あらすじ
真夏の夜、元安川に、人々は色とりどりの灯籠を流す。光を揺らしながら、遠い海へと流れていく――。68年前の8月6日。広島上空で原子爆弾が炸裂した。そこに暮らしていた人々は、人類が経験したことのない光、熱線、爆風、そして放射能にさらされた。ひとりひとりの人生。ひとりひとりの物語。そのすべてが、一瞬にして消えてしまった。朽木祥が、渾身の力で、祈りをこめて描く代表作!第63回小学館児童出版文化賞受賞作。
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Posted by ブクログ
これは映画にしてほしいなぁ。ヒロシマの高校生が身近にいる大人の痛みにふれて成長していく物語。大人たちも高校生の表現に癒されて、新しい歩みを進めて行く様子が清々しい。読みながら、いろいろな情景が描けて、私の大切な一冊になりました。
Posted by ブクログ
亡くなった方を「悼む」とはその人のことをいつまでも忘れずに、ずっと心に想い、伝えていくということ。
この本は、中学生の主人公の希未(のぞみ)とともに、あの日ヒロシマで無残に命を奪われた無辜の民(天災を受けた罪のない人々)に想いを馳せる物語です。
美術部員として、あの日の記憶を作品に込め語り継いでいこうとする希未は、あまりの悲惨さに口をつぐみ、心を閉ざした周囲の被爆者の声にふれることになります。
献辞文の「世界中の小山ひとみさん」とは、ある日突然、大切な我が子を失くしてしまった世界中のお母さん達のこと。そのやり場のない悲しみと一生癒されることのない悲しみを想うと涙が止まらなくなります。
Posted by ブクログ
美術部に入っている希未は、お墓参りの帰りに、顧問の吉田先生の姿を見かけます。学校で見る先生とは違った後ろ姿だったのが気になりました。後日、先生の婚約者がピカに合い、遺骨は見つからず、櫛だけが残った話を聞きます。
そして自分の周りには、知らない話がまだあることに気づきます。
美術部で一緒の俊と、文化祭で「あのころの廣島とヒロシマ ~聞いてみよう、あなたの身近な人のあの日のことを~」のテーマで作品を作ることにします。
希未は、吉岡先生の婚約者聡子の物語やお母さんの昔好きだった人との思い出。俊は原爆ドームをモチーフにした絵と、子どもが被爆して帰って来なかった須藤さんの物語の彫塑に。友人の耕造は、先生をしていた澄子とその生徒6人の物語を。
文化祭当日、美術部以外にも公募した作品が並びました。希未たちは、原爆を受けた人たちに色々な物語があることを改めて知ります。真に悼むこと「大切な人の死を受け入れて見送ること、心に刻むこと」を続けていこうと思うのです。
文中に出てくる短歌は、愛する人を失った気待ちに沿うものて、同じ想いを抱いている人が他にもたくさんいたことを、知らせます。
吉岡先生が言うように、私たちは子どもたちに、この事実をきちんと伝えなくてはいけません。この本のように、当時のことを静かに、でも決して繰り返してはいけないという強い想いを伝えてくれる人は、周りからどんどんいなくなっています。私自身、祖父母や両親から聞いた話をきちんと伝えられるかは、わかりません。
だからこそ、こういった本を読んで欲しいと思うのです。