あらすじ
初代団十郎の暗殺の謎を解いた八代目の面相に、世にも恐ろしい兆候が浮き出た。そして八代目もまた非命に斃れる。歴史の中に塗り込められた異様な事件が今、霧のかなたからゆらゆらとその正体を見せ始めた。連作形式で迫る歌舞伎界最高の名跡の怪!? 千両役者を襲う黒い影は、いったい誰だったのだろうか?
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Posted by ブクログ
六編の時代物短編集。
後半も面白いけれど、なんといっても八代目の謎の自殺に江戸・上方の商人たちの大規模な闘いをからめた前半三編が素晴らしい。
「油地獄団十郎殺し」で八代目の死の理由を読み終えた後「初代団十郎暗殺事件」の一遍を思い返すと、その作りこんだ設定の鮮やかな対比に感じるしてやられた感が快感。
何よりもこの三編に漂う、江戸と上方の鉄火場を張れるくらい強い男たちが、おのれの面子と八代目団十郎を巡って立ち回る様の艶っぽさが溜まりません(妄想です)。
ちなみに間に挟まる一遍は死に絵師から臨む八代目の死。死に絵師というのもとても興味深かったけれど、読み終えるとこれもちょっとゾッとする凄味のある作品。
とにかく面白かったです。