あらすじ
「特飲街」と呼ばれた売春の街、宜野湾市・真栄原新町。沖縄の戦後史の闇を妖しい光で照らし続け、浄化運動の波に消された街を活写した渾身のルポルタージュ。
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Posted by ブクログ
沖縄に降り立てば灼熱の太陽と南国特有の熱気そして「なんくるないさ」と大らかな人々が出迎えてくれる。しかしそこは約19万人もの命が奪われた太平洋戦争唯一の国内戦地であり、1972年まではヴィザとパスポートを必要としたアメリカであった。構造的矛盾が生み出した歪と闇の緩衝機関が「真栄原新街」を代表とする特飲街であった。
本作品はその沖縄の特飲街を取材対象としたルポタージュであるがとにかく内容が濃い。「売春」がテーマだけに負のオーラが強く読んでる側の体力が削られるが、しかしそれに対価する内容だ。特飲街の歴史的生い立ちから従事した人々の生活と今昔、当時のメディアの捉え方など、あらゆる角度から「売春街とは何であったか」を解釈しようと試みる。
困窮した生活のなかに倫理性を要求するのは酷であろうし「当時」を今の価値観で評価するのはフェアではないだろうが、それにしても「性の防波堤」という考え方は衝撃的だ。その正否には多少の疑義はありつつも国策的側面から「多少の犠牲はやむなし」との判断のもと、特飲街に生きる人々の暮らしにも多少の享楽はあったであろうが、我々の生活はそうした矛盾が瓦解した結果に成り立っていることは理解しておくべきだろう。文字でこれだけの情報量であるから、より感じる為に本書内で紹介されていた『モトシンカカランヌー』を観てみようと思った。