あらすじ
トルコ東部のワン湖に棲むといわれる謎の巨大生物ジャナワール。果たしてそれは本物かフェイクか。現場に飛んだ著者はクソ真面目な取材でその真実に切り込んでいく。イスラム復興主義やクルド問題をかきわけた末、目の前に謎の驚くべき物体が現れた! 興奮と笑いが渦巻く100%ガチンコ・ノンフィクション。
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Posted by ブクログ
UMAってものには実は興味はあまりないんだけど、読んでみてすぐ引き込まれた。
UMAの探索のはずなのに、民族問題や政治思想まで踏み入れて、最後にはなぜか立場逆転!?みたいなことになっていて、冒険記としてたいへん面白かった。
ジャナワールという真偽不明で、地元民からはほぼ確実にオワコン認定されているものを通して見る人間模様、というのがとても不思議な感じがしたのと、それに加えて景色の浮かぶ文章が良かった。トルコに行きたくなった。
2007年刊行なので、その後がとても気になる。結局、正体は何だったのか!?
Posted by ブクログ
いやー、すごく面白かった。最初の書き出しから事件の匂いがして惹き付けられた。最後まで面白かった。絶対に自分が行かないところにいって、絶対にやらないことに時間を使ってくれる人。
自分の目で、確かめたい!という気持ちがすごい。夢のある怪獣を追っているはずが、すごくホットな政治やいざこざの話に直面してしまったり、異文化の暮らしに感銘を受けたり、ものすごく人間くさいところを「意図せず」拾ってしまっているのも、彼の信念がそうさせているのだろうと思う。
なんかそのお土産が、今回すげーでかくね、って思ったけど、それだけでかい獲物だったのだろう、ジャナ。
そういう、未確認生物っていうのは、なんかそれだけ人の想いというか、そこに人的な意図は絶対あるかもしれない、意図というより、社会の視点というのは。生物の発見というより、そういう社会的な視点の発見でもある気がする。
ジャーナリズムについても思うところはあったなあ、報じる内容以上に報じること自体への意図が、そこにジャーナリズムがある限り、存在するのだから使い方というのが問われる。エセなジャーナリズムを働く人や利用して権力を得ようとする人たちがいるというのは、他の犯罪と同じように、やっぱりその社会全体の体制や構造の歪みが出てるんじゃないかなと思う。
そういう不正、端から見たら何やってるんだか、という茶番にしか見えなくても。そういう意味では怪獣より人間の方がよっぽと滑稽であった。それが、著者の立ち場が怪獣探し、というお題目ゆえに自由にどこまでも表現したり追いかけたりすることができる、ということのメリットだなあと思う。著者は本当に怪獣探しだけがしたいわけじゃなくて(したいとは思うけど)、社会的なニーズ(義務)に応えようとするバランス感覚もきちんと持っている人で、それでギリギリ、完全なる変な人を免れている。
どんなに奇妙な生き物がいても、獲物を見つけても、「見てー!」って言って喜んでくれる人たち、伝える人たちがいなくては意味がない。
見て、ここにこんな変なおっさんがいる!って、いうのでまず元気が出る。怪獣っていうのは、その生き物自体の有無よりも、安定した社会基盤なくしては、登場しないものなのだろう。
で、いるの?いないの?はっきりして!
ということではない。つまりこんな変なおじさんと、私たちとまったく違う暮らしを当たり前のように営む異国の人たちがいるということ、それは本当に存在するものなのだから。そんな変なおじさんも、異国の民族の暮らしも、すごくすごく貴重で怪獣なんかよりも絶対に、あって欲しいものだと思った。
Posted by ブクログ
とても冒険心をくすぐられる。
情報が繋がっていく時の興奮が手に取るように分かり、世界のミステリーを暴くテレビ番組を見ているような気持ちになる。
クルドのグルメがとても美味しそう。こういう普通の旅の記述が時々入ってくるのが良い。フッとその土地の良さを感じる瞬間だ。高野氏の著書に登場する現地の人たちはとても人間味を感じて好きだ。その部分だけを上手く抽出して読ませてくれているのかもしれない。ワン湖の周囲の美しさや土地の空気感を、出会う人々から感じる。映画でも見ているようだ。
教科書通りではない現場の宗教に触れることができるのも面白い。こういう時に日本との違いを強く感じる。
実際有り合わせの装備で湖を探索したのがすごい。何か事件が起きてしまわないかとドキドキしたけど、ここまで実際に検証してみる人は珍しいだろう。これこそが本当の冒険であり、こういう時に自由だと感じる著者の少年のような心が、この本を面白くさせていると思う。
どのように未知生物の噂が広まっていくか、目撃者の感情の変化、目撃証言の違いなど、著者が実際に目撃したことによって予想できる流れが記されていたのが面白かった。あやふやな未知生物を外堀から埋めていく感じ。見た人が、どの部分を強く受け取ったかによって証言は変わってくるというのは、事故や事件を目撃した人のものと同じだな。
Posted by ブクログ
せっかく怪獣を探しに行ったのに、いざ見つけてみるとどうしていいのかわからない状態になるというのが面白かった。怪獣を社会学的に分析するのは、作者のいつもの手法。ただ本当に見つけてしまうとなかなかその怪獣も料理がしにくいのはよくわかった。昔からワン猫を一度見に行きたいと言っていたのだが、この本を読んでその思いが強くなった。それで★が一つ増えている。