あらすじ
天涯孤独のシゲル少年の心を支えたのは、甘いお菓子への憧憬だった――戦争の敗色濃くなりゆく時代を背景に、過酷な運命を生きる少年の姿を描いた永遠のロングセラー。著者自身が体験した辛苦、絶望の中でも失わなかったささやかな希望を、人間愛の讃歌へと昇華させた感涙の物語。
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Posted by ブクログ
≪内容覚書≫
時代は戦前から戦中、そして戦後。
甘いものが手に入れにくかった時代。
孤児として生きるシゲルは、お菓子への強い憧れを胸に大切に抱き、
たくましく生き抜いていく。
≪感想≫
シゲル少年は、不幸な境遇なんだけれども、
幸運な子どもだなぁ、と思った。
道を踏み外しそうになった時、真摯に向かい合ってくれる人と
次から次へと出会う。
と、最初、思ったけれど、読み終えて、じっくり振り返ってみると、
違うかな、という気がしてきた。
きっと誰にでも、そういう人はいるんだろうな、と思った。
ただ、それを素直に聞き入れられるかどうか。
そこが、人によって大きく違う。
シゲル少年は、なんだかんだと言いつつ、人の「愛」を、
きっと信じているんだと思った。
だからこそ、いろんな人の、ちょっとした温かさや強さを
受け入れて、そしてまっすぐ生きて来られた。
途中から「お菓子」=「愛」だと思って読んでいた。
また、戦時中でも孤児や少年犯罪者を受け入れる施設が、
きちんとあったことに、驚いた。
混沌とした時代のイメージがあるため、
そういうのはなくなっていたかと思った。
他にも兵役忌避で逃亡した人や、
ましてや自殺した人もいた、という事実も衝撃だった。
嫌がりつつも、みんな戦地に行ったような気がしていた。
そんなわけなかった。
戦中の小説を読むと、
いかに、自分の中の戦時のイメージが偏っているかを、
目の前に突きつけられて、愕然とする。
たくさんの本を読んで、視点を増やしたいと、思わされた一冊。