あらすじ
一九七五年――昭和五十年。広島カープの帽子が紺から赤に変わり、原爆投下から三十年が経った年、一人の少年が東京から引っ越してきた。やんちゃな野球少年・ヤス、新聞記者志望のユキオ、そして頼りない父親に連れられてきた東京の少年・マナブ。カープは開幕十試合を終えて四勝六敗。まだ誰も奇跡のはじまりに気づいていない頃、子供たちの物語は幕を開ける。
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Posted by ブクログ
1975年の奇跡の優勝を軸に展開する中学1年生の友情(+かすかな恋?)の物語。
重松さんこの小説を書いてくれてありがとう。
控えめな熱狂的カープファン(広島生まれ)だが知らないことをたくさん知れた。またカープのことを知らない人たちにカープの素晴らしさを教えてくれた。
以下は心に残った場面の箇条書き。
181ページ
七月二十六日という日付を戦争と結びつけたことは、一度もなかった。(福山の空襲を受けた日付)
281ページ
「この帽子、お母さんにあげるから。それで、カープの帽子、かぶって帰る」(マナブ@東京が母との別れ際に)
369ページ
「広島の山本」は、やっぱり「浩二」の前に「一義」なんよ (広島出身の山本一義選手の元祖男気エピソード)
489ページ
この三連戦あたりから、家族の遺影を掲げてスタンドで観戦するひとが、目に見えて増えてきたのだという。(優勝争いの終盤のヤクルト戦)
559ページ
いまのファンではない。もっとこの国が貧しかった頃、広島の街にまだまだ戦争や原爆の傷痕が残っていた頃、なけなしのお金で買った入場券を握りしめて球場に通っていたひとたちだ。(優勝を決める試合中、カープと広島の人々の辛苦を回想)
563ページ
それでええんよ。それはほんまにええことなんよ、と嚙みしめる。「ほいじゃが、忘れたらいけん。忘れてしもうたらいけんのよ」(カントクさんがカープ弱小時代を顧みて。戦争のことでもありそう)
592ページ
「別に好きになってくれんでもええけど……ずうっと忘れんといて」(真理子がマナブとのお別れで。広島のことだけでなく自分のことでもある?)
623ページ
「わしゃあ、待っとる!マナブ!わしゃあ、ずーっと、待っとるけえの!」(ヤス@カープ宮崎キャンプ)
以下その他メモ:
マナブの父 勝征が結構謎な存在だけど、実はこの人も戦争に関する被害者である設定があるような気がするけど、どうだろう。
あとがきを読んで、ベルリン3部作も読んでみたくなった。
Posted by ブクログ
広島ネタが満載で、贔屓をして最高評価。
広島弁と、小さいころに聞いたジャンク語が盛り沢山。
原爆投下、1975年カープの初優勝と、やんちゃな野球少年、転勤族の子供たちの成長と共に描いている。
1、アメリカの行った理不尽な事実
・B29の爆撃機に付けられた名前は記帳の母親エノラ・ゲイ
・8/8福山、岩国、東京空襲で 原爆後も大量殺戮
2、・結核で入院中の患者が、カープ樽募金を呼びかけ
金山に手紙を書いたら、入団OKの変身を返した
以後RCC解説者として活躍
・山本一義 地元への情から入団。
広島に来るたびにファンの熱烈な歓迎を受けた
・中日との終盤対決で、クロスプレーでトラブル。ファンがグラウンドに流れ込んで中日の選手を負傷させた。
警察とも衝突し、逮捕者も出る。翌日の試合が中止に。
3、優勝決定するかもしれないヤクルト戦は、平日デイゲームだったが満員に。皆仕事を休んで観戦。
教室でラジオ放送を掛ける学校の先生。確かにこんな先生はいた。
4、寮の大家さんが、家具や着物を売って選手に肉を食べさせた話は有名。雨で試合が中止になっても払い戻し無し。
5、1958の設立から26年間最高順位は3位。
Posted by ブクログ
「よそもの」である転校生を主人公に、万年Bクラスだった広島カープが初優勝した頃の広島を描いた作品。広島初優勝までの軌跡をファン目線で語る話かと思いきや、原爆、マルチ商法、ひとり親、友情など、様々な要素も入り混じる、戦後の広島を描いた作品となっている。
2016年の広島カープ優勝の際、店頭に並んでいたカープ特集のなかから購入。作品のなかで登場する広島弁が小気味いいせいか、1975年当時の描写が豊富に描かれていたためか、あたかも当時にタイムスリップした気分を味わうことができ、サクサク読み進めることができた。また、広島市民のなかで原爆がどのような形で日常生活に組み込まれているか知る一助になった。時折読み返したくなる良書。
Posted by ブクログ
今まで読んだ重松清さんの作品と比べると好きな方ではなかったが、原爆の話は読む価値あり。ハッピーエンディング好きなので、終わり方が切なくて残念。
ちょうど被団協がノーベル賞を受賞して、被爆者の声を聞いて、世界が原爆について改めて考えるタイミングだったので、この本を読んで良かった。
カープの話はあまり興味がなかったので、その部分が長く、読むのに時間がかかりました。30年前はずいぶん野蛮だったのだとびっくり。
原爆、カープ以外にも、マルチ商法、片親、中学生男子の友情など、色々盛りだくさんな内容。子供達にも勧めたい本。