【感想・ネタバレ】「がん」はなぜできるのか そのメカニズムからゲノム医療までのレビュー

あらすじ

いまや日本人の2人に1人が一生に一度はがんにかかり、年間100万人以上が新たにがんを発症する時代。高齢化に伴い、今後も患者は増加すると予測されるが、現時点ではがんを根治する治療法は見つかっていない。しかし、ゲノム医療の急速な進展で、「がん根治」の手がかりが見えてきた。世界トップレベルの研究者たちが語ったがん研究の最前線

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Posted by ブクログ

ネタバレ

ガンのでき方、仕組み、そして逃れる知恵、そしてそれを追いかける医療。遺伝子科学、分子化学、デジタルの進展から「がん」のメカニズムとその複雑さ、そして可変性。医療界の方々に頭が下がります。〇〇の機能が発現しないように抗体とか高分子の○○とか、それを見つけて作って送り込んでしまう医療もすごいし、それを掻い潜るガンも凄い。まるでウイルスみたいに遺伝子が変異して生き残ろうとする。細胞間の生存競争。変化したガンが生き残る。厄介。でも、今後の医療の進展に期待が持てる、そして非常に分かりやすい作品でした。

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2024年04月02日

Posted by ブクログ

ネタバレ

第1章 がんとは何か?
悪性腫瘍とはコントロールされない細胞の増殖であり、自律性増殖、浸潤と転移、悪液質を引きおこすなどの特徴がある。癌腫(上皮性)、肉腫(間質性)、その他血液がんなどに大別される。がんは昔から知られており、近代以後は発がん性の発見(19世紀)、がん遺伝子の発見(20世紀)など研究が進んだ。リン酸化によるシグナル伝達の変異ががんを引きおこすこと、逆にがんを抑制する遺伝子も存在することが判明した。現在は遺伝子レベルのがん化を抑制する分子標的薬が開発され、主力になっている。
第2章 どうして生じるのか?
遺伝子変異の蓄積や、染色体異常によりがんが生じる。がん遺伝子の活性化やがん抑制遺伝子の不活性化など、異常の起こる遺伝子の機能も影響する。カビ毒やタール等の化学物質への曝露、放射線への曝露、細菌やウイルス感染などの外因的要素や、遺伝的素因など内因的な素因がある。がん細胞自体も変化してゆき、多様性を獲得することで、難治性がんに進行してゆく。変異遺伝子の種類によってがんの性質も変わってくるらしい。
第3章 がんがしぶとく生き残る術
がん細胞は健常人にも自然発生しており、免疫により排除されているが、悪性化細胞は免疫をかいくぐって無力化する性質を持っている。がん細胞自身が抗原性を失う変異を起こす、免疫抑制サイトカインを分泌する、免疫抑制機能を持つ細胞を利用する。また免疫チェックポイント分子を用いてT細胞を無力化するなどの戦略があり、これを利用した抗がん剤も開発されている。
第4章 がんと老化の複雑な関係
高齢になるとがんの発症率が上がるが、ストレスによる細胞老化がその一因である。老化細胞により起こる慢性炎症ががんの原因になる。
第5章 再発と転移
がんの再発は、がん細胞群の中にあるがん幹細胞が原因である。がん幹細胞は種のように休眠しており、抗がん剤治療にも影響されにくい。これを除去することで再発を予防できる可能性がある。がん細胞の転移は急速に進行する。がん細胞は細胞環境に依存して増殖する足場依存性を失っているにも関わらず増殖してしまう。また転移しやすい場所がある。
第6章 がんを見つける、見極める
良質ながん治療を行うためには早期発見が重要であるが、がん検診はコストがかかる。腫瘍マーカーも利用できるが早期発見にはあまり有用ではない。血中のmiRNAを利用する方法が有望であり開発されている。
第7章 予防できるのか?
発がん予防の鍵は生活習慣の改善にある。禁煙・節酒・食生活・身体活動・適正体重の維持が現時点で重要だと考えられている。がん予防効果のある薬剤も既存薬を中心に検討されている。
第8章 ゲノムが拓く新しいがん医療
抗がん剤は伝統的な細胞障害性抗がん剤と、近年の遺伝子的知見に基づく分子標的薬に大別される。分子標的薬の問題は副作用と治療抵抗性の発現である。遺伝子解析により抗がん剤が開発されることで、がんの分類も原因遺伝子に基づいて行われる可能性がある。更に分子標的薬の標的分子が発現する前にブロックする核酸医薬も開発中である。また治療抵抗性の発現も乗り越えるべき課題である。がんゲノム医療の拡大が期待されている。

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2022年01月29日

Posted by ブクログ

ネタバレ

著者である「がん研」の宣伝っぽい部分もあるが、がんの特徴、メカニズム、治療法や予防法まで幅広く最新の研究成果が分かりやすく解説されている。個人的には、細胞老化に関連すると言われるテロメアに関する説明が出てきたのが意外で、かつ、分かりやすくて面白かった。
本書は、遺伝子レベルの解析やビッグデータの利用によって画期的な治療法が期待できるということで結ばれているが、本書を読むと、がんというものが、調べれば調べるほど複雑怪奇で、治療法を改良しても改良してもしぶとく生き延びる(もっとも、がんが生き延びると人は死に、がんも死ぬので、がん自体は生物のような生存戦略を持っていないのだろうか。)不気味な存在のように思えてくる。

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2018年07月05日

Posted by ブクログ

ネタバレ

2017年ゼロ歳で男性62%、女性46%ががんに診断される。

癌の要因
遺伝子の多段階変異
 化学物質
 カビ毒
 放射性被曝
 細菌寄生虫:日本人に多いピロリ菌、B型C型肝炎
 遺伝子要因
  ALDHの働きが弱いとアセトアルデヒドを分解できず
  食道がんになりやすい。
 老化細胞の炎症SASP

大腸がんにはアスピリン、メトホルミン、スタチン

分子標的薬
核酸医薬

がんは不均一性、ひとつの薬ではやっつけにくい。

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2020年06月15日

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