あらすじ
旅の途中で道に迷ったサエバ・ミチルとウォーカロンのロイディは、高い城壁に囲まれた街に辿りつく。高貴な美しさを持つ女王・デボウ・スホの統治の下、百年の間、完全に閉ざされていたその街で殺人が起きる。時は二一一三年、謎と秘密に満ちた壮大な密室を舞台に生と死の本質に迫る、伝説の百年シリーズ第一作。
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Posted by ブクログ
wシリーズを読んでいても思うことだけれど、正しいと考える思考回路、復讐したいと思う精神反応など、人にしか感じることがない、人以外、自然界には存在しない感情から人間の弱さ、脆さ、億劫さをすごく感じる。そして、それが人間の証明、定義だという皮肉と美しさ。
主人公はある一点で、動物から人間への進化の分岐点で生まれたであろう復讐という精神反応について、なぜ植え付けられて育てられたかのか、正しい、間違い、正しい、間違い、をひたすら行ったり来たりしている。
「一度人を殺した人間はまた人を殺すかもしれない。その前に罰しなければ。」その考え自体が病んでいる、と話すスホ。スホの話す言葉を聞き、ルナティックシティを見ると「病んでるのは私かもしれない」とだんだん説得されてくる。
現在の脳科学では実際に脳の活動を計測すると、意志が出現する前に神経回路網の活動が始まっていることが明らかになっているとのこと。私たち人間が「考える」ことを始める前に脳の神経回路は立ち上がっている。では、私たちが信じている自由意志とはなんなのか。
ルナティックシティが、人間を攪拌して分離した善だけを掬って創った街ならば。
ここの人たちが、人間が間違った道を進む前の分岐路に立つ存在だとしたら。wシリーズのナクチュの人々に繋がるのならば。彼らだけが遺伝子が残せるのもある意味頷けるわけで。
百年シリーズではルナティックシティについて主人公が「この街に未来なんかない方がいいと思うな。」と話すけれど、100年後のwシリーズを読むとうーん、あながち…。クライオニシストは悲しい結末に、なりそうだけど…(wシリーズを完読してないので分からない…)
お互いの住んでいた世界では決して相容れない存在が、ルナティックシティで自分たちの価値観の根幹を揺るがす謎に直面した時に「唯一価値観を共有できる存在だろう」と一瞬でも考える選択肢にあがるの、興味深かったな。
人間、人工知能、機械、生と死、性別の価値、相変わらず私の大好物だったので楽しく読めました。このまま百年シリーズの2冊目読みます。
Posted by ブクログ
【あらすじ】
2113年の世界。小型飛行機で見知らぬ土地に不時着したミチルと、同行していたロイディは、森の中で孤絶した城砦都市に辿り着く。それは女王デボウ・スホに統治された、楽園のような小世界だった。しかし、祝祭の夜に起きた殺人事件をきっかけに、完璧なはずの都市に隠された秘密とミチルの過去は呼応しあい、やがて―。神の意志と人間の尊厳の相克を描く、森ミステリィの新境地。
【感想】
Posted by ブクログ
Wシリーズのために8年ぶりくらいに再読。
これ2000年に初版刊行って本当に????
なんかどんどん物語の世界に現実が近づいていないか??
森先生すごすぎないか???え???
全く内容を覚えていなかったけど、血か、死か、無かを読んだあとだったので、色々衝撃。
ロイディってウォーカロンだったの....
ウォーカロンてWで初見かと思ってたのに...
20年前の伏線をどんどん回収してくのさすがだし、物語が古臭くなく近代的な未来として想像できるのすごい...
Posted by ブクログ
近未来の文明や価値観の描き方が面白かった。
主人公の性別を敢えて伏せた描き方で、いろいろ予想しながら読めた。
死とは何なのか、個人とは何なのか考えさせられる。
Posted by ブクログ
wシリーズ後に読んだが、良いタイミングで読んだと思う。
森博嗣には珍しくドンデン返し的な展開があり、面白かった。クジアキラは一体誰なのだろう?
Posted by ブクログ
インスタの小説紹介で気になり読んでみた。
カイバミチルとロイディの関係性が
「キノの旅」に出てくるよな関係性だなと思った。
時代は2100年くらいの設定で
この時代では知識のやりとりが全てデータで行われ、
紙や本などの媒体が非常に貴重となっている。
この設定も面白いと思った。
物の価値観(特に死に対する)が特殊で
価値観としての考え方が一通りしかない。
他の考え方はないという国にミチルたちは迷い込む。
そこで起こる殺人。
死んでる人は死んでる。ただそれだけ。
犯人なんて捜さない、死んでる、それで終わり。
自分の価値観と全く違う価値観の人といると
別世界にいる気がしてきてしまう。
ちょっと期待しすぎたのもあって
終わり方が個人的にはうーんと思ってしまった。
Posted by ブクログ
ミステリーというより、命の価値観が異なるスコシフシギな世界に迷い込んで、生きること、復讐すること、罪などなど。改めて主人公と一緒に考えるような物語だった。
未来の技術に託してコールドスリープさせるので基本、「死」ではなく「眠りにつく」という捉え方の世界。だから近しい人が眠りについても淡々と受け入れる人の描写がある。ミチル同様、異質に思えるけれど、例えば他の物語で登場人物たちが「来世でまたね」的なことを絶対絶命の場面で言ってたら、異質さではなく何やら泣けてくる……かも。来世も遙か未来の科学技術も不確かな約束事なのに。
来世は証明しようがなくて信じる信じないが個人の判断に委ねられる。有るんだかないんだか、て感じだ。科学技術よりも遥かに不確かで、口にする登場人物たちも心の底から来世を信じてるとも思い難かったりする。不確かさにすがるしか他に道がない儚さに胸が詰まる。何より「命が終わる」こと前提だ。
一方の、ルナティックシティは「眠らせといて未来で治そう」(かたく信じてる)。儚くない。事務処理感すらある。名残惜しさがない。命が終わらない。
でも、一緒に過ごせなくなるなら、寂しかったりつらかったりするもんじゃない?人間だもの。
あと、未来の技術に期待するあまり、みんな、だんだん大した怪我や病気じゃなくても、できるだけいい条件で眠りについて、未来で楽しく過ごそうってならないの?
などなど、読んでて思わず思考が良き道に行っちゃう話だった。
Posted by ブクログ
設定が特殊過ぎて全くミステリーではないのだけど、面白かった。サエバ・ミチルとクジ・アキラの物語。Wシリーズを読み終えたので、ウォーカロン初登場のこちらを読み始める。2人の結末を何となく覚えてるので、そこにどうやって辿り着くかが切なくも楽しみ。