あらすじ
父と娘、師と教え子の絆は、せめぎ合うことで強くなる――細胞のように。天才脳外科医・内海遼一の脳に異変が襲ったころ、遼一に勘当されていた娘・綾子は、創薬コーディネーターの恋人の変死体と対面し、慟哭の最中にあった。厳格な父と亡き恋人の知られざる接点が判明したその時……事件究明の鍵を握る父の記憶は、まさに崩れ落ちようとしていた。生と死の葛藤を描いた心震える医療サスペンス! (講談社文庫)
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Posted by ブクログ
鏑木蓮氏の 人を見守る視線のあたたかさは
もうこの頃から育まれていたんですね。
処女作からは 格段に進化された作品だと思います。
対人医療と動物医療 二つの専門領域にまたがる
広範な知識と論理立ては 気が遠くなるほどの綿密な取材
なくしてはあり得ないでしょう。敬服しました。
鏑木作品を読むといつも思うのですが 本当にすべての
登場人物に向けられる視線があたたかい。やさしい。
発端の殺人は
複雑で醜い人間模様の広がりの入り口にも過ぎず
本当の事件は
それぞれの立場とそれぞれの自己尊厳 他者への敬愛
人間ならば誰しも理解できてしまう真摯な感情
そんな人の思いが生んでしまう悲劇だった。
背負うものがあってこその人生。
この言葉を強くかみしめたい。
追記 この作品から既に宮澤賢治…そして
イーハトーヴが出てくるとは!