【感想・ネタバレ】まともがゆれる ――常識をやめる「スウィング」の実験のレビュー

あらすじ

弱くていいのだ。ダメでいいのだ。ダメだから人に救われるし、救われたら人を救おうと思うのである。
こうしてダメがダメを救っていく。世の中を回しているのはお金じゃなくて「ダメさ」「弱さ」であっていいんじゃないか。
……寄稿 稲垣えみ子

「できない」ままで生きてもいい!
自分の欠点ではなく「世の中が押し付けてくるまともな生きかた」と戦う術。

親の年金でキャバクラに通い、そのたび落ち込んで引きこもっていた増田さん。
何をやっても自信が持てない、一応「健常」な施設スタッフ沼田君。
毎夕、意味不明なワン切りを必ずしてくるひーちゃん。
「足が腐った」とか「定期をトイレに流した」とか、まばゆいばかりの屁理屈で仕事をサボろうとするQさん……。

障害福祉NPO法人「スウィング」に集う、障害を持つ人・持たない人たちの「できないこと」にこだわらないエピソードと、心の栓を抜く、脱力しきった詩の数々。

誰かが決めた「まとも」を見つめ直し、ゆらしたりずらしたりすることで、それぞれの生きづらさを緩めるヒントとなる一冊。

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感情タグBEST3

Posted by ブクログ

めっちゃくちゃ面白かった。スウィングという障害のある人が働くNPO法人理事長の方の日々の実践と気づきを書いた本なのだけど、インタレスティングの方の考えさせられる面白さだけでなく、普通に笑っちゃう。

障害者の方が森昌子の「せんせい」を歌っていて、ラストの「せんせい せんせい♪ せんせい せんせい♪ せんせい せんせい♪」に「…早よ終われ!!」と思うのとか、障害者の方が大きな半紙に筆でしたためた「親の年金をつかってキャバクラ」とか、不謹慎なんだけど面白い。そして作者の方がそれをしっかり面白がっているのが素敵だと思った。障害者を笑うことをタブーにする方が不自然だし、上から目線のコミュニケーションだ。
かと言って職員の方々は障害を持つ方の全てを肯定するのではなく、笑うのは「ほんの束の間以上はムリ」と普通にイライラしたりもしている。そこもリアルで、障害者の方に正面から向き合っていて、とても良い。援助する側の感情にも嘘がないのは、理想的だと思う。
人と人が共生していくって、心を殺した思いやりよりも、人を尊重しながら放つユーモアの方が大事なんじゃないかなんて考えた。わたしの文章だけではいろいろ誤解があるかもしれないので、気になった方はぜひ読んでみてほしい。

章の間には障害者の方の詩も掲載されていて、それもとにかく率直に本当のことだけ書かれているようで面白いし、なんだか心に残るいい詩。例えば「なにか、おもって、かこうとしたがわすれてしまった」という「ひらめき」という詩とか、「もっとひろいたいゴミがあるので 行けてない所も まだあるので とても むねがいたい」と言っていたかと思ったら、「また新しいエロDVDがあったらいいな〜」と言い出し、「もっと町がきれいなるように 自分たちの心がきれいになるように がんばっていく」と結ばれる「ゴミコロリ」という詩とか。

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2025年10月20日

Posted by ブクログ

圧倒的に、ごく自然に、見境もなく、私の固定観念に気付かせてくれた。

障害を持つこと、何かが出来ないこと、障害があると社会的に認定されること、障害者とされる人の近くで過ごすということ、そんなことを通じて、ボクらを縛る「◯◯せねば!!」を提示してくれる。

今よりもっと苦しくなるかもしれないけど、何かを抜け落としてくれる、そんな一冊であった。

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2025年02月06日

Posted by ブクログ

障害福祉NPOスウィングの代表さんのコラム連載?と増補の入った1冊。
働く人々の物語を通じて、見えてきた気づきを書いている(極端に言えば“だけ”)のだけど、今の自分の弱いところや世の中の潮流に対する「これってモヤモヤ」をしっかり言語化されているのが印象に残った。

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2024年07月10日

Posted by ブクログ

まともがゆれる ―常識をやめる「スウィング」の実験。木ノ戸昌幸先生の著書。まともや常識なんて独りよがりで傲慢で自分勝手なただの思い込み。独りよがりで傲慢で自分勝手なただの思い込みにしかすぎないのならまともや常識なんて何の価値もない。まともは捨てる。常識も捨てる。独りよがりで傲慢で自分勝手なただの思い込みも全部捨てる。非常識を受け止める。できないことを受け止める。それが常識で常識人への第一歩になる。

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2022年08月15日

Posted by ブクログ

 今まで、「(周囲の人と同じように)できない」ということで自分自身が苦しみ、周囲からは「(自分たちと同じように)できない」ということで、その「できない」ことを指摘され続けてきた。その期間があまりにも長かったせいか、何をするにも自信がなく、「これならできる」と思ってやり始めたことも、うまく自分から発信できず、結局失敗に終わってしまう。自分自身が少しずつ縮んでいくのが手に取るようにわかった。そんな中、オンラインで著者・木ノ戸昌幸氏の話を聴き、この本を手にしたのだった。

 この本を読んで、これまで自分の中にあったモヤモヤとしたものの正体が、「できない」ということによる悲しさや悔しさや虚しさや怒りといった感情が混じり合ったものであったことに気づいた。気づいたからどうこうというわけではないが、マイナスの感情ばかりだとはいえ、モヤモヤの正体がわかったことで私はホッとした。 
で、そのマイナスの感情から始めても何かができそうな気分になった。
 そんな気にさせてくれるのがこの本の魅力だと思う。
 

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2021年08月15日

Posted by ブクログ

「折々のことば」で、この本に寄稿している稲垣えみ子さんの「そう『健常』が『障害』になっているのだ!」との言葉がきっかけで、この本を読んだ。

失敗したっていい、弱くていい、できなくてもいい、ダメだっていい。だって、人間なんだから。

違うものは違う。それでいい。そこで自分が何を感じたのか、何を思ったのか、他者との違いを感じ、認めたらいい。

でも、「健常」にしがみついていると、「できなければいけない」その呪縛にとらわれていると、それがなかなかできない。

私たちが考える「まとも」が揺れていくと、もっと生きやすくなるのかな、もっと笑えるのかな。そんなことを思った。

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2019年08月16日

Posted by ブクログ

障害者施設スウィング。
ここには、世の〝まとも〟が通用しない。
おかしな〝まとも〟が大腕をふって歩く世の中。
スウィングの皆さんは、それをふわりとこえていく。
こんなに明るく、こんなに面白く、こんなに心が震えて、こんなに考えさせられる本は、他に無い。
すごくすごく、いい本。

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2019年08月07日

Posted by ブクログ

「まとも」であることに神経をすり減らし、「できない」ことに落ち込み、悩み、もがき苦しむ社会のストーリーを多くの人がそれが使命であるかのごとく受け入れているのでは、、と思った。ここ「スウィング」では、「できない」ことにこだわらないだけで不思議と「できる」ことがどんどん増えて行く。会話が生まれ、笑いが生まれ、詩が、絵が、生まれる。これって人生のすべてではないですか?という解説までとても力強くかっこいい。「まとも」という得体の知れない束縛を、どんどん揺らがしていきましょう。この「揺らぎ」が人生を豊かにするものだと思います。

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2019年05月18日

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NGO法人「スイング」の活動を通して、「~べき」「~ねば」精神をゆるめてくれる1冊。

効率化を優先化する社会の都合で作られた「健常者」「社会の標準と合わない人=障碍者」のカテゴライズが何を生み出し、何を奪っているのか、を考えさせられた。

できることで社会と関わるだけで良い。
それだけなのに、できないことを悪とし、何かと制約を作り、生きづらさを生み出している気がする。

『誰かに対して禁じたことは自分自身にとっても禁じ手となり、その反対に誰かに対して投げかけたOKは、きっと自分自身の何かを赦し、少し呼吸をしやすくさせてくれる』
自分にも他人にも、できないことをOKと言えるように思考を緩めていきたいと思った。

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2025年08月27日

Posted by ブクログ

「はじめに」を読んだだけで、力が抜ける、肩の力が抜けるというのか、そんなに普通にしてても力入ってるのかと改めて気づくくらい、ホッとした。身体がゆるんだ。
そしてページをめくると「しんねん」という詩。ホントに「なりたいたいよ」だよと思った。それ以外の詩も全部好き。寄稿されてる稲垣えみ子さんも言っておられるが、こんな詩書けない。
絵もみんな好き。氷川きよしのコラージュ最高!

世の中の疲れた人みんな読んでほしい。どれだけ自分がガチガチになっているか。自分で自分を縛っているか。そのことに普段なかなか気づけない。
当たり前と思ってること、全部ひっくり返して一つずつ考え直したい。

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2023年12月09日

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常識なんて所詮はひとときのもの、という事を再度実感させてもらいました。世界にはもっとバラエティがあっていい。

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2023年11月07日

Posted by ブクログ

失敗しても、ダメな事があっても全然ok!何がスタンダードなのか?人間はどんな人でも必ず弱さを持っている。できないことも、弱い所あって私の個性。
曖昧さがあることが人間臭いんだろうな!

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2023年08月24日

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「できない」ことをダメとしない価値観、大事だなぁと思った。「できる」ことはいいし、「できない」こともいい。
こうあるべきという社会の要請でなく、ありたいようにある。それができる生き方は素晴らしい。
障害のある方を通じて学ぶことは多いと痛感した。

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2023年02月21日

Posted by ブクログ

息苦しい浮世を
自分と違った角度で眺めさせてくれる。
変なおっさんの本でした。
おもしろい活動あれこれ。詩が掲載
されていて、どれも笑っちゃった。
楽しい本でした。

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2022年08月07日

Posted by ブクログ

武田砂鉄さんの「わかりやすさの罪」
で紹介されていた一冊

世の中の「常識」って
あらためて
なになのだろう
と 深く、面白く
かんがえさせてもらうます

「こうすべき」
「こうあるべき」
「ねばならない」
に対して
「?」と
思うことが多い方、
一度でも思った方、
ぜひぜひ
おすすめです。

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2020年08月20日

Posted by ブクログ

ネタバレ

障害を持つ人の作業所というのはちょっと想像がつかないのだが、経済原理の外側というわけにもいかないのだなあ。

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2019年08月01日

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身体障害以外の人達?を就労するNPOを運営する筆者のエッセイと言うか活動の日々を綴ったもの。自身が世間の「普通・こうあるべき」に縛られて(自身で縛って)苦しんだ経験、普通ってなに?を問い、普通の枠では生きづらい人達の支援をして行きたいと。共感出来る部分が多くて驚いた。

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2019年06月29日

Posted by ブクログ

「べき」や「ねば」といった既存の仕事観・芸術観に疑問符を投げかけながら様々な創造的実践を繰り広げている障害福祉NPO法人スウィングの実践を紹介する。稲垣えみ子の寄稿、利用者たちの“自由すぎる詩”も収録。

朝のミーティングの話などなるほどなと思った。

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2019年07月28日

Posted by ブクログ

障害が問題なんじゃなくて、障害があることをタブー視することが問題なんだよね。稲垣えみ子さんはあとがきでこう書いていらっしゃる。

「力を抜くことこそがクリエイティブの肝とわかっちゃいるので。わかっちゃいるんだが「健常者」である私は考えすぎて力を抜けないのである。そう「健常」が「障害」になっているのだ

いやいや、そういうところはあると思う。現在、職場でわたし自身、障害のある方と触れ合っていて、学んだり気づかされたりすることは多い(だから、施設の側の少しでも「まとも」に近づけようとする「支援」には、それは違うんじゃないかという気持ちを抱く)。

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2019年04月10日

Posted by ブクログ

ネタバレ

生きづらさを抱えている人に、お勧めの一冊。

「まとも」とは、簡単にいえば「常識」のこと。
常識を持っていることは、必ずしも悪いことではないし、持っていることで人間関係が保てることもある。
ただ、「常識」の中にも、「こうでなければならない」「こうしなければならない」という強制力が強くなりすぎて、「常識」に縛られることで、窮屈になってしまうものがある。
「常識」の範囲や強さは、常に一定に保たなくてはならないものではなく、
「常識」を持つ人が居心地よいように、柔軟にとらえてみたらいい。
器用ではない人は、この柔軟さをなかなか持てない。
だから、「常識」がゆれるような体験をしていくことが大事。
「まともがゆれる」ことで、たくさんの気づきがある。
そんな示唆を与えてくれる本でした。

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2019年03月12日

Posted by ブクログ

最後の、著者自身のお話と、寄稿が、
忘れた頃にもう一回読みたいなと思った。

できる、できない、ってなんだろう?
できないことをなくしていくことは、新入社員の頃は楽しかったけれど
時間とか手段とかの限界や、環境に因るもので、
それがだんだん苦しくなってきたり、望まないものになってきたりしていて
どんどん働くのがおもしろくなくなってきてるなあ、と思うこの頃。
だけど上に上に行かなければ、置いてかれそうで、
もう疲れたよ、って月曜日から呟いてた。
「できないは悪い」が当たり前だった。

できないはただできない、それだけのはずで
良いも悪いもないのに。

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2023年11月13日

Posted by ブクログ

『目の見えない白鳥さん〜』からの繋がりで。様々な「枠」をはみ出し、勇気を出して「スウィング」した者だけしか感じられない風。稲垣えみ子さんによる寄稿が素晴らしくて、改めてこの本を自分事として読み直すことができた。

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2023年08月03日

Posted by ブクログ

タイトルの通り。常識に縛られすぎて息苦しくなったり面倒になったりもっと自由にのびのびと生きて行ったらもっと楽しくて楽な人生になるだろうとおもった。

乗換案内のボランティアをしたら警官にウロウロされグレーゾーンだみたいなこと言われるのすごく面倒くさいな笑世の中が面白くならないし良くもならない。

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2023年07月06日

Posted by ブクログ

福祉作業所のあれこれ。

京都駅にてボランティアで乗換案内をしようとしたら、どこか?の、あるいは、誰か?の、許可がいるのではないかと周りから言われたエピソードが、常識という縛りで窮屈になっている今の社会ありようを端的にあらわしてるように思いました。

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2022年08月07日

Posted by ブクログ

 京都の障害福祉NPO法人、スウィングの主催者が書いた本。
 障害福祉施設であるのだけれども、きちんとしなければ、まともでなければ……という思い込みではなくて、ダメなまま、できないままで生きるということをこれでもかと見せてくる。
 障害者(ケアされる人)、職員(ケアする人)という立場ではなく、人同士という考え方に共感する。

 この本が面白かった方は「居るのはつらいよ」「べてるの家の「非」援助論」をお勧めしたい。

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2019年10月13日

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