あらすじ
零細店舗あふれる江戸の町。外食屋七〇〇〇軒。一二六人あたり一軒の古道具屋。米屋は一日三〇名程度の来店客――。十数年しか続かず、血縁原理も働かなかった商家がほとんどだった花のお江戸の商人たちの選択のドラマとは? 狭くて人口密度が高く、売り手買い手ともに自由な一大消費都市江戸の商いのありようとは? 四〇〇〇軒の商家を徹底的に数値解析することで、従来の大商家「越後屋=三井」史観に決別する。(講談社選書メチエ)
...続きを読む感情タグBEST3
このページにはネタバレを含むレビューが表示されています
Posted by ブクログ
大江戸商い白書
数量分析が解き明かす商人の真実
著者山室恭子
2015年7月10日発行
講談社
10月に読んだ本。
著者は東京工業大学大学院社会理工学研究科教授、日本史研究者。朝日新聞の別刷Beで月1ぐらいのペースで連載している記事の書籍版。毎回、数字史料を根拠に軽快な筆致で江戸の商売や暮らしぶりを解説してくれている。読んでいて江戸の町並み、商店、人々の暮らしぶりが見事に浮かんでくるのが不思議。
江戸時代、商売をする場合は「株」と呼ばれる営業の権利を保有する必要があった。新規に発行されることは少なく、公儀が政策的になにかをするときぐらいなもの。あとは、現在出回っている「株」を何らかの形で入手するしかない。一番イメージしやすのが、親から子への相続や贈与である。ドラマを見ているとほとんどそんな風に描かれている。しかし、事実は違う。非血縁者に譲渡することが半数。つまり、半分は他人に株を売って商売をやめてしまうのである。それほど、江戸時代の商売は厳しいものがあり、能力のない子に継がせるなどとという安易なことは行われなかった訳である。