【感想・ネタバレ】人類と気候の10万年史 過去に何が起きたのか、これから何が起こるのかのレビュー

あらすじ

福井県・水月湖に堆積する「年縞」。何万年も前の出来事を年輪のように1年刻みで記録した地層で、現在、年代測定の世界標準となっている。その年縞が明らかにしたのが、現代の温暖化を遥かにしのぐ「激変する気候」だった。人類は誕生から20万年、そのほとんどを現代とはまるで似ていない、気候激変の時代を生き延びてきたのだった。過去の詳細な記録から気候変動のメカニズムに迫り、人類史のスケールで現代を見つめ直します。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

いままさに我々が目の当たりにしている気候変動について、超俯瞰で捉え直す本。

超俯瞰=数億年・数万年スケール。
このスケールになるともはや身近とは言い難い。
が、古気候学や環境科学のファクトをふんだんに紹介することで、非常に説得力がある。
何より、固定観念を丁寧に解除し、単純・近視眼的な「善し/悪し」ではない尺度で考えるきっかけを与えてくれる。
学術的な本に馴染みがない私は最初ちょっと苦戦しましたが、かなりの良書だと思います。
おススメです。
 

・地球の気候は、大きなスケールで見ると常に変動している
・ここ300万年は、大きく見ると寒冷化が進行している時期
・ただし常に一定で「寒冷」な訳ではなく、寒冷期(氷期)の合間に比較的温暖な時期がくる、繰り返しパターンを持っている
・約1万年前~現代は、この氷期と氷期に挟まれた温暖な時期にあたる
・そして8千年前~、過去の傾向で説明できない例外的な気温推移をしていて、すでに温暖期が長く続きすぎているかもしれない状況
(人間活動が、次の氷期に突入するのを遅らせている可能性がある)
=これが現在いわれる「地球温暖化問題」
 

で、当然気候変動についての本なので
このスケールで捉えたときに、温暖化って必ずしも悪なの?という問い。
(ビジネスに与える影響や、環境破壊に対する人道的な評価などの、狭いスケールでの問いではない点は注意。本書は決してプロバガンダ本ではない)
 

・氷期とは「単に寒い」時期ではなく、突発的な気温の変動(例えば、9年間に6回もの干ばつを引き起こすような)を伴う、つまり温暖期と比べると気候が不安定でほとんど予測不可能な時期。
・5万年前には世界中に広がっていた人類は、1万年前に温暖期に入って初めて、文明社会を発達させた。
つまり気候の「予測」が成り立つ時代に入って初めて、本格的に農耕を開始し、後の人口増大・産業の発達に繋げることができた可能性が高い。
・そもそも人間が気候を左右するようになったのは、産業革命よりも前、農耕や森林開拓の影響によって。そうであれば、人間活動が「気候を左右しない」はもはや不可能に近いかも。
 

異常気象や自然災害頻発のニュースを見るにつけ、今が例外的に不安定な時代なのだと思い込んでいた。
大きなスケールで把握したとき、逆にこれまでが例外的に安定していた時代だったのだとしたら。
そして見てきたように気候変動は常に起こり得る(実際に3年程の短いスパンで一気に変転した歴史がある)。
結局我々がすべきことは、来るべき変動に向き合い、どう備えるか
そしてますます予測しにくくなる時代に、いかに予測を成立させるか
しかないのかもしれない。

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2023年08月07日

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