あらすじ
真夏の夜、寝床を捜して深夜の街を彷徨っていた啓太は、杉浦充という男と出会いセックスを条件に部屋に泊めてもらう。男と寝たい訳ではなかったが、啓太は自分のアパートに帰りたくなかった。大きな冷凍庫が唸る部屋で、独り夢を見たくなかったからだ。悪夢を抱えていた啓太にとって、泊めてくれる杉浦は都合のいい相手だった。しかし、杉浦の一途な想いに心が揺れるようになり…。
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Posted by ブクログ
物語は秘密1、秘密2、秘密3の、3部構成になっています。
秘密1では啓太と充と冷蔵庫を巡るミステリー要素も含まれる感じでドキドキしながら読みました。
秘密2では充の従兄弟から見た充の姿と背景。ところどころで垣間見える啓太の支えが愛おしかったです。
秘密3では、涙が出ました。充の弟から見た充の姿でした。読んでいるうちはこの弟なんだよって思ってたんですけど。プレゼントの文字の展開は泣きましたねぇ〜
家庭内で考えの偏りとか自分も感じる部分はあってそれは大なり小なりどこの家庭にもあるものだと思います。その考えの偏りで誰かを傷付けることはあってはならないなと考えさせられました。
木原さんの作品をちょっとずつ読んでいるのですが、「箱の中」の次あるいは同等に好きなお話でした。
匿名
ただのBLじゃない
BL小説というジャンルだけれど、ただのBLとは違うなと思います。
他の作品でもそうだけど、人間としての問題とか・・・ただそこに登場する人たちが男性同士だということ、な感じです。うまく言えないけど。
とても深い内容だと思います。充の父親は最低で、下手したら弟も同じ道まっしぐらだったろうけど。
弁護士にまでなるほど勉強できても、人間としては父親も弟も最低最悪ですね。
改心したっぽい弟はまだ救いがあるでしょうか。
いずれにせよ、啓太もとんでもない事態を引き起こしたわけでもなく(ある意味ヤバかったですが。精神的に)二人がお互いにふさわしい相手であって、幸せになるならそれで良かったなと思います。
運命なんだと言った充の言葉が全てですね。
Posted by ブクログ
識字障害の男性と周囲の人々のドラマを上手くBLに落とし込んだなあ…というのが率直な印象。
これが一般文芸として再版されたのは、本人と周りの家族達がどう障害と向き合っていくのか?という問題提起が評価されたからだと思う。
Posted by ブクログ
妄想癖のある(のちに判明)啓太くんと、ディスレクシアであろう杉浦くんの、恋愛のお話。
BLなんだけど、BLっぽくない。男性同士ということを、あまり意識させないお話。っていうか、自分はBL小説の定義もよくわかってないけど。
とにかく運命の二人が、出会って、恋に落ち、大切な存在になっていくんだけど、殺人?悲しい結末なの?って心配しながら読んでいたら、妄想でしたー良かったー!二人は幸せになるのねー♪っていう、幸せなお話。うん、恋愛小説はこれで良いのだ。大満足。
弁護士なのにディスレクシアを知らないの?とか、妄想オチなの?とか、色々ツッコミはあるんだけど、面白かったから、ま、いっか。
Posted by ブクログ
BL小説は初めて読んだんですが、この物語はミステリーと思いきや、恋愛小説で、描写も読みやすくて、ただエロイだけとかじゃなくて、話自体が面白かった!
充の病気の事も分かって、最後には母と妹とその子供と会うようなシーンがまたジーンと来てしまう。
父と弟は一生充の事は理解出来ない似たもの同士なんでしょうね。自分のものさしでしか人を計れない悲しい人達。
そういう家族模様も割りと好きでした!
初めて読んだ作家さんでしたが、他のもよんでみたい。
Posted by ブクログ
途中からなんとなくわかってきたけれども、やはり柳沢を殺してはいなかった啓太。精神的に追い詰められると妄想と現実の境がわからなくなってしまうようだ。そんな彼と出会うのは字の読み書きに障害のある充。それぞれが困難を抱えながらもお互いを好きになり、かけがえのない存在になっていくのが描かれている。充の愛がまっすぐ過ぎて、、中々こんな風に人を愛せるもんじゃないですよね。だからこそ啓太は安心して自分を預けられるのだと思うんですけど。
愛に依存してた充が啓太に出会って高校にも専門学校にも行って…彼の世界が広がっていくのが嬉しかったです。
伏見憲明さんの解説がすごく腑に落ちました。
以下抜粋
ならば、どうやったら、私たちは「私」でありながら「あなた」と痛みを感じずに関わることができるのか。互いを欲望の道具として利用するのではない、「純粋な関係」を実現することはできないのか。
木原音瀬という作家が多くの読者に愛されてやまないのも、関係の不可能性を可能性に変換しようという潜在的な意志の顕現のように思えてならない。
どんなに個と個が「純粋に」結びつくことが困難でも、その術をまだ見つけられなくても、「それでも……あきらめない!」という希求が、BLのハッピーエンドと愛の黄金律には託されている。
この『秘密』もそうした未来への野心的な挑戦である。そして、私たち読者自身も、この本を手に取ることによって、きっと、「まだあきらめないこと」を誓い合っているのだ。
Posted by ブクログ
読みやすかった。この人の作品は、やはりBL関係なく読んで欲しい。けれどエロ描写がかなりあるので、ダメな人はダメなのだろう。もったいない。
「実は殺していなかった」で済ませてしまうのは少し拍子抜けした。
BL要素なしで、障害に向き合った小説も読んでみたいと思った。