あらすじ
こんな痛快な男はもうどこにもいない。「大統領や首相の代わりはできるけど、勝新の代わりは誰ができるんだ?」「今後はパンツをはかないようにする」「俺としゃぶしゃぶか? 一つ"シャブ"が多いんじゃないか?」脚本を破壊し、役柄に自らを同化させることを是とした名優、勝新太郎。彼の最後の「弟子」が描く、「最後の役者」勝新の真実とは。――みんな勝新が大好きだった!
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Posted by ブクログ
勝新太郎の映画と私生活のエピソードを書けば面白くないわけがない、と思われるのは著者にとって損なことだろう。そんな予断を持って読み始めたが、やっぱり面白い。日本映画ファンを自称する自分としては、勝新太郎映画をあまり見ていないのはお恥ずかしいのだが、それに加えて、テレビをほとんど見ていないので、晩年のテレビ映画の傑作と言われるものを何とか見なくてはと反省している。
映画俳優の伝記としては、著者と勝新太郎との私的な関係のこともあってか、少し思い入れ過剰だと思われるのが残念である
と言いつつも次は山城新伍の「おこりんぼ さびしんぼ」(積ん読状態だった)を読んでみようと思っている。
勝新と云う宇宙…。
2024年10月読了。
春日太一著『天才・勝新太郎』を読んだ後で、この本をずっと読み忘れていたことに気付き、慌てて読んだ。でも、春日さんの本も《本書の参考文献》に入っていたから、刊行順としては合っていたのだ。
読後の感想については、解説の吉田豪さんが簡潔且つ的を射ており、正にその通りと云う感じ。正直、12章以降とそれ以前で全く別の本かと思うぐらい、著者の熱量が違う。
資料は駆使しているものの、基本的に『映画』や『時代劇』への思い入れ度が、春日さん等と違い過ぎて、11章までは《週刊誌の特集記事》の域を超えていない。着眼点も《如何にも週刊誌が喜びそうな》興味本位(や俗っぽい逸話)等のエピソードが多く、事実確認が不正確な部分も散見されたが、
それでも《12章以降を読めただけで充分満足》な内容だった。勝新が某政治家の様に『半径○mの男』と呼ばれるに相応しい、愛すべき人物であったことが、文章から伝わってきた。それにしても《資金繰り》の一点だけで、まるで喜劇の様に何度も失敗を重ねる勝新は、笑ってしまう程《純粋》あり、そう云う人に限って「とびきり怪しい儲け話」に引っ掛かってしまうのも、哀しかった。
あと、付け加えるとしたら、やはり黒澤明との確執だ。こういう話はやはり《両方の言い分を聞かなくては、正確な事実は分からないものだな》と、つくづく可笑しく感じた。
アチラはアチラで同様に、資金繰りや製作プランで大きく躓いており、年の差は有っても『(相手に)素直になれない』要素があったのだろう(黒沢年雄のエピソードも可笑しかった)。
何にせよ、『日本の映画製作には、《資金調達》と云う点において、世界中のどの国よりも難しく、公的に援助するシステムが全く介在しないこと(=国によっては国家補助が出るところもある)』
『《ジャパニメーションがどうのと》口では何と言っても、わが国の政治家達は国家的な補助や予算を補助するシステム(例えばアメリカの金融融資方法等)を、何も考えていないこと』
『海外からも指摘される“アニメーション(実写も)の現場の超低賃金問題”について、《国の文化を守る》と云う観点を全く持ち合わせていない政府』…
こうした点からの“問題解決に向けた方策”が考えられなければ、日本の映画やアニメ業界はいずれ他国に取って奪われ、廃れていく一方であるのは昔も今も変わっていない。