あらすじ
◆2015年7月スタート日本テレビ系ドラマ「花咲舞が黙ってない」ドラマ化エピソード収録作 主演:杏◆ 幹部行員の裏金工作を追及した恋窪商太郎は、謂れなき罪を着せられメガバンクを辞職。エリートから地方銀行の庶務行員となるが、人生の豊かさを知る。だが、元ライバルからの電話が再び運命を揺るがす――。不正を知った男(ライバル)は謎の死を迎え、恋窪は"仇敵"への復讐を誓う。乱歩賞作家、渾身の連作ミステリー。
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Posted by ブクログ
昨年社会現象になるほど爆発的ヒットだった「半沢直樹」の著者、池井戸潤による銀行ミステリー。
私はまだ半沢直樹シリーズの小説3冊しか読んでいない初心者であるが、著者の人物描写や組み立ては私好みであり、機会があればもっと読みたいと思っていたところなのだ。
本作品は1999年から2002年にかけて週刊小説などで連載された短編集を集約したものであり、今から10年以上前の銀行が舞台ではあるが、それほど古臭さを感じず読み進められた。
感想としては一言。
面白い。
300ページほどのボリュームだが、あまりの楽しさに、数時間で一気に読み終えてしまった。まず、主人公の設定がお見事。かつて都市銀行にてエリートバンカーの道を歩んでいた恋窪が、とある事件をきっかけに失脚して退行し、現在は地銀にて庶務行員をしている。そんな恋窪が、融資課の若手:松木に優しくアドバイスしながら降りかかるミステリーに挑み、また過去自身がハメられた事件の真相をも解明していく、というもの。
腕力が弱くていつも喧嘩には負けてしまうし、控え目な態度により多くの人間に舐められてしまうのだが、静かな闘志を秘めながら穏やかに突き進む…。
本書にて印象的だった記述は以下のとおり。
「ミスは誰にでもあるんですよ、松木くん。ところがそのミスが更に大きくなる、取り返しのつかないところに行ってしまう時には、もう一つのミスが重なる時なんです。自分ひとりで解決しようとする、というミスです。会社は組織で動いていて、決してあなたの個人商店じゃない」
→これはどの組織においても言えることである。私も部下や後輩がミスをした時にこの言葉を借りよう。
「具体的にどうすればいいと思いますか、恋窪さん」
「それを考えるのが松木くん、あなたの仕事じゃないですか」
恋窪は、松木が融資係として成長する過程では、何度か高いハードルを越える必要があることを知っている。それを飛び越えてこそ会社内容を見通す目が育ち、一人前のバンカーになれる。スキルを取得する一番の近道は自分の力で考え、解決していくことなのだ。
→現在部下が3人いる私だが、私自身の考えを示して指示することが多い。時期をみて考えさせるようシフトしていかねば。
「松木くん、融資をするのが全て顧客のためになるとは限らないのです。貸すも親切、貸さぬも親切。つまり、相手のためを考えればあえて貸さない方が良い時もあるということです。経営者も間違うことがある。その間違いに気付いたら、正しい道を示してやるのが、あなた方融資係の仕事なんです。」
→これも私の仕事に通ずる。保険金を払うことが正しいとは限らず、時には厳しい態度で出ることも大事なのだ。
2014年11月08日
Posted by ブクログ
メガバンクで幹部の不祥事の追及に失敗し、地方銀行(とはいえ川崎)の庶務行員となった恋窪が元ライバルの不審な死をきっかけに、不祥事を起こした幹部を再び追い詰める。一般人がここまで行動に移せるかと思う部分あり、いつもの池井戸さんの懲らしめる部分が弱めであったり、ちょっと違和感を残した終わり方だった。
Posted by ブクログ
再読。裏金や地位、派閥のために人殺しまでするかねぇ。とか、社外秘情報行き来しまくり!て現実味ないけれど、キャラクターが愛らしく、短編集てことで軽快に読めました。
Posted by ブクログ
銀行が舞台の8つの連続短編集。
おそらく何かの続編だと思うのだが読んでないので図らずとも途中参加みたいな感じになってしまう。
内容的にはかつて、バリバリの出世争いをしていた主人公・恋窪が争いに敗れ、別の銀行の庶務行員というある種弱い立場から今一度立ち向かっていくというもの。
個人的な感想としては池井戸潤の作品は1つの壮大なテーマ(不正)に対して長い時間をかけて解決する方が相性がいいのだな、と認識。
短編で細かな闇を暴きつつ大きな何かに向かっていくのも悪くはないが作者本来の魅力であるパンチ力は薄れてしまった印象。
Posted by ブクログ
普段のやつより少し難し目の内容だった気がする。
内容を簡単にまとめると大手銀行マンがある不正を追っていく中で途中で、潰されてしまい辞職してしまう。辞職後些細なきっかけで昔の不正について関わっていく物語。
今作はミステリとしてはかなり面白かったが普段の作品より金融的な事が多く全てを読み解く事ができなかった(T . T)。ただ共通してある作品自体の熱みたいなのは感じられたのでとても読み応えのある本だった。
Posted by ブクログ
恋窪の優しい人柄と松木の後輩感!
もともとエリート銀行員だった恋窪は、罪を着せられ地方の庶務行員として働いている。
銀行員の松木はそのことを知っていて、恋窪のことを信頼し、たびたび相談しにやってきた。
庶務行員と銀行員の間柄の2人。同じ会社だが部署は違い、共通点は多くない。
しかし松木は仕事で行き詰まると恋窪にアドバイスを求めてきた。それに恋窪は答え、時には共に問題を解決に導いてきたのであった。
上司と部下のような掛け合いは、穏やかでとても面白い。
『仇敵』には、ミステリー要素も大きく絡んで来る。
人が死んだり、暴力表現があったりなど、こんなのすぐ警察沙汰になるだろうと思われる描写も少なくない。
穏やかな掛け合いとダークな世界観のミスマッチング。この小説では良い味となっている。