリートに対置している。
人がいかに歪み、いかに足掻くか。その生々しい軌跡である。そして平成日本が遠ざけてしまった人の生々しさである。