あらすじ
好きなものは世の中にいっこでいい。大切なものに代えがあるのは、さみしいから。…第一話「明日も触らないね」よりこれまでにないマンガ表現を模索する絵柄や描写で、評論家や目利きの書店員から2010年代を牽引する逸材として注目を集める宮崎夏次系の最新作。今作では、人間のあらゆる種類の「さみしさ」を描いた短編九本が収録されている。
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Posted by ブクログ
相変わらず巻数を経ても衰えないセンス。
心の先を針の先で決してグサリとはいかずにちくちくと弄ばれる様な、そんな短編集。
どの話も基本的に家庭に焦点が当たっている
家庭ってやつは小さな社会の箱庭で、大抵決まったルーチンワークを淡々とこなして家族がそれぞれバランスを保っていたりする。
根底には勿論相手に対する思いやりだとかストレスなく暮らすためだっていう想いがある筈だけれど、それも長年の暮らしの中で風化して、いつしか本質が見えなくなり、そのバランスを保つ事だけに注力する様になってたりするもんだ
そこには諦観や、希望や、不満が内在していたりするけれど、結局どうしようもない現実があるだけで、結局連綿とその活動を続けていくばかりだけど
そんな風にして幾重にも重なった想いは、ちょっとしたアクションで簡単に決壊したりする
「今まで話すべき話を私達はしてこなかった」
後に分かるのはそんな当然過ぎるくらい当然の感想で、なんだか少し以前とは違った空気を感じるけれど、結局また同じ様な毎日を繰り返していたりする
家庭ってやつは実に面倒で厄介で呆れる程下らなくて、でも自分にとっては世界の一部で、決して手放す事の出来ないもの。
そこに溢れる諦観と希望の混在した一見整然としていてその実ぐちゃぐちゃに感情が混ざり合った実におかしな環境の中で、私たちが出来るのは結局そこで生き続ける事だけだ
全然関係無いけどこの人の作品はなんでどれも秋の匂いがするんだろう
医者のシャツの柄がえらい可愛い
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安心感と、ヒリつき
汚い言葉、湧き上がる怒りだかなんだかの衝動的で濃い感情
なんともない日常が続く幸せと、苛立ち‥
嫌とか嫌いとかじゃなくて
ただただ破裂したくなる窮屈さ
ずっと耐えれていた日常の一環に対するフラストレーションが、
傾いたバランスが決壊する瞬間
そして感情の大暴走ののち、そのあと、何ごともないように続く日々
違う形で組み直されたとしても、前より歪ではなくなるのでは
もしかしたら自分の父も、母も、兄も、その衝動を隠しているような気がするというヒリつき
お兄ちゃんの話だけは、最後が悲しくて、気持ちの持ってきようがなかった
宮崎夏次系さんの作品を読むと心がぎゅっとするような、それは空しくもあって、でも心地よくもあるんです。
なんでしょうね。女性でいうハーレクイン、男性でいうハードボイルド小説を見ている感覚ですよね。
でもこの気持ちは、単純なことではなく、いろんな気持ちが入り混じるんです。それがいいんですね。
いつまでもこんな気持ちでいたい。この人の考えている事に深く入り込みたいです。
私は「毎日」が一番好きですね。色んな解釈もあって、私を色んな気持ちにさせてくれます。
Posted by ブクログ
市川春子の短編より分かりやすくて肌に合う
「そういえば昔BSで流していた映画で アル中の男が酒瓶を隠すために アパートの外にロープで吊るしていたシーンがロマンチックだったなと思い出します」
《あの子は 弱い者無しにこの家が成り立たない事 知ってるんだ》
《僕は 好きなものはいっこでいいんだ 明日も会いたいと思える そんな感じの》
《隣人よ 耐えろ 私達は 生まれる場所を選べない……》
《僕は おとーさんが変になって良かった 嫌だったの ずっと ばーちゃんが死んでもキヨサダが死んでも みんな大丈夫になってくのが》
《祈ったらめっちゃ腹減りません?メニュー貰ってきますわ》
《昔から 触れてはいけないものばかり好きになる 気づかなければ 幸せになれるものばかり 私は》
《自分の弱さを 呪う 彼女が嘘をあきらめてからやっと》
寂しさ、暴力性
Posted by ブクログ
好きなものは
世の中にいっこでいい
失くしたらおしまい
そんな感じの
明日も会いたいと思える
そんな感じの
「コロッケ、チンするとべちゃっとする
あれ、ずっと嫌だったんだ」
「嫌だったの、ずっと
みんな大丈夫になっていくのが」
「かつての彼女は、公園に落とし穴をつくったり、
店頭のせんべいを割って歩いたり、暗く反社会的な人間でした」
「些細なことに一喜一憂する、おめでた野郎だ」
「なぜか彼女をふと殴りたくなる」
「」
Posted by ブクログ
[混乱した覚醒状態で]夜な夜な幻想的に屋根の上にたたずむ少年との邂逅を描いた表題作や,醜い母親の存在を知った少年への救いを描いた「明日も触らないね」など,全9作の短編を収録した漫画作品。著者は,『変身のニュース』などで高い評価を得ている宮崎夏次系。
漫画を多く手に取るわけではないのですが、映画や小説といった他の媒体では絶対に味わえないであろう感覚を堪能できる作品。現実と仮想の線引きが極めてぼやけた絶妙なバランスにより、読後も不思議な余韻に浸ることのできる一冊でした。
やっぱり宮崎氏の作品は読んで間違いなし☆5つ
Posted by ブクログ
「嫌だったの ずっと
ばーちゃんが死んでも
キヨサダが死んでも
みんな 大丈夫になってくのが
ずっと それが ずっと
嫌だったから
僕 ずっと
うまく 言えない」
(リビングで)
この漫画だいすきだ。
Posted by ブクログ
大好き夏次系さん。やっぱりよかった。
表題のと『リビングで』がお気に入り…。
みんなと同じことができないといないことにされるから、やっぱりみんなと同じことするしかなくて、そんな世界で生きているおかあさん、おとうさん、わたし、みんなが、可笑しくて笑ったり、悲しかったり、わりとどうでもよかったり、わりと重要だったり、うまく言えないけど、夏次系さんの漫画を読むと、そうそう、そうなんだよね、と思う。
Posted by ブクログ
母親の顔が星型だったり、父親が犬になったり、校長が盆踊りしながら悶え死んだり。こんな奇天烈な経験はもちろんないのだけど。
この痛み、苛立ちには既視感がある。
このシュールさに何故か見憶えがある。
例えば満員電車の中のケンカ。
ぎゅうぎゅうに人が押し込まれている車内に揉めている人の声だけが不穏に響く。
例えばある朝突然に空席になった会社のデスク。理由は知らない。誰も関心を持たない。そして淡々と日々の業務は続く。
時々見かける女子高生の脚は大腿骨の形がわかりそうなぐらい細い。
救われて欲しいと無闇に祈ったりします。
Posted by ブクログ
今年の4月に親友が白血病で亡くなった。
親友が宮崎夏次系先生が大好きだった。
親友が亡くなっても、毎日仕事をして、職場の人と普通に雑談して、3食食べて、夜は寝て、そうやって普通に過ごしている自分が嫌で嫌で、大丈夫になんかなりたくないのに、なんとか生きていけてしまう自分が本当に嫌で。それに私は親友の代わりなんてもういないし、そこまで大切な存在、もう作りたくない。だけど、まだ20前半なのに、これからひとりで生きていくのもつらい。親友は亡くなったのに、将来のことを考えてしまう自分も嫌だ。親友との記憶が日々薄れていくのも、親友がいないことに慣れてしまった自分も、たまに果てしなく苦しくて寂しくて会いたくて大泣きすることしかできないのも、全部全部もやもやして、そういう気持ち。なんか、変で、優しくて、めんどくさい感じの作品で、私のうまく言えない気持ちを、うまく言えないまま肯定してくれる。
「好きなものは世の中にいっこでいい
失くしたらおしまい
そんな感じの
だってさ
大切なものに代えがあるのはさみしいから」
「嫌だったのずっと
ばーちゃんが死んでもキヨサダが死んでも
みんな大丈夫になってくのが
ずっとそれがずっと
嫌だったから僕ずっと
うまく言えない」
Posted by ブクログ
この人の作品は短編のほうが私には合ってるなと思った。一遍ごとの読後感のどうしようもなさというか、哀しさやるせなさが甘美。たびたび挟まれる人物アップのコマがすごくいい。『わるい子』が好き
Posted by ブクログ
これは傑作ですね…! 少し前に読んだ長編作品よりも楽しめましたね。やはりこの著者は短編作品のが力を出せるのかも分からんですなぁ…。
時たま心に刺さるセリフなどが登場人物の口から吐き出されるわけですけれども、もうたまらんですね…! この感じは…! というわけでアレですね、まだ読んでない短編作品もありますので、今後が楽しみな漫画家さんですなぁ…。
というわけで、さようなら。
ヽ(・ω・)/ズコー
Posted by ブクログ
ふんわりとした絵柄と、唐突な設定で、わざと整合性とかご都合を誤魔化してるような作風である。
誤魔化してるとは言っても悪い意味ではなく、一度マウントを取られたら、「この短編で一区切りつけよう」という選択をさせてくれない、非常に力がある短篇集だ。
Posted by ブクログ
正直にいうと、読み終わった感想は「なにこれ?」。しかしながら読んでる最中はページをめくる手が止まらなかったのも事実だし、絵もポップで好きだった。言語化出来ない類の漫画。他の作品も読もうと思った。
Posted by ブクログ
同氏の「僕は問題ありません」よりも空気が不穏。前作と同じく登場人物がこじらせてるのはこじらせているが、すこし毛色が違う。「うまく話せない」のが、お互いに衝突し、その感情が突発的に噴出する話が多い気がした。その緊張を、すがすがしく解決するわけでもなく、そうだねーという感じで眺める。そういう作業をする本。
Posted by ブクログ
すごい閉塞感でやるせなくて苦しくなる。
なんだか救いといえば救いみたいになってる話もあるのに、読後感はつらくて、それが、すごい重いとかあからさまに落ち込んだり泣いたりするようなものではなくて、なんとなく落ち込みそうなそわっとする種みたいなものを残される感じ。
こわいものみたさというか、いやだって分かってるのにふと読み返したりしてしまう。
Posted by ブクログ
「さみしさ」がつまった短編集で
いろんなレイヤーの悲しさが胸に落ちてくるよう。
すごい本を読んでいるなぁという思いと、
二度は読みたくないなぁという思いとで。
帯にも使われているけれど、
「好きなものは世の中にいっこでいい。
大切なものに代えがあるのは、
さみしいから。」というモノローグがとても好きだ。
Posted by ブクログ
帯によれば「さびしさ」がテーマの一冊。
本書を読みつつ、「なるほどそう言われるとそうかもしれない」と思いつつも、「それでいれば『僕は問題ありません』とか『変身のニュース』もそうなのではないか」などとも。
宮崎夏次系の作品ではいつも、奇っ怪な世界で奇っ怪な登場人物たちが彼らなりの「日常」を過ごしている。その登場人物たちはたがいにいつもほんの僅かな接点、すぐさま崩壊してしまいそうな前提、カタチの定まらない感情でもって互いに共感しあっている。
そういう本質的には個々バラバラで、ニュアンスでのみ、曖昧な表現/非表現でしか繋がりを持つことのできない個人とその影を、真っ白な空白や薄いトーンと入道雲で連想される強い日差しが照らし出している。
そこにはいつも一種の「さみしさ」が汲み取れる気がする。
Posted by ブクログ
前、読んだ漫画を
もう一度、読み直してみる巻 Vol.7
特に好きなストーリーは・・・
第一話”明日も触らないね”と第四話”わるい子”です!!
Posted by ブクログ
売りに行くので好きだった台詞のメモ。
内容はあまり好きになれなかったけれど、作中に出てくる言い回しは割と好き。
好きなものは世の中にいっこでいい
失くしたらおしまい
そんな感じの
だってさ 大切なものに代えがあるのはさみしいから
嫌われるなら 好かれなくてもいいから
好きなものはいっこでいいんだ
明日も会いたいと思える そんな感じの
隣人よ 耐えろ
私達は 生まれる場所を選べない......
嫌だったの ずっと
ばーちゃんが死んでもキヨサダが死んでも みんな 大丈夫になってくのが ずっとそれがずっと
嫌だったから僕 ずっと
うまく言えない
インチキみたいな事ばかり言うの あの人
でも安心するの インチキでも安心する方がいいの
まさか 傷つくもんか あんなことで 僕が あんな些細なことで
僕も おめでた野郎じゃないか
些細なことに一喜一憂する おめでた野郎だ
自分の弱さを 呪う
彼女が嘘をあきらめてからやっと
Posted by ブクログ
一話一話が短いからか、テーマが一貫してないからか、前二作に比べ、パンチが弱かった。ドラマティックなシーンは本作でも健在で、均衡のとれた日常の下の危うさを気づかせてくれる。
Posted by ブクログ
"「僕は おとーさんが変になって良かった
前より話かけやすいし
変になって よかった……
嫌だったのずっと ばーちゃんが死んでもキヨサダが死んでも みんな 大丈夫になってくのが
ずっと それがずっと いやだったから
僕 ずっと
うまく言えない」"[p.91]
Posted by ブクログ
この絵めったかわいいな。
「あー!」って色々投げたい時の気持ちに寄り添う感じでいいな、と思いました。
しかし「わるい子」がものすごく萌えてしまった。現在も過去も二人ともすごいかわいい。過去のみつあみめがね名平さんリリカルに可愛すぎるし、「盆踊り」っていうゆのちゃんの表情魅惑的すぎるし困るぞ。
「ごらんJ組の様子を」の風紀委員のお二人もすごくほのぼの。
Posted by ブクログ
宮崎夏次系の新刊『夢から覚めたあの子とはきっと上手く喋れない』を読んだが、帯のあおりにすごく違和感。この物語の本質ってほんとうに「さみしさ」なのか?
この作品の登場人物は皆、アンビバレンツな感情が平坦な日常に帰することに焦燥感やどうしようもなさを抱えているように見える。「夢から覚める」というのは、不条理さを飲み込んで日常が平坦化していくことのやるせなさに気づいてしまうということなんじゃないのか。そうだとすればそれって「さみしさ」という言葉には全然落とし込めていないと思う。
あと、この作品に救いがあるという感想をよく目にするけど私には全然わからなかった。夢から覚めてしまった主人公たちのやるせなさの行き場はどこにも与えられていないと私は思う。
宮崎夏次系の作品って「冷静に混乱している」というイメージがあったのだけど、これを読んでますますその印象が強まった。登場人物と同じように、冷静/混沌を併せ持つというアンビバレンスこそがこの人の作家性なのか。
しかしこの作品における冷静さにはニヒリスティックなものを感じてしまった。
Posted by ブクログ
1・明日も触らないね
僕と結婚できないならもう話しかけないでください!
と、
言う告白をしてみたい!
ポスコ
のところの絵が好き。
2・夢から覚めたらあの子とはきっと上手く喋れない
他人は他人
自分は自分
3・リビングで
パパが壊れて、
ぼくが叫んで、
ママが切れただけの話ではない。
4・わるい子
触れてはいけないものばかり好きになる
5・ごらんJ組の様子を
ポチョムキン大佐って?
6・毎日
わーかーるー。
つか、
鼻血の絵はキタ!
その後のアイロンもキタ!
7・石鹸
お兄ちゃんね。。。
がんばれ。
8・なほちゃんの白いたまごやき
知らなきゃよかった信実ってあるよね。。。
9・妙な夢
困らせたくなる時あるよね。
画力があるわけでもない。
重厚なストーリーなわけでもない。
でも、
心に響くものを装備した作品に共感できるところ多し!
ステキなマンガでした。