あらすじ
私たちは何かの行為をしたあとで「われ知らずにしてしまった」ということがある。無意識の世界とは何なのか。ユング派の心理療法家として知られる著者は、種々の症例や夢の具体例を取り上げながらこの不思議な心の深層を解明する。また、無意識のなかで、男性・女性によって異性像がどうイメージされ、生活行動にどう現れるのか、心のエネルギーの退行がマザー・コンプレックスに根ざす例なども含めて鋭くメスを入れる。
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Posted by ブクログ
ユング派心理学の入門書。
・無意識と自我、自己
・夢分析の様々な実例
・アニマとアニムス
・自己の象徴としての曼荼羅
★母性を否定する女性はしばしばエロスに圧倒されてしまい次々と異なる男性と関係を持つ傾向にある
★孤独は人格変化の糸口になることが多い
★その女性のアニムス像を夫に投影出来ぬ時、
アニムスに対する期待はその女性の子供に向けられる→教育ママの誕生
Posted by ブクログ
「無意識の構造を探るこころみは、トータルな存在としての人間の生き方の探索へとつながってくる」とあとがきにある。
文字を追うことはできるんだけど咀嚼するのが難しかった。タイプ論以外はほとんど出てきたんじゃないんだろうか。
恐ろしい世界を少し見せていただいたと思う。自己。
・個性化の道を歩むものは、腹背に敵を受ける厳しさを体験する。それは「尋常な人入場お断り」の道であることを覚悟しなくてはならない。
Posted by ブクログ
日本に箱庭療法を広めたユング派の第一人者、河合隼雄による著書。分析心理学について解説している。
最初は夢分析などを行う分析心理学に対して胡散臭いと思っていたが、本書を読んで印象が変わった。
人間本来の性質に出来るだけ近づいていこうという態度が非常に共感が持てるものだった。
具体例を見てもあまりパッと想像しやすいものではないものもあったため時代を感じたが、それも含めて考える材料として格好の本であった。
Posted by ブクログ
はじめに
本書を手に取ったのは、心の深層に向き合い、自己成長や理解を深めたいと思ったからである。複雑で多面的なユング心理学の無意識理論が、現代の心理療法やコーチングにどのように役立つのか、その実践的な価値を探る目的で読み進めた。読んでいくうちに、自分自身の内面にも多くの示唆を得ることができた。
多層ニューラルネットワークと心の同質性
書中で強調されるのは、生体の脳とニューラルネットワークによるAIの思考過程には本質的な違いはないという視点だ。ハードウェアの違いを超えて「心の動き」としての意識やインテンションが立ち現れるという主張は、AI技術と認知科学、哲学の融合を試みる私の興味と合致した。
意識・自我・自己の区別
本書は自我を「日常の自分の意識的側面」とし、自己を「意識と無意識の統合体」として区別した点も理解が深まった。自己実現(個性化)の過程でこの二つがどう相互作用するかという理論は、エグゼクティブ・コーチングの実践に直結する知見である。
無意識の構造と科学的限界
「無意識の構造」を構造として説明する意義と同時に、あくまで仮説の枠を出ない点も語られていた。私自身、感情や心の理論を「7色の虹」や喜怒哀楽のようなレトリックと捉えがちだったが、多次元的感情回路モデルの導入が示され、複雑な心の理解には多角的アプローチが必須であることを再認識した。
ユング心理学の元型とコーチングへの応用
特にアニマ・アニムス、ペルソナ、シャドウの元型、さらにはハデスの侵入やエロス、ヘルミーネといったユングの深層心理の象徴がコーチングの枠組みに組み込まれ、内面的抵抗や成長促進の理解を支えている点に強い共感を持った。これらは単純な心理学的理論ではなく、実践的な自己変容へのツールとして活用できる。
感情の捉え方と哲学的問題意識
喜怒哀楽に代表される感情の単純な枠組みを超え、感情の多様性や境界の曖昧さを深く掘り下げた部分は、私の哲学的疑問とも響き合う箇所だった。感情をモデル化し論じる際の限界と可能性を示した点で、本書は理論と実践のバランスを保っている。
書籍化の意図と学びの意味
ユングの理論は抽象的かつ哲学的であるが、本書はそれを読者に理解しやすくかみ砕き、現代の心理療法やコーチングに応用できる形で示している。仮説的理論の実践的価値を強調し、自己理解と他者理解、心理的成長の道筋を提示することが本書の大きな役割である。
おわりに
この読み物は、私の興味領域であるAI技術と心の哲学、認知科学、心理学、そしてコーチングをつなげる架け橋として非常に価値あるものだった。複雑で曖昧な心の世界を解きほぐし、自己実現へ向けた知的な足がかりを与えてくれる良書であると感じた。
Posted by ブクログ
河合先生の本は、進んで読ませて頂いており、何冊か読ませていただいたが、今回の本は少々難しかった。
「あとがき」で、「本書ではやはり、はじめの部分はどうしても入門的なことを書かねばならないが、後の方にはすこし深い、思い切ったことも述べることにして、筆をとった」と書かれており、理解不足もやむをえないかと、少し救われた気分だ(笑)。
作家・随筆家としての河合先生ではなく、日本を代表するユング派の心理療法家としての本気が、なるべく初心者にも理解できるように書き下ろされたものであり、内容的には一般人読者にはハードルの高いものだと思う。
しかしながら、ユング派の心理療法(見る夢を解釈して、無意識の状態を知り、治療に生かしていく)について、少しでも覗いてみたいと思い手に取ってみた。
フロイトもユングもともに「無意識の世界」の研究を進めたが、簡単に言えば無意識のとらえ方の違いから袂を分かつことになったようだ。本書の著者・河合隼雄先生は、そのユングの考え方を支持されている。
本書は、ユングの理論の中で、コンプレックスとはどのようなものか、自我とは何か、無意識から現れるイメージやシンボルとは何か、無意識の深層に潜む、グレート・マザー、元型、影について、ペルソナとアニマ(アニムス)の関係について説明されている。
「夢は、無意識層から意識へと送られてくるメッセージ」と言うことで、本書の中でも数多くの夢の解釈事例が掲載されており、その解釈を通じて上記の概念について説明されている。
正直のところ、夢の解釈については、プロの心理療法家の領域であり、素人が分かろうはずはない。
夢の解釈を理解することより、人の心が病んだり、回復したりすることにちゃんとした理屈があるのだということや、それを知らずに間違った行動をとることがいかに危険であるかを知ることに、本書を読む意味があると思った。
我々が普通にわかる「意識」層。
その「意識」層に影響を与える「無意識」の構造を知ることが大事。そこには我々が知らない重要なメカニズムがあるということを知るだけでも大きな意味があると思う。
最終部分に、ユングが自身の体を使って自身の理論の実証実験を行うような場面が書かれている。凄まじい格闘の末に成果が得られたようだが、それはユングの自伝などに記載されているとのことだ。
ユングが最終的に至ったのは、自身の考える「無意識」の構造との共通点が、古代の東洋哲学に見られるということであったようだ。
「ユング心理学と仏教」という河合先生の別の著書もあるようでそちらの本も非常に興味深い。
ふだん我々が何気に見てる夢・・・これには、自分自身の心の状態が確実に反映されている。夢は大事なメッセージだ。
本書によれば人は一夜に5本立てくらいの夢をみているという。なのに朝思い出せない(涙)。そして、思い出せたとしても、その夢の解釈は素人ではやらないほうがよさそうである。