あらすじ
ロンドンの寄宿学校にはいったセーラは、裕福で賢く、学校じゅうの人気の的。ところがある日、父親の事業が破綻したという知らせが届き、セーラは一文無しの孤児になってしまう――どんなつらい目にあっても、持ち前の想像力を思う存分はたらかせて、誇りと友情をつらぬいた少女の物語。人気の名作が新訳でよみがえる。〈さし絵・小西英子〉
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Posted by ブクログ
これまでどんなどの翻訳よりもわかりやすかった。
滑らかで流れるような文体は清水真砂子さんの翻訳を彷彿させる。
伊藤整さんの翻訳ではほんの少し思い違いをしてしまっていたような部分も「ああ、こういう意味だったの!」と得心がいった。
特にラスト、ミンチンに、貧しくなっても公女さま気取りだったと罵倒された際、セーラが果敢に言ってのけるセリフ、「私はそのことを決して忘れまいと思っていた」である。
他のどの訳でも「私は他のものになるまいと思っていました」となっている。
個人的にはこの従来の翻訳のせいで、「セーラはセーラ自身になろうと努めていた」という意味だと勘違いしていた。
また、映画の吹き替え版では、「自分を公女さまだと思っていたのではありません。公女さまのようであろうとしただけです。」となっている。
他にも随所に見事な翻訳や注釈が盛り込まれており、さすが岩波書店だ、脇明子さんだと感動した。
こんな良い本が2012年に新訳で出ていたなんて、盲点であった。
いつか原書を手に取る日が来たら、絶対に脇明子訳を手元に置いて読み進めたい。
大人の本に関していえば岩波文庫より新潮文庫の方がわかりやすく、綺麗なレイアウトであることも多いが、児童書に限り、岩波少年文庫を信用しておけばまず間違いないと思う。