あらすじ
児童文学界からきらりとその姿をあらわした、美しく巧みな筆致の、新・ヤングアダルト小説。夕暮れ時、静かに目をこらして。ふしぎな世界はすぐそばにある。それはほんのいっときで消えてしまう。あらわれるのはきまって夕暮れ時。光と闇のまざる時間、生と死の境目がぼんやりするころ――。女子中学生・灯子の感受性がつむぐ、やさしさと不思議さに満ちた1年間。
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Posted by ブクログ
主人公のおばちゃんの、
「あのね、人間っていい人と悪い人と分かれているわけじゃないの。いいところと悪いところとまだらになっているものなのよ」
という台詞が印象的。
ついつい嫌いな人のことはあの人絶対真っ黒に決まってる!って思ってしまうけど、多分いいとこもちゃんとあって悪いところが普段私にはたくさん見えてしまうだけなのかも。
主人公の柔らかい視点でみる世界と感受性で、普段は感じることのできない大切なものを受け取れたと思う。
Posted by ブクログ
世界は見えているものだけでできている訳ではない。
不思議な世界は我々のすぐ側にある。
昼でも夜でもない夕暮れ時、異界との境界が薄れ、この世のものでないものに出会うこともある。
亡くなった祖父がお別れを言いに来たり、悲しい伝説の二人が数百年の時を経て幻となって甦ったり。
悩める中学生・灯子の周りで起こる、ちょっと不思議な出来事を巡る連作短編。
確かに私も、学校帰りの夕暮れ時は少し寂しい気持ちになることがあったっけ。
いつもは友達と帰るのにたまたま一人で帰る時など、頼りなくて訳もなく怖い気持ちに負けそうになったり…。
灯子の大好きな叔父さんが遺したマグノリア(木蓮)は、白くて丸い花に清々とした香を漂わせながら静かに灯子を見守ってくれている。
「灯子、おぼえておきなさい。見えないってことはいないってことにはならないんだよ。きれいな魂を持ったものたちがいつもおまえを見ているのだから」
懐かしさと優しさに包まれた物語だった。