あらすじ
広中平祐氏の自伝的数学啓蒙書です。「学問とは何か」「学ぶとはどういうことか」「数学とは何か」など、数学や科学するときの最も大切な基本姿勢を教えてくれる1冊。広中平祐氏が特異点解消問題を解決して、1970年にフィールズ賞を受賞した経緯にも触れられていています。
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Posted by ブクログ
1982年に書かれた本ということだが、全然古さを感じさせない。それは、1つには、著者の自分史のような内容が大半だからということもあるが、著者の慧眼でもある。本書が書かれた頃、日本経済はアメリカに追いつけ追い越せでやってきて、アメリカ経済の不調もあって、実際に追いついたという実感もあり、アメリカでは日本を見習えという意識も生まれていたが、そんな時期にあっても、著者は、日米両方の特徴をつかみ、日本の経験を伝えるのはよいが、アメリカの底力を侮ったり、日本が驕ったりしていてはいけないと戒めており、それは、その後の成り行きを見通していたかのようだ。数学者として世界レベルの業績を上げながら、こういうことまで通じているのは驚きだ。
しかし、本書の主題はそういうことではなく、学んで創造することの大切さを若い人に伝えたいという著者の熱い心にある。天才ではなくても、考え続けたり、ある種のあきらめを持ったり、様々な人から刺激を受けたりしながら、それでも色々と考えるうちに、ふと解決法が見つかることもあるという。何かにすぐに役立つハウツーは載っていないが、人の経験から学ぶ志を持つ人には役に立つ一冊であろう。