あらすじ
「産み人」となり、10人産めば、1人殺してもいい──。そんな「殺人出産制度」が認められた世界では、「産み人」は命を作る尊い存在として崇められていた。育子の職場でも、またひとり「産み人」となり、人々の賞賛を浴びていた。素晴らしい行為をたたえながらも、どこか複雑な思いを抱く育子。それは、彼女が抱える、人には言えないある秘密のせいなのかもしれない……。
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Posted by ブクログ
価値観の正義に嬲られてるような感覚に陥った1冊。
今ある正しい価値観も、100年後には変わっている
というフレーズが、この1冊を象徴するキーワードの代表だとも思う。
短編集で、読みやすい一冊でした。
様々な法や価値観が存在する社会で生きる人々の物語は、どれもラストが予測できないものばかりで、楽しんで読むことができました。
Posted by ブクログ
一冊読み終えてまず強く残ったのは、著者は世の中にあんまり期待してなさそう(?)という感覚だった。人間社会を内側から描いているというより、地球人について学んだ宇宙人が、地球人向けに書いたSFを読んでいるような視点。世界をかなり俯瞰で、少し距離を置いて眺めている感じがする。その距離感が、個人的にはとても心地よかった。
その感覚をいちばん象徴していると感じたのが、最後の短編『余命』。
『女子にぴったり!可愛い死に方100選』『男のインパクト死!印象に残る死に方でかっこよく逝く方法』というフレーズが強烈で、今まさに世界中で議論されているジェンダーの問題には一切触れず、「女は可愛いものが好き」「男はかっこつけたい生き物」といったステレオタイプな言葉遣いを、何の疑問もなくそのまま使っている。その無邪気さというか、無関心さが逆に不気味で面白い。
「自分で余命を決められるようになった」という設定だけを社会にポンと置いて、あとは完全ノータッチ。価値観も言葉も現実世界のまま。パッケージ化されたものをそのまま信じて使っている感じが、なんというかすごく宇宙人っぽいと思った。
「テレビで若者の流行り言葉として紹介された言葉を、おじさんおばさんが使い始める頃には若者はもう誰も使っていない」みたいなズレに近い気がする。カルチャーの中心にいないからこそ、外側から見よう見まねで取り入れている感じ。その微妙なズレの感覚が、意図したものだろうからこそ笑える。
「死に方にも流行がある」という設定も、皮肉が効いていて印象的だったので引用する。
「土に還る、というのは今人気の死に方だ。死んだあと、あの人はああ死んだらしいとか、普段は地味なのに派手で迷惑な死に方をする奴だったとか、いい歳してあの死に方はないだろうとか、人間性を噂されたりセンスを笑われたりするので、なるべく大人しく、それなりにお洒落に死にたい。
医療がここまで発達する前は、死は向こうから勝手にやってくるものだったという。楽でいいなあと思う。今はわざわざ、人目を気にしてセンスのいい死に方を探しながら自分を葬らなくてはいけないのだから。」
生きている間だけじゃなく、死に方にまでセンスや評価が付きまとう世界という設定は、笑えるのにどこかゾッとする。
『トリプル』もかなり好きだった。若者の間では当たり前になっている新しい性文化「トリプル」を実践する主人公・真弓と、それを頑なに穢らわしいものとして扱う母親との対比が、完全にブラックジョーク。
実の娘に向かって「ラブホテル」「乱交」「3P」って言葉を使いながら真剣に注意している母親の姿が、あまりにも滑稽で笑ってしまった。
表題作であり一番長い中編の『殺人出産』については、正直そこまで刺さらなかったかも……?というのが本音。でも『清潔な結婚』も好きだったし、他の短編も総じて面白かった。
人の身近にある「生と死」や「性」を扱いながら、常人では思いつかない方向に突き抜けていく感覚に、著者が親しい友人から「ぶっ飛んでる」と評されるという話にも頷けたし、読んでよかった一冊だった。
Posted by ブクログ
◯殺人出産
とんでもない世界観に衝撃的なラスト。
眉をひそめた、こわばった表情で読み終わった。
怖すぎる。あんなに柔らかい雰囲気の方からこんな話が出てくるなんて。
怖すぎる。
→印象に残った文章
あなたが信じない世界を信じたいなら、あなたが信じない世界を信じてる人間を許すしかないわ。
◯トリプル
トリプルのセックスが痛くて怖そうに思えた。
◯清潔な結婚
→印象に残った文章
そもそも、従来の、夫婦でセックスをして子供を作るという考えが、古いんです。
◯余命
→印象に残った文章
楽でいいなあ。今はわざわざ、人目を気にしてセンスのいい死に方を探しながら自分を葬らなくてはいけないのだから。
全体を通して、自分が当たり前と思ってることは本当か?当たり前を信じる必要あるのか?と思わされた。怖いけど読み進めたくなる不思議な文章、物語でした。
Posted by ブクログ
性をテーマにした短編集。
10人産んだ暁に1人誰かを殺めることができる、ってそう遠くない未来にありそうな考え方だなと思った。村田さんの表現ってリアリティがすごくて迫ってくるような印象だから、いつもの村田ワールドきたって思いながら読んでました。
Posted by ブクログ
一見狂ってしまったシステムを正当化する人々、変わっていく新しい世代、未だに受け入れずに逆行する人々など、奇妙なズレが気味悪かった。
妙に生々しい描写もあり、引き込まれてしまった。
Posted by ブクログ
ディストピア系を初めて読みました
うちにこの作品を説明出来る語彙力がないことを感じ
ました
殺人出産(表題作)
10人産んだら、1人殺しせる世界では、強い殺意は才能としてる感じや、日常会話で「殺したい人いるー?」が普通に出てくる
あと、セミのスナックと、蟻のサラダも今じゃありえないが、この世界では流行りの食べ物とされてたところとかも変だった
うちの異常は誰かの常識かもしれんと感じた
トリプル
3人はうちには想像がつかない、やはり2人でしょと思うのも先入観みたいなものかもしれない
うちは凝り固まった価値観しか持ってないかもしれない
清潔な結婚
一番現実味がある気がした
今でもこういう人いそうだけど、一昔前だと有り得んし、今ですらよく思わない人もいるかも?
余命
100年後ぐらいになれば、こうなっているでしょう
医療の発展が恐ろしく進むと、こんなこと起こるよねが書いてあった