あらすじ
老人は峠に立つ墓標に語りかけた。「──真実は、その時代の権力者の思うがままに捏造されてしまいます。後の世の人々は、あたかもそれを事実と信じてしまい、まことに悔しい限りです。御台さまのことも希代の悪女と申す不心得者が出る始末で、何とも腹立たしくてなりませぬ」老人の名は喬之介。日野富子の幼なじみにして、信念に向かってまっすぐに歩んだ彼女の生涯を最後まで見守り続けた侍者だった──。
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Posted by ブクログ
この作者の日野富子の想い人は幼馴染で護衛として仕えている。側で見守り、見守られている関係はもどかしい。そのもどかしさ、伝えられない想いも含めてここかしこに表現されている。
他作品では帝との恋に晩年は穏やかに語らいながら過ごす場面で終わっていたが今回は日野富子が亡くなるまで想いは伝えてはおらず、最期も名前だけ読んで亡くなってしまう。男性はその後30年生きて日野富子が守りたかった鎌倉幕府の憂き目を生で観続けて独り生きる。悲しい話だった。
正義感の強い女性は男の不甲斐なさに自分が走り回って回らなくてはいけない焦燥感に陥入るのだろうか。強い女性も本当は正義感で動いているのかも知れない