あらすじ
二五歳にもなって日雇い仕事すら失い、「大きなことをするため」闇の掲示板で四人の仲間を募った仁は、軽井沢で起きた放火殺人の汚名を着せられてしまう。なぜ俺を嵌めた? 信じられるのは誰なんだ? 手探りで真犯人を探す仁、闇世界の住人たち、追う刑事。物語は二転三転し、慟哭の真相へと向かっていく。
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Posted by ブクログ
薬丸岳さん、けっこういろいろ読んだ。毎回違ったいろんな角度から、社会の矛盾や究極的な問題について問いかけてくる作品。本作は、社会の底辺でもがく若者が、本当に明日生きていくのにも困って、ネットで闇の仕事を探すんだけど、どこまで同情できるか、っていう話。そして、こうでもしないと生きていけないから、と軽い気持ちで「闇の仕事」に加担すると…
自分は恵まれなかった、不運がかさなった、自分だって被害者だ、と自己弁護しながら「人を殺しさえしなければ…」と強盗を働く主人公。でも、やはりそれだけでは済まない。
どんなに運が悪くても、家族に疎まれたり大手企業に搾取されたり派遣切りにあったり親切心をあだで返されたりして社会を恨んでも仕方ないような状況でも、絶対に踏み越えてはいけない一線があることに気づかされるストーリーです。「Aではない君と」は父親の心境が少しずつ変わって息子の罪と向き合っていくような描かれ方をしていたような気がするけど、本作では主人公が、最後の最後にものすごい衝撃で自分の罪深さに気づく、心の底から後悔する展開でした。
真面目に生きてきた読者としては、「もっと早く気づけや!」ともちろん思うけど、世の中にはこういう事例はたくさんあるのだろうな…、不幸な若者が、更に不幸を増殖させるようなことにならないために、セーフティネットが本当に重要だな、と真面目に思いました。
Posted by ブクログ
こんなに一気読みした作品久しぶり!
というくらい面白かった。
森下が仁に協力してあげていて少しは人間味があるところが見えたかと思ったらやっぱり自分のために協力していただけで騙された!と思った。
Posted by ブクログ
途中から何となく犯人は分かったけれど、犯人の犯罪に至るまでの切ない過去に苦しくなる。
自分ではどうしようもない環境の中で、どうやったら幸せになれたのだろう。
Posted by ブクログ
切ないラスト。
ミステリとしてもミスリードが参考になる。
詳しく書くとネタばんれになるのでかけぬ。
貧困、犯罪描写のリアリティがすごくある。
反社の描写も説得力あった。
Posted by ブクログ
日雇いでネットカフェに寝泊まりしながら、その日暮らしをしていた主人公。ルームシェアを持ちかけられた男に裏切られ、わずかな財産も全て失ってしまう。仕事もお金もなくなった主人公は闇掲示板で集った仲間と強盗に押し入った。最中、主人公は何者かに殴られ意識を失う。気付いたときには屋敷は燃やされ、中からは3人の遺体が見つかる。主人公は身に覚えのない放火と殺人の容疑をかけられ、警察から逃亡しながら真犯人を探すことになる。
主人公がどん底と呼ばれるところまで堕ちていくのが、とてもリアルだった。しかし、真犯人の絶望や悲しみは想像を絶するものだった。それで人を殺していいとはならないが、だったらどうやって彼は幸せになれたのだろう?と思う。それでも最後にひとつ願いが果たせて良かった。
搾取するものとされるもの。詐欺もそうだし、日雇いや派遣だってそうだ。頑張れば、当たり前に幸せに生きていける…そんな世の中では、ないのかもしれない。