【感想・ネタバレ】院政の日本人 双調平家物語ノート2のレビュー

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2014年05月16日

著者のことは私昔からかなり尊敬していたんですけど、この本を読んだらなおさらその気持ちが強くなりました。
橋本先生やっぱり素晴らしい!知の巨匠だ天才だ!

この本は、著者の代表作のひとつである「双調平家物語」を書くにあたり橋本先生の歴史考察をまとめた本です。

平家物語についての考察のはずなのに...続きを読む話は古墳時代まで遡ります。
というのも、双調平家は裏の主題として「平安時代的な政治構造の終焉」を描いているから。
平安時代的な政治構造とは、藤原氏などの有力者が天皇に娘を贈り、これを后にして皇子を得、この皇子を天皇と立てるという構造のことを言います。
院政の時代にこの構造は一時あやふやになりますが、清盛の時代に復活する。それが「幕府」という朝廷とは別個のシステムがつくられることにより、この平安時代的な構造が消滅するのです。
で、その構造の始まりが古墳時代なのです。。

面白いのは、当時日本人が手本にしていた中国の政治にはそんな基本原則はないそう。 この構造は日本オリジナルなんですって。

ということで、このゴールに向かって橋本先生の長い長いお話が展開されるのですが、あまりにも長く、あまりにも面白く、けれどもあまりにも話が広がりすぎ登場人物が多すぎるので、今回は大化の改新あたりまでの私のなるほどポイントを書き留めておくことにします。
(かなりきざみます)(続きは再読時に)

とにかく脱帽モノなのは、先生ったら、年表とともに重要人物の年齢表を1年刻みで作ったそう。なんと、700年分も!
更に、母方まで書き込まれた天皇家系図を作成して、時代ごとに年齢をあてはめると・・・
系図が示すものは、ヒトが作られていくプロセス、ではなく・・・権力が作られ維持されていくプロセス、なんですね。
(普通の系図は男系を主として作られるので、母やその祖父が誰かがよくわからない場合があるのだけど、摂関政治というのは、藤原氏が天皇の外祖父になることによって実権を握るシステムなので、祖父がわかる系図でなければ意味がないのです。)

そこでわかったことは、皇女の力、でした。
次の天皇になる皇子は傍流の天皇である父の子であることよりも、嫡流の皇女である母の子であることがより重要視されているのです。
だからたとえば一旦皇統が絶えた場合、かなり昔の天皇の血縁を探し、その正統性を強固なものとするため嫡流筋の皇女を后とし、その后から生まれた皇子を皇太子に立てるということをして、豪族達から天皇として認めてもらうということをしています。
だから逆に、力があったはずの推古天皇でさえ、血統が(蘇我氏系の)傍流筋との理由で皇位継承に関する発言権は弱く、自身の血統である山背を推挙することもなく、押坂彦人系本流に戻そうと言う動きに繋がるのです。

平安時代的な政治構造の土壌が飛鳥時代あたりまでには出来上がっていたんだよ、というお話。女帝の役割の基盤もこの時代に出来上がっているし。。
小説家ならではの想像力を加えた見解がとても良かったです。

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