あらすじ
ミドリは父・広と住み慣れたN市を離れることになった。そして父親の新しいパートナーの家に転がり混む。そのパートナーは女性ではなく、男性だった。"ふつう"の両親に育てられたミドリ。新しい家にも、学校にもなかなかなじめない。でも毎日生きていかなくてはならない。みんなが新しい家族のかたちやあり方を考える日々。
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Posted by ブクログ
あまりにも柔らかな文筆なので読んでいる最中は大して気にしていなかったが、作品のテーマのなんて重たいことか。家族の形って多分、それぞれ漠然とした答えは皆持っているだろうけど、そこから少しでも外れただけで異質だと後ろ指さされたり(家族に限らずだが)言った側にしてみれば軽口にすぎない言葉が受取手側を傷つけたり。
少し冷静になって考えてみれば分かることなのに、わざわざ冷静になる必要もないと思っているのか、これくらいという甘え(あるいは悪意)が随所に散りばめられていた。
最後の迎えに行くかがその最終形態なのかもしれない。ミドリが何を見て、何を感じ取り母親と暮らすことを決意したのか知らない広と源三の独りよがりの『家族』たるミドリへの愛情が痛々しくもあり、愛おしくもある。
作品としては良い話しのようにして終わっているが万が一、ミドリが戻ってきた場合、果たして周囲は見守りに徹してくれるのだろうか? 作中と同じように心ない言葉で傷つけ、あざ笑い、孤独にさせるのではないかとついつい考えてしまった。
それを「子供っぽい」と一蹴してしまうミドリのこなれ感もまた母親の貴美子のような、どこか性格に難のある大人にしてしまうのでは、とも。
その後に想像を膨らませずにはいられない作品に出合ってしまいました。