【感想・ネタバレ】ヒトラーとナチ・ドイツのレビュー

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Posted by ブクログ 2023年03月13日

たいへん読みやすいながら、情報量も適度でナチ政権成立過程がとても分かり易い。
この手の本の中ではイチオシにしたい。

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Posted by ブクログ 2022年05月11日

本書では、1933年のヒトラー内閣成立から1945年のドイツ敗戦までの「ナチ時代」が扱われている。冒頭にて、ナチ体制とは、「民族共同体」という情緒的な概念で絆を作り、それは暴力による一方的なドイツ国民の支配体制でなく、当時の国民を受益者、積極的な担い手とする「合意独裁」であったと要約されている。

...続きを読む第1章から第5章はナチ体制の成立からナチス政権下の内政と外政、第6章と第7章はレイシズムと反ユダヤ主義、ホロコーストが取り扱われている。ナチスに関する書籍としては、比較的新しい本であり、最新の研究成果をふんだんに取り込んで書かれているのが特徴だ。

第5章の「ナチ体制下の内政と外交」では、ナチスに関する多くの俗説が反駁されている。例えば、ナチス政権下での失業者数の「減少」にはカラクリがあり、①労働市場における若年労働力の供給を減らすために、さまざまな形の勤労奉仕制度が導入された、②労働市場における女子労働力の供給を減らす措置がとられた、③失業対策が軍事目的と結びつけられたといった準戦時体制下での統制経済が政権発足時から取られており、ケインズ政策は行われていない。また、ナチスによる政策の代名詞となっているアウトバーン建設に関しても、①ナチス以前からアウトバーン建設計画が存在してヴァイマル共和国時代から一部区間が作られていたこと、②野党時代のナチス党はアウトバーン計画に反対していたこと、③アウトバーン建設に携わった労働者は最大で10万人であり、失業者の吸収は思っている以上に小さいなど、多くの「アウトバーン神話」の実際が書かれている。

第7章の「ホロコーストと絶滅戦争」では、戦争開始時にはまだユダヤ人の追放程度だったのが、戦局の悪化に伴い、やがてユダヤ人の大量虐殺につながったのが詳細に述べられている。ホロコースト以前にドイツ国内で障害者全般の安楽死が実行されており、それがホロコーストの前ぶれであったこと、独ソ戦と対米宣戦が契機となり、「ユダヤ人の最終的解決」に帰着してしまったとようだ。

ナチス党の内政と外政、ユダヤ人の迫害・ホロコーストに関しての記述は詳細であるが、ナチス・ドイツの戦争に関する話題は比較的あっさりしている。ナチス・ドイツの戦争に関しては、リチャード・ベッセル『ナチスの戦争』(中公新書)で補えば良いと思う。本書とベッセルの本、後はウルリヒ・ヘルベルト『第三帝国』(角川新書)を読んでおけば、ナチスに関する大体の一般教養が網羅できるであろう。

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Posted by ブクログ 2022年02月05日

ヒトラーがどのような人物だったのか。
当時の社会的情勢はどのようだったのか。
当時の人々はなぜヒトラーを受け入れたのか。
など、丁寧に説明されており、入門書としてとても良いと思う。
ホロコーストについても、どのような経緯で行われるようになったのか、書かれており、歴史とは単純なものではないと思う。
...続きを読むくよく思想や社会の様子などを知らないと、歴史認識を間違う可能性があると感じた。
しっかりと学習し続ける必要を感じた。

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Posted by ブクログ 2021年12月27日

なぜ、なぜ、なぜ。
議会や民主主義がなぜ葬られたのか。なぜホロコーストは始まってしまったのか。人類の闇に向き合える一冊。

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Posted by ブクログ 2021年11月23日

ヒトラーがどのようにしてワイマール共和国のような議会民主制を帯びていた近代国家を、専制国家に仕立て上げ第二次世界大戦を起こしてしまうまでになったのかを仔細に説明してくれています。ナチ党が国会第一党まで上り詰める過程や、ヒンデンブルク大統領からの授権法を採択された後の急進化は、何となくヒトラーがクーデ...続きを読むターを起こしてドイツを支配したのでは?という先入観があった私としては、制度に沿った形で独裁政権を樹立したのだという驚きは改めてありましたね。

もう一つの大テーマとしてのユダヤ人大虐殺(ホロコースト)はなぜ起こってしまったのか。極端なレイシズムや当時の優勢人種学が学問として成り立ってしまっている事態背景が多分に影響を与え、それを妄信するカリスマヒトラーが実行に移してしまったことによる悲劇。ユダヤ人の強制追放により当時のドイツ人は財産の獲得や住居の略奪といった恩恵を受けていたという実態は衝撃。また、単にユダヤ人だけを標的にしている訳ではなく、アーリア化を標榜にとし同性愛者や不治の病に侵されている人々まで虐殺していたとは。残忍極まりないです。

ここで、これは極端な事例で自分とは全く関係ない世界の話と総括せずに、自分も当時者となっていたら同じように迫害される対象だったし、ホロコーストを生んだ時世を理解することが大切なのだろう。多様性の現代だからこそ、ナチのような時代がほんの100年も満たない昔にあったのだという現実から、学ぶことはあるのでしょう。しかし、演説のの一点に振り切った才能だけで世界大戦まで行きつけてしまうとは。次は各国の事情も理解したので、第二次世界大戦の大局的な書籍に挑戦ですね。

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Posted by ブクログ 2021年11月08日

この本を読んだ。前にヒトラー系の映画、シンドラーのリストもまあそうか。ホロコーストの本もいくつか読んでいたので「どうして独裁政権が誕生したのか」というポイントにいて興味を持って読んでいた。就業率の改善のために女性を家庭に押し込める。それによって出産率も上げる。優性遺伝の。そこにあるのは、なんかよくな...続きを読むるんじゃないかという希望。
 これってほんとうに偶然だよな。そのときそのときの力関係で、周りの国も大事な人権的なことに及び腰になったり、無視したり、他国頼りになったり。それが結果としてユダヤ人を置いておく場所がなくなってきたら殲滅するということになる。ソ蓮がもうちょっと弱かったら、イギリスがそれほど強気じゃなかったら。まあいそれはヒトラーのすべてはユダヤ人のせいだという思い込み・・・。これ陰謀論を信じていたっていっていいのではないだろうか。それによってホロコーストは起こっていく。ナチスが衰退しても、彼の意思で行われていく。。 
 ”ヒトラーは若い頃、政治家としての自己の使命をよく「救済」という言葉で表現したが、独裁と戦争でドイツのすべてを破壊しながらも、ドイツをユダヤ人の魔の手から救うという妄想の使命感を最後までいだいていたのだ。”

衝撃過ぎる。
ドイツ人を「救済」できると思っていたんだ。使命感として。
自分は他者を救えると思っている人は傲慢な気がする。

 とにかく人間の目を通して、理路整然でもなく、なんだかもやもやするところも見せてくれる。ヒトラーが陰謀論にはまってたってことだよね・・・。

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Posted by ブクログ 2021年07月02日

とても流れが読みやすかった。
そもそものヴェルサイユ体制で独裁に近い形になって、それをヒトラーが強化したので帝国になってしまったのだ。
ヒトラーはいいこともした、と言う人もいるらしいが、その裏には分断された者たちへの弾圧があったのもわかった。
読んでいてとても勉強になりました。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2021年04月27日

ヒトラーの台頭、いかにしてドイツ6600万人の人間が、自由、脳、生命を独裁者に擲ったかを歴史から学ぶ。前は「ボヘミアの上等兵」は世論の支持を得てドイツを手中に収めたと考えていたが、実態はもう少し複雑だった。

ヒトラーがレイシストであることはドイツ人誰もが知っており、彼に政権を握らせてはならないと考...続きを読むえる人も多く、そもそも出身はオーストリアであり、国会でも第一党とはいえ1/3の議席も持っていなかった。なぜ彼がドイツを支配したか。それに答えようとしている。

ナチが議会政治を嗤っていたのは周知のとおりだが、ナチが政権を握る前に、すでに国会による議会政治は形骸化しており、ヒンデンブルク大統領による大統領緊急令政治になっていたのは知らなかった。

パーペン、無能と思っていたが、意外と計算高い。ヒトラーを政権に入れ、議会制を終わらせ、共産主義運動を撲滅し、再軍備の果にヒトラーを、追い出す気でいたそうな。そういうわけで、ヒンデンブルクはあまり信用していない「ボヘミアの上等兵」を政権に入れたというわけだ。

そして、政権に入るやいなや、共産主義者への弾圧が始まる。突撃隊の暴行に警察は取り締まらなくなる。大統領緊急令(議事堂炎上令)で、州の首相の解任すらおもいのまま。国民は、非常時には多少の基本的人権の侵害は仕方がなく、また弾圧されるのはコミュニストのような危険思想の持ち主だけだからということで、体制側に付けば安泰だし関係ねえと考えていた。

ホフマンの撮影した写真、民衆宰相としてのヒトラー、恐ろしいことにヒトラーという狂人が人の良いオッサンに見える。おぞましい。

ヒトラーさん、まじで擁護できる点が一つも見当たらない。アウトバーンもヒトラーの手柄ではないし、失業対策も失業者を一時的にボランティア活動させ失業状態でないことにするという有様。

ヒトラーはもともと(戦前)、ユダヤ人の追放を考えておりユダヤ人の絶滅までは考えていなかったというのが面白い。確かに戦前は人権侵害レベルの弾圧はあれど、クレマトリウムでの大量殺害は行っていないはずだ。ところが戦争において発狂した(もとからしていたが)ヒトラーが、敵国=ユダヤ人と勘違いし、歴史上最悪の人災が起こった。

一応のカリスマはフランス降伏まで保てたが、そこからが最悪だった。カリスマ的支配はその構造上、指導者が不断に英雄的業績を上げる必要がある。戦時下の敵国降伏はまさしくそれ。おそらくヒトラーがギリシャ、ユーゴスラビアなどを侵攻した理由には(当然地政学的なものがメインだろうが)カリスマ性の維持という側面があるのではないか。そう考えるとあらゆる人間が失敗する以上、カリスマ的支配は支配体制としては下策に当たるかもしれない。

カリスマ的支配が死ぬまで続いた例は何があるだろうか? ナポレオンは違うだろう。ヒトラーは言わずもがな。チトーはイケそうか? 秀吉は? 後で調べるべきか。 しかし直感的に、カリスマ的支配の支配者が死んだ後はひどいお家騒動や内乱が起こりそう。やっぱこの支配体制だめだわ。

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Posted by ブクログ 2021年02月28日

面白かったー!!!ナチスが政権を得ていく過程や、ホロコーストに至った過程などが時系列で丁寧に説明されていて、断片的な知識が一体になった感があります
以下 初めて知ったことや印象的だったこと(ネタバレかも?)




・政権獲得の過程で農民にアプローチした(ここだけ見ればトランプ氏の政権獲得過程とも似...続きを読むているような)
・大衆に言葉でアプローチするため弁士を輩出するための学校を作った
・ヒトラーの効果があったとされる経済政策の絡繰(実際は前政権の政策の効果(企業減税を柱とするパーペンプランなど)だった、そもそもヒトラーが政権とったころには割と経済は回復傾向にあった、女性を家庭に追いやったり若者を軍事訓練に組み込むことで失業者の数字を減らす、アウトバーン構想はヒトラーが発案したのではなく前々からあり、なんならナチ党は野党時代に反対していたなど…)
・ドイツ国民がヒトラーに反対しなかった理由
(そもそもユダヤ人は国民の1%にすぎない、ヴァイマル政権下における分裂ぶりに幻滅していた、ドイツの国際的な地位をせめてイギリスフランスと同等の国家にしたい、など)
・当初はユダヤ人を殺すというよりは、マダガスカルなどに追放したいと思っていた
・ユダヤ人がなかなかドイツから出て行かなかった理由(楽観的予測、国際世論への過度な期待、逼迫した経済事情、諸外国の受け入れ制限)
・エヴィアン会議で米英仏瑞などがユダヤ人受け入れを協議したが、米は関心はあるが経済的理由で受け入れられず、他も経済事情などでユダヤ人受け入れを嫌がった

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Posted by ブクログ 2018年07月22日

ヒトラーがどのようにして議会制民主主義を廃して独裁を成し得たのか、そしてユダヤ人の抹殺がなぜ起き得たのかが解説されている。
ナチスが政権を取れたのは国民に圧倒的に支持されていたわけではなくそれぞれの勢力の思惑によるところがあり、ドイツ国民の多数がヒトラーに熱狂していくのはその後の話。もともとある行政...続きを読む組織をいかにナチスが浸透していったかもよくわかった。
ユダヤ人を敗戦を目の前にしても殺戮し続けたのはそれがヒトラーの意思であったからで、その意思の背景にあった妄想が凄い。ヨーロッパのユダヤ人を絶滅させれば戦争に負けてもドイツは発展できると思っていたという。
このユダヤ人との人種戦争が対ソ開戦、対米開戦の決心を説明できるわけだな。

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Posted by ブクログ 2018年03月11日

本書はドイツにおいてナチ党(国家社会主義ドイツ労働者党)の党首アドルフ・ヒトラーが政権を担っていた1933年から1945年、いわゆるナチ時代及びそこに至るまでの過程を取り上げたものである。
筆者の石田勇治は東京大学大学院教授、近現代ドイツの研究者であり、本書以外にも『ナチスの「手口」と緊急事態条項』...続きを読む(集英社新書、2017年)や『20世紀ドイツ史』(白水社、2005年)などの著書があり、メディアでもヒトラーやホロコーストに関する解説として出演している。
本書の特徴はヒトラーとナチズム、ホロコーストに関する最新の歴史研究の知見をコンパクトにまとめている点にある。そもそも、そうした研究は冷戦終結後の1990年代になって一気に進展したという背景がある。それに関して本書では「旧ソ連・東欧圏の文書館資料が閲覧可能となり、長らく不明とされていた歴史の細部に光があてられるようになったこと、またそれまで自国の負の歴史の解明に必ずしも熱心でなかったドイツの歴史学が、研究者の世代交代も相俟って、若手を中心に積極的に取り組むようなったことに負っている(本書5頁引用)」 とある。
このように、第一次世界大戦終戦から100年を迎える現在、ドイツ・ナチ時代の研究の成果を読む事は、今の時代を見る視点を養う事でもあると思う。ナチ時代に本当に何が起きたのか。それを考察する現代的な意味は大きい。
 全体の構成は全7章で構成される。1~2章はヒトラーの登場からナチ党の台頭、1910年代からナチ党がその得票率のピークを迎える1932年7月の国会選挙までを描いている。3~4章ではヒトラーが首相に任命され、ヒトラー政権が成立した1933年からのその権力基盤が確固とした1934年末にかけての1年半に起きた社会の「ナチ化」の過程を取り上げる。5~7章では1933年から1945年までの「ナチ時代」を扱う。1939年の第二次世界大戦勃発までを前半とし、その評価の難しい「平時」における人々の捉え方、つまり「比較的良い時代だった」という声を雇用の安定と国民統合という観点から捉える。後半、つまり戦時において起きた国家的メガ犯罪と筆者が表現する「ホロコースト」に帰着した要因を、レイシズム、反ユダヤ主義、優生思想の発展とともに検討している。
 非常にまとまっている上にどの章にも気になる点があるのだが、ここでは二つ気になる点を取り上げる。
 第1章のヒトラーが従軍していた時代の話で、「過酷な塹壕戦の中で生じた無二の戦友愛と自己犠牲。階級や身分、出身地を超えて堅く結びついく兵士の勇敢な戦い」(本書26頁引用)を基に民族共同体の原風景を描いた、という部分だ。しかし、実際にはそれを経験していないヒトラーの矛盾という形で本書の指摘はあるように思われる。むしろ、実際に経験していないからこその「民族共同体」という幻想を生み出すことが可能とも考えられる。つまり、「戦争を経験していないからこそ戦争を美化する(できる)」という現代にも見られる現象がここにはあるように思えた。
 第6章において反ユダヤ主義の法律「ニュルンベルク人種法」の中でユダヤ人の定義に関する矛盾がでてくる。これはユダヤ人を宗教ではなく人種として規定してきたナチスが結局帰属する信仰共同体によって判断するという矛盾だ。こうした矛盾とまではいかないが違和感は現在でも国際ニュースを見ていて感じるときがある、それは今でもユダヤ教徒をユダヤ人と呼称するからだ。その理屈であれば、イスラム人やキリスト人もいなければならないのでは?と思ったりもする、そんな違和感を感じた。

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Posted by ブクログ 2017年08月14日

ひどい差別思想で初めは集会が禁止されていたナチ党。ベルサイユ条約への国民の怒りに取り入り、右翼左翼に激しくふれる地方都市バイエルンでの一揆(失敗)、逮捕(名誉監獄)を経て30%超の支持獲得に至り、保守派大御所のヒンデンブルクと連携する、本来その程度の支持ならありえない首相指名獲得を得る。。。共産主義...続きを読む者による議事堂炎上やユダヤ人少年によるドイツ人外交官射殺を、国民感情を煽るのに巧みに利用し、「非常時だから仕方ない」「極端な危険思想に染まらなければ弾圧されることはない」と思わせて基本権の停止や授権法を実現する。
ヒトラーは集会や宣伝の大切さを大事にして弁士をコツコツと育てるという実直さも持ち合わせていた。相手によって演説の内容を変えたり、想定問答を作って地道に共感を得る努力を重ねる。演説は国の現在を悲観するところから始まり、激しく怒りを代弁し、必ず解決すると約束するパターン。国連やユダヤ人を敵扱いしてののしる。現代のポピュリズムにも通じるところがある。
景気回復や領土奪還などところどころで国民の支持をつかみ「この人がいなくなったらまた状況が悪くなる」と思わせるあたりは、こういうところに乗せられてはいけないなと肝に銘じてしまった。「一鍋日曜日」のような一見、慈善活動以外の何ものでもない活動もしだいに協力しないでは済まされないイベントになり、国民を全体主義に巻き込んでいくのに活用されてしまう。こういったものにいかに「参加しない自由」が大切か感じさせられた。
国際会議で他国から「移民を受け入れられない」というコメントをわざわざとってからユダヤ人を迫害したり、悪さをするときにも何かと伏線をはる。在外ドイツ人を呼び戻し、家を確保するため、失業アーリア人を就業させるため。。。ホロコーストは自分の思い込みでやめなかったが、それでも隠しながらやった。一人ひとりが自分の考え方をあきらかにできる社会であることが本当に大切だと思った。

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Posted by ブクログ 2017年07月09日

ヒトラーの首相就任以降の物事の進み方のスピードに改めて驚かされる。
あと、そうする意図はないつもりだが、どうしても安倍政権との共通点を随所に見つけてしまう。
個人的には、ナチ時代のドイツ国民がユダヤ人迫害に声をあげなかった理由が興味深かった。

・人口の1%にも満たないユダヤ人のことはドイツ国民にと...続きを読むって大きな問題とはならなかったということ

・あからさまな反ユダヤ主義者ではなくても、多くのドイツ国民がユダヤ人迫害から何らかの利益を得ていたということ

現代の日本と沖縄の関係に似ているな、と。

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Posted by ブクログ 2022年07月10日

冒険屋書店の選書で購入

第一次世界大戦後のドイツで、なぜヒトラーがあそこまでの独裁国家を築けたのか?

第一次世界大戦に従軍したヒトラーが、いかに成り上がっていったのかをわかりやすく解説している。

あそこまでユダヤ人を忌み嫌ったのはなぜなのか?
ホロコーストを続けられたのはなぜなのか?

が、わ...続きを読むかる

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Posted by ブクログ 2022年05月13日

ヒトラーの生涯と、ナチの成立・支配と戦時下の状況が詳説されている。
難しい用語が少なく、歴史に疎い私にはありがたかった。
教科書では精々数ページしか書かれないことの詳細を知るのは楽しかった。

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Posted by ブクログ 2022年03月16日

★★★2021年10月★★★


なんの特色もない人だったヒトラーが、何故あのような災禍を人類にもたらすことになったのか。そういうことが知りたくてこの本を手に取った。
第一次世界大戦の敗戦から丁寧に描かれている。
印象に残ったフレーズを以下に記す。


P51 宣伝は永久に大衆だけに向けられるべきで...続きを読むある!
P130 ヒトラーを首相にするといってもナチ党の独裁を認めるわけではない。
P153 ヒトラーがすべてを賭けて手に入れたかったもの、それは授権法だった。(全権委任法)


よく言われるようにヒトラーは民主主義から誕生した。ワイマール憲法は運用によっては独裁を認める内容だったとか。第一次世界大戦後のドイツ処理が苛烈すぎたこともヒトラー誕生の要因の一つだろう。

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Posted by ブクログ 2021年10月23日

第一次大戦後の混乱期のドイツで、ヒトラーが権力を握るに至るまでの過程が詳細に書かれている。かつての暴力革命路線を変更し、選挙政治で政権獲得を目指す方向へ舵を切ったナチスが、様々な偶然の要素が重なって政権を取るに至る。ひとたび実権を握ると、全権委任法を成立させて立法機能を自らの手中に収め、反対勢力に対...続きを読むしては突撃隊・親衛隊による物理的な実力行使を徹底する。長引く不況と失業問題を解決し国民からの支持を確実なものにすると(ヒトラーの手腕というわけではなく、政権を握った時点ではすでに景気回復期に入っていた点、徴兵制の復活により失業者を兵隊として吸収できた点、女性の就業を制限することで労働供給を減少させた点、等が強調されている)次の戦争、そしてホロコーストへと進んでいく。ヒトラーの病的ともいえるユダヤ人排斥への思いが悲劇を生む。これほど激動に富んだ国もないという感想を持った。

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Posted by ブクログ 2021年07月06日

ナチ党・ヒトラーが政権を奪取し、ユダヤ人迫害、ヨーロッパ大戦に至るまでの経緯を説明している。

ヒトラーは合法的に政権を獲得したと言われることがあるが、その背景には姑息な手段を用いて他党を弾圧や大統領令の発令が大きく左右していることから、学問的な帰結としては「合法的」という表現は正確な解釈ではない。...続きを読む

また失業率を下げたり、アウトバーン建設に一役買ったとも言われるが、結局はナチズムを推進していくための手段に過ぎず、国民のための施策という解釈もミスリーディング。

先日、ナチスを肯定した趣旨のツイートが炎上していたが、この本を読めば肯定できる要素は何一つないことが分かる。

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Posted by ブクログ 2021年04月10日

ヒトラー、ナチスに関して勉強できる映画あったら誰か教えてください。

・善悪二項対立の危険さ
・利益を享受しているが故に上記の危険さを見て見ぬ振りをすること
ヒトラーのやったこととは程度は違えど、現代にも通ずるものがあると思った。

・善悪二項対立の危険さ
ヒトラーは様々な地域、階層に向けて、すべて...続きを読むの悪の根源はユダヤ人と語ることですべての社会階層に支持された。
現代で例えると「諸悪の根源は安倍政権」のような意見、トランプの諸主張、IT関連だとオンプレが悪でクラウドが善、みたいな。
そんな世の中簡単じゃないよね?

二項対立は物事を簡単に捉えた気になれる。
簡単だからこそ、誰もが共通認識として持ちやすくなる。
そしてみんなが同調してると、それが正しいと思ってしまう。
ただ、この二項対立には善と主張したがる人の強い恣意が入っている。
気をつけねばと自戒。

・利益を享受しているが故に上記の危険さを見て見ぬ振りをすること
ドイツ国民はユダヤ人迫害に反発しなかった。利益があったから。例えば、
ユダヤ人上司が左遷→昇進
ユダヤ人家が空く→新住居
ユダヤ人経営者が追放→安く買収
ユダヤ人迫害により敗戦国ドイツの生活水準が上がり得したのはわかる。

自分がもし当時のドイツにいてアーリア人だったら、同じように利益を享受していたかもしれない。

もちろんこのトレードオフは現代では非難されるし危険すぎる。こうならないようにはどうすれば良いのか、どんな対策を世界各国がしているのか、とても知りたいと思った。

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Posted by ブクログ 2020年10月14日

古来からのユダヤ民族への迫害。
ドイツでユダヤ人の法的平等が実現したのはビスマルクのドイツ帝国の1870年代、つまりナチスのたった50年前だったんだ…

ナチスは論外だけど、なんか世界はナチのせいにしすぎじゃないか?

舛添要一の「ヒトラーの正体」より、丁寧に少し深めにまとめている印象だが、ヒトラー...続きを読むというデマゴーグに従った大衆の心理については「ヒトラーの正体」のほうに分がある

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Posted by ブクログ 2020年04月26日

第一次大戦でドイツは敗れ、多大な賠償金を課せられるに至った。ソ連との対立、共産主義勢力に対する恐れもあった。
その中にあって、最初は極右政党として、疎んじられ、ナチスは軽く見られていた。
その小さな一政党、ヒトラーという小柄だが、言うことだけは荒唐無稽な大ボラという男が、権力の階段を少しずつ登ってい...続きを読むく。
そこに見えてくるのは、ドイツがヒトラーの独裁を歓迎してナチス・ドイツが生まれたわけではないという事。
彼は表向きの主義主張は時流に合わせて微調整をし、党内部の粛清さえも行なった。
強引に政権を奪取するのではなく、そうならざるを得ない状況を作り出し、そこに乗っかるのもうまかった。
大統領制では、彼の就いた首相の座は独裁ができるものではなかったが、ヒンデンブルク大統領に取り入り、大統領令という議会制民主主義を超越する特権を活用した。そして、ヒンデンブルクの死を待って、総統という地位を得たのだ。
ヒトラーは準備をし、好機を待って、それを掴んだのだ。

現代のドイツにおいても、ナチス政権の前期の経済政策、特に失業者対策の成果を評価する人がいるという。
確かに数字を見るとナチス・ドイツが政権をとってから、年々失業者数は減ったのだ。

しかし、これには裏がある。
ナチスは「アーリア人らしい暮らし」というものを強調し、その中で女性は家庭の中にいて家を守るものと位置付けた。また、当然のことながら、ドイツの社会を形成するのはアーリア人であってユダヤ人はそこには含まれない。
つまり、「労働者(失業者)」の定義から女性とユダヤ人が外されれば、自然と失業者は減るのだ。

なんだか他国の話ではないような気がして、ちょっとゾッとした。

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Posted by ブクログ 2018年03月18日

どうやってヒトラーはドイツのトップに立ち、ドイツがあの暴走に至ったのかを初めてきちんと知れた気がする。「ヒトラーのカリスマ」だけでは説明しきれない政治的な流れもあったし、色んな人の思惑が結果的にヒトラーに権力を集中させていた。ホロコーストを理解する上で、この本はとても有用なことを教えてくれた。

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Posted by ブクログ 2018年01月02日

 本書を読むまではヒトラーが物凄いカリスマ性を持ち合わせた人物というイメージを持っていたが、読み終えてみると様々な人が、自らの欲望を満たすためにヒトラーを上手く使おうとしていたに過ぎないような印象を持った。
 最終的にヒトラーは、それらの人を足場にして台頭していくことになるが、台頭を許すことになった...続きを読むドイツ国内情勢についても言及されており、多くのことを学ぶことができた。

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Posted by ブクログ 2017年11月11日

第1次大戦後~第2次大戦終結までのドイツに対するなぜなぜを概括的に解き明かしてくれる入門書。
 共和制政治の人気が落ちていったのは経済政策の不成功に対する大衆の失望に起因し、それをプロバガンダで巧妙に惹きつけたのが隆興時期のヒトラー。大統領と首相を兼ねる総統に上り詰めるや、憲法停止の授権立法を頻発し...続きを読む、かつ、共産党などを徹底的に弾圧してもはや誰もモノを言えなくした政治手法。
 安倍自民党の圧勝が(見せかけながらも)経済政策の成功による集票の成功にあることと似ているのが少し怖い。結局、国民は経済政策に長けてる政府しか支持しないのはドイツも日本も同じようで、皮肉にも政治家が読むと役立つ本なのかも

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Posted by ブクログ 2017年08月01日

ドイツ近現代史の研究者による本だけに、ナチス・ドイツの成り立ちについて、勉強になる内容だった。一弱小政党であったナチス党とヒトラーが国のトップに上り詰めていった経緯について(前半)は、特に価値があると思う。

後半、ヒトラーにとっての戦争とは、対ユダヤ戦争だった、と強く印象に残る内容記載となっている...続きを読むが、これは本書だけでは表現しきれない内容のため、特に強調したかった点が印象に残っているせいかな、と思っています。

読みながら強く興味を惹かれたのは、ヒトラーの人となり、です。本書では、ヒトラーの思想形成に影響を与えた人物などについては触れられていますが、ヒトラー個人の「中身」についての深い言及はありません。
(この点だけで内容が膨大になってしまうから、かとは思いますが)
今後、ナチスドイツに関する書を手に取るとするなら、このあたりでしょうか。
近頃、日本でもレイシズムという言葉を頻繁に聞くようになったからこそ、なったからこそ、ナチスドイツは深く知りたいテーマです。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2024年02月01日

「わからない」ことがわかった。

『暗幕のゲルニカ』を読んで、なんでこんな悲惨な状況になってしまったんだ?ナチス、ヒトラーって何だ?と、その歴史や背景に興味を持ったことがきっかけでこの本を読んでみた。

どのようにしてヒトラーが独裁政権を取ったのか、どのようにしてユダヤ人迫害が行われたのか、順を...続きを読む追って細かく書かれていた。
実際に起こったことが羅列されていると、なんだか自然の流れでそうなってしまったのかなと思ってしまう。
反ナチス側の人たちの動きなどは書ききれなかったと著者が“おわりに”に書いていたように、反対側の人たちの動きも知りたくなった。
映画でよく観るのは反対側の人たちだからそういう意味ではなんとなく知識として蓄積されているのかもしれないけど…
ヒトラー政権の支持率を見ると圧倒的で、極端な政策を打つ政権が支持されてしまうほど当時のドイツは不安定で、なんでもいいから圧倒的に引っ張っていってくれる力にすがるしかなかったのかなぁ、と想像した。
支配の諸形態である「合法的支配」と「伝説的支配」が不足したり、危機のなかでカリスマは生じやすい、らしい。

ヒトラーの独裁であっても、それが組織の力や意志となると、国民への影響力は大きいものなんだろうな。
たくさんのありえない法律が成立していって、この法律に則っているから“合法”という理由づけをして国民に示され、プロバガンダの影響もあった。第二次世界大戦後の国民アンケートではヒトラー政権前半を「あのときは良かった」と評価する人が少なくなかったとのこと。

第一次世界大戦と第二次世界大戦、どちらも敗戦国となったドイツ(この事実、あんまり気にしたこと無かった!)だから起こったことなのかもしれない。
でも、他国事じゃないんだよね。数十年しか生きていないわたしでさえ、時代の移り変わりの速さに驚いているこの頃。なんかうっすらと漠然とした不安が漂うこの頃。
歴史から学べることは学びたい。

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Posted by ブクログ 2021年01月24日

第二次世界大戦におけるヒトラーの行動についてはあまり書かれていないが、それまでのヒトラーが独裁政権を樹立するまでが詳細に書かれている。
ヒトラーを含めナチスの人物たちは、生まれながらの極悪人ではなく、当時の第一次世界大戦で敗戦し絶望の中にあったドイツ、そしてドイツを服従させようとしていたヨーロッパ諸...続きを読む国が生み出したものだと感じた。

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Posted by ブクログ 2020年01月27日

まず、今日1月27日はアウシュビッツ強制収容所が開放された日だそうだ。本書はヒトラーが政治家を目指してから自死するまでが詳しく記されており、専門家から強く薦められているものである。ドイツ国民はヒトラーに騙されたと目にすることがあるが、本書を読むと国民がヒトラーを後押しした感もある。WWI後の賠償金負...続きを読む担や世界恐慌が重くのしかかり、その打開のみを国民は求めていた。それ故に熱狂を生み、間違った方向に全体で進んでしまった。経済が人間を狂わすのは現在も同じで、75年経った今も進歩していない人類に恐怖を感じる。

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Posted by ブクログ 2017年04月15日

以前からナチスやヒトラーには興味があったが、小説に出てくる程度で満足していた。何故か自分でもよくわからないが、きちんと知っておきたいという思いが、この頃強くなってきた。
いくつか読んでみたい本がある中で、まずはこちらを読んでみた。

ヒトラーが歴史の表に登場する前から、権力を掌握し戦争、ホロコースト...続きを読むと突き進み自殺するまでを書いている。

ヒトラーに明確な政治思想は無かった。
それなのに、何故ドイツ国民は彼に国家を委ねてしまったのだろう。

第一次世界大戦に敗れ、対外的に弱い立場となり、国民に希望が喪われていたドイツにとって、巧みな話術で強いメッセージを伝えるヒトラーに未来を託したくなっても不思議ではないのかもしれない。
今、日本を含めた世界中があの頃のドイツと同じ状態になりつつあるように感じてならない。
自国の発展のみを考え、自分たちの苦労を誰かのせいにしようとする政治家に躍らされている。

わたしは今まで、ヒトラーが選挙により首相に選任された頃は、国民の圧倒的支持を得ていたと思っていた。
しかしどうやら当時ナチ党は、一定の支持は勿論あったが、頭打ちの状態にあったようだ。
ヒトラーが首相に任命されたのは、ヒンデンブルク大統領の政治的な考えによるものだった。ヒトラーを利用しようとしていたヒンデンブルクが、結果としてはヒトラーに利用されたと言っても良いだろう。

国民の中にはヒトラー政権に不安を憶える者もいたとは思う。しかし国民の多くが様子を見ていたり、流れに乗ったり、目先の利益に目がいっている間に、ヒトラーは独裁体制を調えてしまう。国民の多くが不安と恐怖を間違いようのない現実と気づいたときには、反対の声をあげることさえ出来なくなってしまった。
こういうことはドイツに限らずどこの国でも起こり得る。
しかし、人間は見たくない現実からは目を逸らす。自分たちはドイツのようなことにはならないと、根拠もなく信じている。
ヒトラーよりも国民のほうが、遥かに恐ろしいくらいだ。

歴史は絶妙なタイミングで、主要な人物をふさわしい場所に送り込む。
確たる思想もなく日和見に生きていた平凡であるはずの男を、世界中の誰もが知る有名な歴史上の人物にしてしまう。
歴史は繰り返す。
きっといつか第二のヒトラーが現れる。
もう、既に現れているのかもしれない。

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Posted by ブクログ 2015年11月05日

 第1章から第5章まで、ヒトラーが政治家となり、ナチ党首となってから、ヴァイマル共和国のヒンデンブルク大統領によって首相に任命され、その後どのようにして議会制を崩壊させてナチ党が唯一の政党となったか、そして「安定した時代だった」とドイツ国民によって評されるナチ体制下の政治はどのようなものだったのかが...続きを読む解説されている。第6章、第7章はユダヤ人政策、ホロコーストに至るまでの話が、最新の研究成果をもとに論じられている。
 新書としては300ページを超えており、年表や数多くの参考文献も載っているなど、一般向けながらもそれなりに本格的なもの。例えば、「ホロコーストはこのヴァンゼー会議で決定されたとしばしばいわれるが、それは正しくな」(p.326)く、「四一年の晩夏から初冬のどこかの時点で、ヒトラーは、ヒムラー、ハイドリヒに対して、すでに現実のものとなったユダヤ人政策の転換、すなわちホロコーストの始まりに承認を与え、これを加速させた」(p.322)など、当時のヒトラーを中心とした動きが仔細に述べられている。
 ところで、「ホロコースト」という言葉は、アメリカでヒットしたテレビドラマから広まったらしいが、「旧約聖書の『神への供物』の含意があることから、イスラエルでは好まれず、ヘブライ語で破局・破滅を意味する『ショアー』が用いられている」(p.254)というのは知らなかった。他にも意外、というか知らなかったことが多くて、ヒトラーが首相になった時には、その直前の国会選挙で「得票数をかなり減らし、党勢がすでに下降局面に入った」(p.114)という事実は知らなかった。勢いに乗っている途上、という訳ではなかったらしい。しかもその「一番の原因は、ヒトラーのカリスマ性の限界」(p.116)というのも意外だ。この段階で、もうカリスマがカリスマであり続けることの難しさを露呈していたということは知らなかった。そしてヒトラーを首相に含めたリストを作成したのは、ナチ党などの賛成で内閣不信任とされたパーペンという人物だったらしい。その目的が3点、p.131に示されているが、ヴァイマル憲法からの揺り戻し、というかかなり右傾化をよしとする風潮が政府側にあった、ということが分かる。そして、ヒトラーの政治弾圧に「なぜ人びとは反発しなかったのか」(pp.168-72)という部分で、要するに日和見主義の人々がどちらかの極に引きずられていく、という集団心理の構図が見える気がする。そして時が進み、ユダヤ人への弾圧に対して「なぜドイツの国民から抗議の声があがらなかったのか」、「共犯者となった国民」(pp.289-93)の部分では、多数派さえよければ何でも、という多数決の弊害を描いている。あとは、ナチ党内部の権力構造があまりに複雑になり過ぎている上に、「ヒトラーの命令は、会食の席や二人だけの立ち話で伝えられることが多かった。側近たちは与えられた裁量の範囲で、ヒトラーの歓心と寵愛、より大きな権限を得ようと、『総統の望み』を慮っていっそう過激な行動をとるようになっていった。」(pp.306-7)という部分は、組織上の問題点、というか敢えてそうなるような「システム無きシステム」のようなものが構築されていた、ということなんだろうか。
 社会的や政治的な出来事から、そこに生きた人々の意図を読み解いていくことのできる、興味深い本だった。(15/11/05)

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