あらすじ
「エリは今、眠っているのよ」とマリは打ち明けるように言う。「とても深く」「みんなもう眠ってるよ、今の時間は」「そうじゃなくて」とマリは言う。「あの人は目を覚まそうとしないの」真夜中から空が白むまでのあいだ、どこかでひっそりと深淵が口を開ける。4人の男女はそれぞれの場所で、夜の闇のいちばん深い部分をくぐり抜ける。村上春樹の転換点を示す長編小説。
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Posted by ブクログ
白川やカオルにとっては日常である「夜」であっても、
高橋やカオルやコムギ、コオロギとの出会いがあったマリにとっては、この一夜が今後生きてく上で必要な「記憶」であり「燃料」となったのではないかなと思った。
夜の持つ危うさと魅力が存分に表現されており、その非現実的な世界に読者も引き込まれる中、
夜明けとともに、「マリは、芝生の庭や、防犯アラームに護られている。」という一文で一気に現実に戻される感覚が印象に残った。
Posted by ブクログ
深夜から夜明け前の都市で起きた出来事を、神の目線のごとく俯瞰してみていく。文章は三人称で書かれており、それによって登場人物と読者との距離感は、著者の従来の作品と比べてやや離れた印象をもたらしている。内容に関しては難解で、特に主人公マリの姉エリが深い眠りから目覚めるまでのくだりは、解釈の余地がある。
Posted by ブクログ
深夜から朝までを一連の時間軸で視点が切り替わりながら展開される。「私たち」という三人称的だが、自意識を持つ視点が登場する。 朝を迎えた街を俯瞰し中がら、「一人一人違った顔を持つ人間であると同時に、集合体の名もなき部分だ。ひとつの総体であるのと同時に、ただの部品だ。彼らはそのような荷犠牲を巧妙に、便宜的に使い分けながら、的確にすばやく朝の儀式をこなしていく。」と語られているのが印象的。個人的だった夜の時間から儀礼的で社会的に昼の時間への移り変わりが描写されているのだと思った。 また、「マリは闇の長い時刻をくぐり抜け、そこで出会った夜の人々と多くの言葉を交わし、今ようやく自分の場所に戻ってきたのだ。彼女を脅かすものは、少なくとも今のところ、周りには存在しない。彼女は19歳で、屋根と壁によって守られている。」とあるように、夜はシステムが弱まる分、危うい存在としても描写されてきた。19歳の少女は本来昼の世界に存在し、守られるべき存在なのだ。 エリは他人に求められた自分を演じる人生に疲れてしまった。それでより個人的な夜の世界に引きこもった。マリは夜の世界の人々と関わることでエリの悩みに近づいていき、エリについて理解しようとしたところで物語が終わる。マリはきっとエリに追いついてエリを昼の世界に連れ戻すことだろう。そして、その時にはエリにとっても昼の世界はマリによって護られたものになっているだろう。再三「逃げられない」というセリフが繰り返されてきたように、エリも逃げ続けることはできないように思える。
Posted by ブクログ
深夜0時から夜明けまでの数時間の出来事を切り取った小説。眠り続ける姉・エリと、深夜の街を過ごす妹・マリのそれぞれの視点が描かれる。最後まで謎が明かされない顔のない男、娼婦オーナーの中国人男の脅迫発言、意味が明かされない内容が相変わらず多い。
ていうのも村上春樹はよく「物語は読者の中で完成するもの」って言ってるらしい。普段から物語の行く末を与えられてるものを見たり読んだりしすぎて、結末とかスッキリさを求める自分がいるけど、自分から物語の先を想像したり作り出したりする力って、情報社会の中で大事なのかなーって思ったり。
視点
視点とは何者だったのだろうか。
この空間に漂う素粒子のようなものだろうか。
彼らに朝は来るのだろうか。
完全な新しい時間の中に生きることはできるのだろうか。
答えが出なかった。
ヒントももらえなかった。
慎重に歩んできた進路を,鋭利なナイフでさっと切り捨てられてしまったような,そんな終わり方。
Posted by ブクログ
夜における時間感覚や人間の表裏の存在を一冊にまとめている作品だと感じた。
伝えたいことを一人の人物が語るのではなく、メタファーを混ぜつつ複数人の言葉や行動で読み手に語りかけてくる作品構造は村上春樹らしい作品であったと感じた。
想像の余地が大きく残されており、お姉さんがどうして長い眠りについているのかを妹と周りの関係や客観的視点から読み取っていく工程がこの本の主な軸となっており、おもしろい。夜の不気味さを感じながらゆっくり読んでいくことで、社会にある光と闇を感じながら読むことができ、是非とも1日が終わりかける夜の時間から読み始めることをおすすめしたい。
Posted by ブクログ
人々が眠りにつき、世の中が静まり返る時間に起きていること。それだけでどこか美しさのようなものを感じた。静けさの中にある一人一人の感情は、昼間を生きる人たちよりも濃く、人生の色がより鮮明に感じられるように思えた。
物語は全体的に淡々としていて、読んでいると真っ白で何もない部屋の中に閉じ込められているような、不思議な感覚にもなった。
作中にはさまざまな音楽も登場し、実際に曲を聴きながら読み進めた。タイトルの「アフターダーク」は日没後、暗くなってからという意味で、ジャズの曲に由来していることもこの作品を通して初めて知った。
読んでいるあいだ、ずっと「よく分からない」という感覚が続いていたが、その中で印象に残ったのは「欲望」というもののさまざまな形だった。ジャズはもともと性的な意味合いを持つと言われているが、この作中でも性的な欲望に関する描写が印象に残った。それもまた、夜という時間の持つ雰囲気とどこか重なっているように感じた。
また、姉妹の関係も印象に残った。お互いに思うことがありながら、それを言葉にすることはなく、距離だけが少しずつ開いていく。それでもどこかで互いを想っているような、そんな関係が感じられた。私自身にも優秀な姉がいるので、どこか自分と重ねて読んでしまう部分もあった。
特に印象に残った言葉がある。
「人間ゆうのは、記憶を燃料にして生きていくものなんやないのかな。その記憶が現実的に大事なものかどうかなんて、生命の維持にとっては別にどうでもええことみたい。」
どんな記憶も、人が折れずに生きていくための燃料になる。そんなふうに考えたことは今までなかった。自分を作り、自分を自分として存在させてくれる記憶は、自分を強くも弱くもさせる。とても大切なものなのだと感じた。
Posted by ブクログ
都会の一角の真夜中から朝のお話だった?
私は、村上春樹がよくノーベル賞候補になる人ということしか知らない教養不足の人間です。初めて彼の本を読みました。
白川が捕まることもなく、浅井エリが目を覚ますこともなく、オチなしでびっくりしました。読み終わって???ってなりました。こういう小説もあるのですね。
加えて、カメラの私が結局誰だったのか?第三者の目線から光景が見えていたという認識であっているのかな?
結局何がいいたいのか分からなかったが…
最初は特に物語がどう進むか全く予測できなかった。ただ、途中から話が理解できてきて、一気に読むことができた。