あらすじ
現代人は自分の体面を保つために、周囲の見知らぬ他者の能力や実力を、いとも簡単に否定する。世間の連中はつまらない奴らだ、とるに足らぬ奴らだという感覚を、いつのまにか自分の身に染み込ませているように思われる。……このように若者を中心として、現代人の多くが他者を否定したり軽視することで、無意識的に自分の価値や能力を保持したり、高めようとしている――<本文より>
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Posted by ブクログ
今見てる若者がどうというよりは、自分が仮想的有能感を抱いている可能性が高い。自尊心が低く、仮想的有能感が高い、タチの悪い人かも、と。
どうするっていう処方箋の部分が、わりとあいまいな感じだったのと、あとがきで、まだ研究中ですみたいな逃げっぽいことが書いてあって、残念感はあったけど、自省出来たのは良かったと思う。
Posted by ブクログ
仮想的有能感という言葉で、自分を他人より優位に見るという感情を精緻に分析している。
自分にも常にこういった感情はつきまとっているが、理性なのか何なのかは分からないが表出はほとんどしない(させない)。
問題はこの種の感情を抱くか(これは人間としては仕方ないのか)どうかではなく、ストレートに表出してしまうかどうかと言うことか。
問題提起としては大いに納得できるが、解決法の突っ込みが少し弱いのが残念。と言うか、しつけや何かで解決できるような問題ではないのかも知れない。
Posted by ブクログ
自分の立場を高めるために、周りを低くするという説明になるほどなぁと感心した。自分を高めるためには努力が必要でも、他人を低めるのはただ見下すだけでいいんだもんなぁ。それで良く分からない自信にあふれた、他人を見下す若者が出来上がるのか。
とか言って、ニュースを見て「この政治家バカじゃないの?」とか言ってる自分ももしかして他から見たら他人を低く見ている若者の一人なのかもしれない。俺より頭いい大学出てる政治家さんは沢山いるのにね。
中盤から後半(4つの区分に分けるあたり)が、前半に比べ話がちょっと難しくなり流し読みな感じになってしまったが、まず興味深く読むことができた。
今後、年下に見下されているようでなんとも悔しい思いに駆られた時にでも、再び読み返したいと思う。
Posted by ブクログ
めーーーーっちゃ面白かった。
仮想的有能感の切り口で語られる世界に、【こんな考え方で切れるのか!!!】と興味津々だった。
少し愚痴っぽいけれど、
ああそういう見方もできるのね!って感じ。
Posted by ブクログ
日本人は昔より、心から笑うよりも表面的に笑い、悲しむよりも怒ることが多くなったそうだ。実感として感じないわけではないが、自分もその一員である自覚もややある。
この本はそんな日本人の変遷を学問的に解析して、日本人の分類までしている。
「仮想的有能感」と呼ばれる「自分だけが偉い」感は日本人に蔓延していて、その回避のためには「しつけ」「自尊感情」「感情どうしを交流させる」ことが必要だ、と説く。やらなければではなく「やりたい」に、できるためには、もっと日本人どうしが「協同」や「想いの交流」をするということが必要なのかもしれない。
Posted by ブクログ
本書は約20年前に出版された本であり、当時の若者→アラサー・アラフォー、ケータイ→スマホ、メール→LINEと時代は移り変わってしまったが、若者を取り巻く本質的環境は、さほど変化していないだろう。(特に社会的環境)著者は、自尊的感情が少ないことが、若者が他の人を見下す要因の一つであると述べている。著者の解決策は他者への貢献であるが、他にも解決策を知りたいと感じた。私も人を見下すことを無意識的にしている可能性があるため、決して他人事ではない。自分の戒めとしたい。
Posted by ブクログ
2006年出版時の若者について買いた本、世代のおじさんが若者を見る価値観は変わってないのかなと思う内容。
この時期に流行った「オンリーワン」や「等身大」等、若者の文化を理解することは難しく、昔は良かったというのは簡単すぎないかと思った。
今の若者の「なろう系」や「タイパ」を私が理解するのが難しいが、昔は良かったで括らないことが大事だと気付かされた。
Posted by ブクログ
・社会的迷惑行為
自分に直接関係のない人間を軽くみているという心性の表れ
・仮想的有能感-自己防衛的機制
下方比較
・真の自己肯定感
周りの人間からの承認され賞賛される経験から
・社会化、自尊感性強化、コミュニケーション
自分がそうでないかをしっかり見つめる必要がある。
Posted by ブクログ
本書は、教育心理学を専門とする名古屋大学大学院教育発達研究科の現職教授の速水敏彦先生が、若者の他人を無視したような言動と感情の関係について考察し人間理解につなげることを目的として著した解説書であり、タイトルと表紙の口絵の軽さとは裏腹に深い内容かつおじさん世代には「たしかに!」と共感できる部分が多くかなりオススメ。
筆者の考察を要約すると、若者の他人を無視したような言動は、「仮想的有能感」すなわち根拠なき自己肯定に起因するものであり、日本文化の特徴でもある「悲しみの文化」の衰退が招いた社会現象であろうというものだ。仮想的有能感と悲しみの文化とは何か、簡単におさらいしておきたい。
【仮想的有能感】Positive illusion=根拠なき自己肯定
国際社会に通用する日本人の育成を目的とした教育システムのなかでは「アウトサイド・イン」(大人社会の価値基準に従って自己形成すること)による生き方から「インサイド・アウト」(自分の価値基準に従って自己形成すること)による生き方に比重がシフトしつつある。しかしながら、比較対象のない自己基準に基づく絶対評価は自己肯定に陥り易く、自己への期待が、一種の防衛機制としての他者軽視に繋がってしまっており、また、人の欠点を先に指摘した勝ちという風潮もそれを後押ししている。優位にある相手に近づくために自身の絶対的価値を向上させることで追いつこうとするポジティブな感情を生む「ジェラシー型嫉妬」ではなく、相手を攻撃し貶め追い落とすことで自身の相対的価値を向上させようとするネガティブな感情を生む「エンビー型嫉妬」を包含することも仮想的有能感の特徴である。
【悲しみの文化】
怒りと悲しみは同じネガティブな感情でありながらメカニズムが大きく異なる。人間の強さを象徴する感情である「怒り」は、他者(の言動)が介在する外的反応であり、他者に責任がある場合に見られる。一方、人間の弱さを象徴する感情である「悲しみ」は、他者が介在しない内的反応であり、誰にも落ち度がないときにも生じる。目標の喪失や到達・獲得できないことへの反応である悲しみの感情を抱く経験が、物質が豊かな現代では明らかに減少しており、「別れ」や「葛藤」などの悲しみの感情の風化に長い年月を要するということも少なくなった。個人主義傾向が強まった現代社会では、個人の損得には敏感になった反面、社会や他人の損得には共感できず鈍感になってしまっており、悲しみを即座に怒りの感情へと転化させてしまうケースが多く見られるようになった。そのため、自分の奥深くにある善人の部分に触れる機会は益々減少しているといえる。
Posted by ブクログ
なんかフツーというか。そうだよねとは思うんだけど、数字が多くて実例が少ないので、本としてはあまり好きなもんではない。
言いたいこと判る。
今ならもう少し突っ込んだ論が展開できるんだろうと思う。
Posted by ブクログ
悲しみの文化から怒りの文化へ変わってきたことで、他人を思いやることよりも、自分自身のほうが有能であるといった仮想的な有能感を得ようとする時代になっている。
著者の研究も道半ばであるが、納得するような仮説もあり、自分の行動を反省するきっかけとなった。
Posted by ブクログ
若者とは元来他人を見下す生き物なのでは?
「(他人を見下すことが許される)若者」でいられる期間が近年のびてきているとは思うが、平均寿命の伸びを考えると多少モラトリアムが間延びするのは仕方ないのではないか。
Posted by ブクログ
個人的な印象を話しているだけで、裏付けなどはあまりない。著者もその自覚はある。
読むと自分も含めて思い当たることは多く、とても、反省させられる。
でも、誰でも心当たりがある占いレベルの話だから、心当たりがあるという可能性もある。
Posted by ブクログ
仮想的有能感という、自分自身の経験などに基づかない有能感をテーマにデータをもとに考察している本。
正直、個人的にはデータの分析は良いとして、
筆者の考えに基づいて整理されているような気がした。
データの取り方もなんか納得いかない。
感情を日誌につけたものを使ったり、
教員側からの生徒の感情の評価とか。
「ま、そうなるよね」とは思うけど、
その結果から若者の心理傾向を評価していいのかはすごい不満。
言ってることは理解できなくはないけど、
納得はできない感じ。
もやもやはするけど、
読んでみてもいいかなって感じ。
若者論の一種だよね、これw
Posted by ブクログ
「自分以外はみんなバカ」。他人と比べてでしか自分自身の価値を見いだせない人間が増えている。
まるでスヌーピーのルーシーのように。
著者はこの気持ちを【仮想的有能観】と呼ぶ。
しかし本当の幸せは他人と比べることでは得られない。
自分が自分に頷ける生き方をしよう。
Posted by ブクログ
他人を見下すとはどういうことか。例えば、モンスターペアレント。我が子には全く非がなく、教師の方に間違いがあると一方的に決めつける態度。そういった、「自分は何も悪いことを行っていない。ただ他人の考えが間違っている」という態度をもつ人の増加がなんとなく増えているなと思い、手に取った一冊。
仮想的有能感という言葉は初めて聞いたが、面白い考えだった。自信の経験や実力に基づかない有能感。また、他人叩きをする心理に対して、他者を低く見下すことで自身を相対的に高く感じられるような心理と述べているのは、興味深い。このような現象の背景に、本書は教育のあり方まで話を広げる。良い点を評価しない、競争を行わない教育により子供は自分の長所を見つけづらくなるというような論調。
面白い本だったが、後半はあまりにも筆者個人の理想とする生き方のようなものが押し付けられているような感じがして残念。データを元に、客観的な分析が行えているだけに。
もっとも印象深いのが、映画「ライムライト」について語る部分。他人の幸せを願い、自らの利益を失う、その際に感じる感情を真の悲しみと言っていた。
そういった、悲しみの減少があると言っていた部分は非常に興味深い。
Posted by ブクログ
仮想的有能感に浸ることで、恵まれない人生に充足感を得ようとする、他者の価値を下げることで自分の評価高を求める。本書はそのような傾向は中高年にもあると書いてはあるが、なにぶん,タイトルが刺激的なために誤解を与えやすい。
あと、ピーナッツのルーシーとチャーリーの引用例や女性のみの被験者のデータについて触れるなど、不当に若者、子ども、女のみ貶めている印象も否めない。
データのみとってきて分析しているが、ではその仮想的有能感から逃れるためには、という解決策を示さないあたり、典型的なダメな教育学の本。
…というふうに批判すると、仮想的有能感と言われるのだろう。
読んで無駄というわけではなかったのだが、参考文献リストぐらいつけてほしい。あとこの手の社会批判本は、ほんと著者の人格次第で読み手に不快になるか、ならないかが分かれると思う。
若者がキレやすいのはネットやゲームだけのせいでなくて、昔の若者よりもがんばっても報われないことがわかりきっているから。大人は子ども若者批判をする前に夢を与える生き方をしなくてはいけないのだが。
Posted by ブクログ
第1章 感情が変わった
第2章 やる気が低下する若者たち
第3章 他者を軽視する人々
第4章 自己肯定感を求めて
第5章 人々の心に潜む仮想的有能感
第6章 自分に満足できない人・できる人
第7章 日本人の心はどうなるか
という構成。
第1章では子どもの様子から感情の変化について述べている。
怒りを感じ表出しやすくなった。悲しみにくれ、喜びにくい、感情を表出しにくくなったなどの変化を様々な文化的側面(歌、映画など)からも考察する。
第2章では、やる気がもてず、自信をもてない若者が増えていることに警鐘を鳴らしている。
また、若者が集団を好まない傾向にもあると指摘する。
第3章では、親が過度に教師に主張したり、傍若無人な若者が増えていると述べている。自分のことだけに感心をもち、他者を軽く見る人がいるからこそ社会的迷惑行為が増えるという。
第4章では、自分自身への感心の集中と肯定的感覚、さらにその考えを維持したいという欲求から、自己愛的性格が浸透していると指摘している。
第5章では、他者軽視と仮想的有能感のメカニズムを解き明かしている。本人の意識されないところで仮想的有能感が形成されると、他者軽視という態度や行動が表面化する。
第6章では、仮想的有能感と自己愛的有能感は別とした上で、有能感を4つのタイプ、年代別
に分けて考察する。
第7章では、仮想的有能感が今後進むとして、それを断ち切る方法として、しつけの回復、自尊感情の強化、人との触れ合いを提言している。
Posted by ブクログ
他人より自分の方が能力が高いと感じる人の心理を解説した本として読んだ。日本人の個人主義は自分を大切にするが、他社の存在•思想を大切にしないことに未熟さがあると思う。加えて、現在の日本はモノもサービスも豊かになっていて、ちょっとした不自由に不満を感じる人が多くなってしまっていると感じた。他人を尊敬すること、モノやサービスにありがたさを感じることを再確認しなきゃ
Posted by ブクログ
自分の自己中は許して欲しいのに、
他人の自己中は頭に来る。
そんな人は、他人を見下しているとな。
統計やアンケート結果には根拠がないし、
ずいぶん偏った(批判的な)意見ばかりが取り上げられていたが
自己中を自覚している身には耳の痛い話が多かった。
以下、気になった文章の転記
・今の子供は怒られた事に対して被害妄想がある。
・怒りを感じても関係が壊れるのが怖くてぶつかろうとしない。怒りの感情の出し方がわからず、物を隠したり仲間はずれにしたりしてしまう。
・代わりがすぐに手に入るから、あきらめが早い。悲しまない。努力しない。
・エスキモーのある種族は怒りの感情がない。悲しみという言葉がなく孤独という意味の言葉があるだけ。
・人から注意を受ける⇒低く見られた⇒怒り
・自分の長所と短所が言えない。⇒昔は集団で遊ぶことによって比較し、自分が何に優れて何に劣っているかが自分で分かっていた。⇒絶対評価によって比較が出来なくなった。協調性がないこと(自己中)も個性とみなされざる負えない風潮。
・親の問題行動
①担任がハズレ(世話になっている発想がない)
③家族旅行で学校を欠席
・罪悪感が薄れているのは、地獄に堕ちる、閻魔様などという怖い話を聴かされなくなったから。
・ホームレスへの対応
・ピーナッツに見るルーシーとチャーリーの性格
・プライドが高くて他者に助けを求めない自分の弱さを露呈したくないので。劣等感に目を向けず他人を見下すことで優越感に浸る。
・甘やかされすぎる事によって生じた自己愛への危険
★(a自尊感情)の高低×(b仮想的有能感)の高低
a自尊感情…自分は優れている
b仮想的有能感…他人軽視
①仮想型(a低×b高)クレーマー
②全能型(a高×b高)傲慢社長
③自尊型(a高×b低)人望社長
④萎縮型(a低×b低)欝傾向
・冷めている・熱くなれない理由⇒努力なくして成功することがカッコいいと考えている。自分自身の努力の経験が乏しい。
・自分の失敗を認めたくないから、先手を打って他者をバカにする。
・自己中を防ぐ⇒勉強だけしてればよいというのは× 積極的に家の仕事を分担させ、社会で生きる事、自分の役割を教える。どんなに小さいことでも習慣化させることが大切。
自己中の私が、子育てなど出来るだろうか。
これは、自分が自己中だと自覚した中学生からの悩みでもある。
自分が当たり前だと思っていたり、いいじゃんいいじゃん
と思ってやっていたことが自己中だったということに
指摘されて初めて気づくことが多い…
最近、自分が怖い。
自分を客観視出来ていない事ほど怖いことはない。
楽観主義すぎるのも、考えものだと考えさせられた一冊。
Posted by ブクログ
自分もまさに仮想的有能感は強い。なぜそうなのか?の理由は本書に(根拠は薄いが)あるので、参考になる。
が、そこからどう向き合っていくべきか?がほとんど無いのは残念。
Posted by ブクログ
私が若者だからなのか、うーん?と思うところもいくつかありました。昔の若者との比較も、そんな比べられてもねぇ・・という感じ。実際他の人からみた若者の姿がどう思われているかは分かりませんが。ただ、他人を見下す傾向あるのは、若者特有なのではないと思います。きっと社会人になったらそういうことも少なくなるはず・・・と信じています。
Posted by ブクログ
自尊感情故に他者を見下すという部分に、自分もそうなのかなと思う点があった。他人に対して厳しかったり、自分ができると思い込んでいたり。そういうところが無いとは言い切れない。しかし「概して「悲しみ」は、人間の弱さを象徴する感情であるのに対して、「怒り」は人間の強さを象徴する感情であると言える」という部分に対しては疑問を感じた。弱いから悲しむのではないし、強いから怒るわけではないと思う。
Posted by ブクログ
他人を見下して自分に有能感を得るという仮想的有能感により若者の心理分析を行った本。
仮想的有能感が促進される理由を社会背景から説明しているが、誰しも持つ感情ではあるからそれだけで説明できるかは謎ではあるがこういった分析本なら押し切らなきゃ書けない気もするし。
Posted by ブクログ
辛い現実を直球で語るため読んでいると辛くなります。でも、やはり現実を語っていただく情報は貴重かと。小学生ですらいじめられないためまわりの空気の読みつつ行動している現状を知らされるとゾッとしますが。。。