あらすじ
議論が難しく見えるのは、その仕組みや組み立てをうまく整理できず、表面の表現に惑わされるためだ。……議論は漫画やテレビとは違い、接してさえいれば自然にその面白さに浸れるというモノではない。読むほう・聞くほうも積極的に関わらなければ面白くない。逆に言うと、一定のテクニックを持つ者にしかアクセスできないが、それが持てれば一挙に広大な世界が開ける。――<本文より>
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Posted by ブクログ
『みんな違ってみんないい』、これは当たり障りのない意見。議論とは、むしろ当たり障りのある意見を出すこと。議論は正解がない。
異論が無視されない状況を作らねばならないし、くだらない異論は却下できる仕組みを作らねばならない。因縁や文句を付ける人間だけが有利になる。残念ながら、今の日本はそう。多数のムードを頼んで実効性のない政策や弱者の権利と称し不合理な決定がされる。どこかおかしいと思いながら、それを指摘できずにいる。
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ステレオタイプやフレームワーク、議論の前提や順序、弁証法など様々な論点から、著者は指摘している。
『①問題ー②解決ー③根拠』が基本の要素。
①独創的か?半常識的か?
②明解か?希少か?
③わかりやすいか?詳しいか?現実と対比しているか?イメージ豊かか?
(理由、例示データ、説明、引用、対比、比喩)
サポート情報である根拠は信頼性があるか、一方的でないか?
外皮をはぎ取り、日常生活から仕事まで様々な論議について、本質を透かしていきたい。
Posted by ブクログ
議論といっても、
いわゆるディベートのように、
話し合いでの言葉の使い方のテクニックを紹介というよりか、
しゃべりの基本となるであろう、
文章をやりとりする議論についてのもの、
といった性格のほうが強い、議論の指南書です。
新聞記事や、著名な作家や著述家の文章、
大学入試の小論文問題などから例を使い、
いろいろとそれらを解析して、
欠陥や不手際のあるところをつついていく。
そうして、議論と言うものの構造として、
それにかなう論理としてはこうだよ、と
教えてくれるようになっています。
いかに僕らが日常に使ったり目にしたりしている日本語の構造が
ふわふわしたものかというのが実感される。
それどころか、はぐらかしだとか、逃げだとか、
そういったテクニックに、半ば騙されるようなかたちで、
そういった文章をふつうに受け止めていたりすることにも気付かされます。
面白かったのは、
以前物議をかもしたという(僕はよくしらないけれど)
「どうして人を殺してはいけないのか?」
という若者の問いについての議論の論考のところでした。
大江健三郎氏の主張したものや、それへの批判や、
その批判への批判までをも取り扱って、
最後に著者の論考が述べられるのですが、
そこでの「他我をわかること」
といったような考え方は、わかりやすかったし、
僕がわりにいつも考えている共同体感覚と似た考え方だなと思いました。
僕は、この本のその後の弁証法のところの例で、
「お金よりも命が大事、命よりも理性が大事」と出てきたのにヒントを得て、
人を殺してはいけないのは、
「自分や他人の理性を信じて、その理性を大事にしないといけないから」
とでも言いたくなりました。
それにバイオフィリアだとかあるでしょう、
人に備わった、生きものを愛でる性質だとかって。
まあ、食べ物のためとして豚とか牛とかニワトリだとかを殺しますが、
それでも、バイオフィリア的な心の持ちように似た、
人間同士の命を大事に思う感覚って、
ニュートラルな人間の状態としてもっているのではないかな。
著者が言う、「他我をわかる」というのにも、
やっぱり結びつきますかね。
ざっくばらんに、解き明かす議論の論理構造。
おもしろい授業を受けているようでもありました。