【感想・ネタバレ】ヒトラーとナチ・ドイツのレビュー

あらすじ

ヒトラーは、どのようにして大衆の支持を得て独裁者となったのか。安楽死殺害やホロコーストはいかにして行われたのか。その歴史を知るための入門書であり、決定版の書。ナチ体制は、単なる暴力的な専制統治ではなく、多くの国民を受益者・担い手とする「合意独裁」をめざした。最新研究をふまえて、未曾有の悪夢の時代を描く。(講談社現代新書)

...続きを読む
\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

このページにはネタバレを含むレビューが表示されています

Posted by ブクログ

ネタバレ

ヒトラーの台頭、いかにしてドイツ6600万人の人間が、自由、脳、生命を独裁者に擲ったかを歴史から学ぶ。前は「ボヘミアの上等兵」は世論の支持を得てドイツを手中に収めたと考えていたが、実態はもう少し複雑だった。

ヒトラーがレイシストであることはドイツ人誰もが知っており、彼に政権を握らせてはならないと考える人も多く、そもそも出身はオーストリアであり、国会でも第一党とはいえ1/3の議席も持っていなかった。なぜ彼がドイツを支配したか。それに答えようとしている。

ナチが議会政治を嗤っていたのは周知のとおりだが、ナチが政権を握る前に、すでに国会による議会政治は形骸化しており、ヒンデンブルク大統領による大統領緊急令政治になっていたのは知らなかった。

パーペン、無能と思っていたが、意外と計算高い。ヒトラーを政権に入れ、議会制を終わらせ、共産主義運動を撲滅し、再軍備の果にヒトラーを、追い出す気でいたそうな。そういうわけで、ヒンデンブルクはあまり信用していない「ボヘミアの上等兵」を政権に入れたというわけだ。

そして、政権に入るやいなや、共産主義者への弾圧が始まる。突撃隊の暴行に警察は取り締まらなくなる。大統領緊急令(議事堂炎上令)で、州の首相の解任すらおもいのまま。国民は、非常時には多少の基本的人権の侵害は仕方がなく、また弾圧されるのはコミュニストのような危険思想の持ち主だけだからということで、体制側に付けば安泰だし関係ねえと考えていた。

ホフマンの撮影した写真、民衆宰相としてのヒトラー、恐ろしいことにヒトラーという狂人が人の良いオッサンに見える。おぞましい。

ヒトラーさん、まじで擁護できる点が一つも見当たらない。アウトバーンもヒトラーの手柄ではないし、失業対策も失業者を一時的にボランティア活動させ失業状態でないことにするという有様。

ヒトラーはもともと(戦前)、ユダヤ人の追放を考えておりユダヤ人の絶滅までは考えていなかったというのが面白い。確かに戦前は人権侵害レベルの弾圧はあれど、クレマトリウムでの大量殺害は行っていないはずだ。ところが戦争において発狂した(もとからしていたが)ヒトラーが、敵国=ユダヤ人と勘違いし、歴史上最悪の人災が起こった。

一応のカリスマはフランス降伏まで保てたが、そこからが最悪だった。カリスマ的支配はその構造上、指導者が不断に英雄的業績を上げる必要がある。戦時下の敵国降伏はまさしくそれ。おそらくヒトラーがギリシャ、ユーゴスラビアなどを侵攻した理由には(当然地政学的なものがメインだろうが)カリスマ性の維持という側面があるのではないか。そう考えるとあらゆる人間が失敗する以上、カリスマ的支配は支配体制としては下策に当たるかもしれない。

カリスマ的支配が死ぬまで続いた例は何があるだろうか? ナポレオンは違うだろう。ヒトラーは言わずもがな。チトーはイケそうか? 秀吉は? 後で調べるべきか。 しかし直感的に、カリスマ的支配の支配者が死んだ後はひどいお家騒動や内乱が起こりそう。やっぱこの支配体制だめだわ。

0
2021年04月27日

Posted by ブクログ

ネタバレ

ヒトラーが政権を取りやがて戦争とホロコーストへと進む、ドイツで起こったことの全体の流れを知ることができ、読みやすかった。
どうして国民の支持を得ることができたのか、どんな政策を掲げてどう独裁者となったのか、本書を読むことで疑問点はある程度解消された。入門書のような感じだろうか。ここで生まれた問いは、また別の書籍で詳細を読みたいと思う。
ヒトラーが排除すると決めた人々が連行されたあと、「治安が良くなった」と国民からは好評だったという話がグロテスクだった。
ヒトラーの暴走を止められるポイントが歴史上にいくつかあったのだろうか。ヒトラーの政治思想にはオリジナリティが見出せないと書かれていたが、同様の思想は共有されていたのだとすると、いずれ権力は持ったのかもしれない。
よく学んでいなければ分岐点を見逃してしまう場面はいくらでもあり、早い段階で抗議するということの大切さがわかったような気がした。

0
2025年10月08日

Posted by ブクログ

ネタバレ

「わからない」ことがわかった。

『暗幕のゲルニカ』を読んで、なんでこんな悲惨な状況になってしまったんだ?ナチス、ヒトラーって何だ?と、その歴史や背景に興味を持ったことがきっかけでこの本を読んでみた。

どのようにしてヒトラーが独裁政権を取ったのか、どのようにしてユダヤ人迫害が行われたのか、順を追って細かく書かれていた。
実際に起こったことが羅列されていると、なんだか自然の流れでそうなってしまったのかなと思ってしまう。
反ナチス側の人たちの動きなどは書ききれなかったと著者が“おわりに”に書いていたように、反対側の人たちの動きも知りたくなった。
映画でよく観るのは反対側の人たちだからそういう意味ではなんとなく知識として蓄積されているのかもしれないけど…
ヒトラー政権の支持率を見ると圧倒的で、極端な政策を打つ政権が支持されてしまうほど当時のドイツは不安定で、なんでもいいから圧倒的に引っ張っていってくれる力にすがるしかなかったのかなぁ、と想像した。
支配の諸形態である「合法的支配」と「伝説的支配」が不足したり、危機のなかでカリスマは生じやすい、らしい。

ヒトラーの独裁であっても、それが組織の力や意志となると、国民への影響力は大きいものなんだろうな。
たくさんのありえない法律が成立していって、この法律に則っているから“合法”という理由づけをして国民に示され、プロバガンダの影響もあった。第二次世界大戦後の国民アンケートではヒトラー政権前半を「あのときは良かった」と評価する人が少なくなかったとのこと。

第一次世界大戦と第二次世界大戦、どちらも敗戦国となったドイツ(この事実、あんまり気にしたこと無かった!)だから起こったことなのかもしれない。
でも、他国事じゃないんだよね。数十年しか生きていないわたしでさえ、時代の移り変わりの速さに驚いているこの頃。なんかうっすらと漠然とした不安が漂うこの頃。
歴史から学べることは学びたい。

0
2024年02月01日

「社会・政治」ランキング