あらすじ
34歳フリーター、年下の同棲相手は失業中。エアコンは壊れ、生活費の負担は増えていく。昔の知り合いが彼女を連れて転がり込む。どんづまりの生活を変えたのは、はたちの男からかかってきた「テキ電」だった。――生き迷う世代を描き、フリーター文学とも呼ばれた著者の転換点となった傑作。
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Posted by ブクログ
なんでこんなに切実なんだろう?角田さんの文章は、自分にとっては、あまりにリアルすぎて、切実過ぎて、もう読んでいてこう、辛い。面白い。辛い。読みたい。辛い。好きだ。こう、本当に、ビックリするほどに、ビックリするほどに、「わかる!」という錯覚を、抱かせてくれるのですよね。この切実さは、凄い。
本当にこう、ヒリヒリすんですよ。「他人事じゃねえ!」って感じ。読んでて辛いが、でも読まずにはいられねえなあ、って感じ。素晴らしい。うん、素晴らしい。これ、好きな人はトコトン好きだろうし、ピンとこない人は、とことんスルーする作家さんではなかろうか?どうなんだろうか?謎ですね。でもまあ、これはまごうことなき真実ですが、僕は角田さんの小説が、超絶に好きです。これは真実だ。
主人公の「私」は、ちょいと気になる年下の男の子「立花光輝」に、本当に真心から?いやまあカッコつけとか感謝からの恋愛発展?みたいなんは絶対期待しただろうけども、とりあえず、大学行くための(だっけ?)お金を援助してあげようとして、バッチバチにキレられて、全ての人格を否定されちゃうくらいに罵られるんですが、が。
あれだ。同じ角田さんの著書「紙の月」では、あっちの本では、主人公の女の人、年下の男の子に、お金援助したやん。成功した、ようになったやん。一旦は。何故にこの話では、こんなに駄目だったんだろう。年上女が年下男にお金を援助するのは、あっちは成功してこっちは失敗した。なんでやねん。まあ、それが、人間の個性、っちゅうヤツでしょうかね?まあ、作品の違い、といいますか。
でも「紙の月」はアレはアレでオッケーで良かったですし、こっちの話でも、主人公の「私」は、「立花光輝」と出会ったのは、絶対にええことだと思うんですよね。タチバナコウキ、間違いなく、良いヤツだと思いますし。いやあ、人生って出会いだなあ。
とにかく、よーわからん感想になりましたが、この小説は間違いなく面白かった。自分にとっては。本当に「リアル」でした。マジで。
Posted by ブクログ
フリーター文学、と呼ばれているらしい。とにかく細かい金勘定が妙にリアルなんやけど、考えるべきことは他にあるやろ、と心の中でツッコミが止まらない。
34歳と35歳のフリーター同士の同棲生活。男の方のヤスオは典型的ダメ人間で、基本的には働かない、やっと就いた仕事も数日で辞めてしまうという有様。生活費を折半しようという取り決めもなし崩し的に破られている。タイで知り合った同じような人種を勝手に家に居候させたり、失業手当の受け取りを意味のわからない理由で放棄したり。とにかくあかん奴なのである。
主人公の女は働いているものの、なぜかこんなヤスオをあるがまま受け入れているようだ。消費者金融で金を借りたり、たかってくる母親を正そうとしなかったり、生きることに対する真剣さが皆目見当たらない。いや、やっと真剣になったと思えば、年下の男の子に救いを見出そうとしたり…。ヤスオの態度はどうかと思うがまだ“あるある”で、この女の態度はありえない“怖さ”があった。
日本にも貧困にあえぐ人たちがたくさんいる。一応大学までの教育を受け、平凡ながらも就職した自分の周りにはあまり見当たらないが、見当たらないからと言ってなきものとして考えていなかったか。この小説にはフリーターの苦渋を伝えようという意図はないが、やっぱりうんと考えさせられるものはある。
彼らに足りないのは、お金でもなく、仕事でもなく、情報や教育や思考なのかななんて思った。