【感想・ネタバレ】沼の王の娘のレビュー

あらすじ

バリー賞2018年度最優秀作品

父を狩る。生き延びるために。

映画化決定!

「才気迸る、出色のスリラー!」 ニューヨーク・タイムズ紙
「父への娘の愛憎が物語をより力強くしている」 パブリッシャーズ・ウィークリー誌
「鳥肌が立つほどの衝撃のクライマックス!」 カリン・スローター

拉致監禁犯の男とその被害者のあいだにできた娘――それがわたしだ。原野の沼地で生き抜く術を熟知した父を太陽のように崇めながら、12歳まで電気も水道もない小屋で育った。そう、あの日までは。そして今日、終身刑の父が看守を殺して逃走した。父を捕まえられる人間がいるとしたら、父から手ほどきを受けたわたし以外にいない。父と娘の緊迫の心理戦、究極のサバイバルゲームがいま始まる!

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Posted by ブクログ

ネタバレ

長期間少女を誘拐監禁した罪で服役していた囚人が脱獄し逃走。
誘拐監禁されていた間に生まれた娘のヘレナは、過去を封印して生きてきたが、父親が自らの家族と生活を脅かしに来るものと分かり、対決することを決意する。

アメリカの原野で繰り広げられる追跡劇と息を呑むアクション…と思って手に取ったが、そっち側の描写は意外と少なく、文明をほぼ知らずに育っていった主人公の少女時代の描写と、ネイティブアメリカンの文化を踏襲して生活するが、歪んだエゴで主人公の母(誘拐された少女)や主人公に暴力をふるうトチ狂った父親の生き様、苦しみ抜いて生きた母親の人生、父親から逃げ切った後の文明生活と苦労などを複層的に描いていく西湖サスペンス小説だった。

文明社会とワイルドライフの対比の中で、その生活様式に是非や善悪はなく、そこで生きていく人間の性格や行動で是非が決まる。

想像していた展開ではなかったが、思っていた以上に面白かった。

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2025年02月20日

Posted by ブクログ

序章で引き込まれる。

拉致監禁犯の父とその被害者である母。 
両親と暮らした12年。
刑務所を脱走した父を追うと決めたわたしの、
覚悟と回想。

あらすじにはサバイバルゲームとあるけれど、
どちらかというと家族の物語りという印象。
残酷な描写もあるけど、淡々とした文章の中に
緊迫感も臨場感もあって、一気読みだった。

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2024年06月19日

Posted by ブクログ

 ある女の子が沼地に誘拐された。彼女は誘拐した男の子を産み、育てた。
 その女の子が主人公の母だ。

 物語は、主人公の父親が刑務所から脱獄したというニュースを聞いたところから始まる。主人公は娘二人を持つ母親。夫も子供たちも、自分の父親が沼の王と呼ばれた犯罪者であることを知らない。
 父親は自然の中で暮らすすべに長け、それを主人公に教えていた。
 警察に任されていたら、父親を捕らえることはできない。捕らえることができるのは、私だ。主人公はそう決意する。

 主人公の回想シーンと、父親を追跡する現在が混在するのだが。
 主人公の一人称で語られる世界の情報の豊かさがすごい。かつてどのように暮らしていたのか、どう思っていたのか、世界がどう見えていたのか。ひとことひとことの言葉の積み重ねがしみる。

 普段、映画や漫画で泣くことはあっても、小説では泣かない。
 文字を読んで脳内で変換するからなのかなと思っていたが、ものすごい意外なシーンで涙が出たので驚いた。

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2019年04月15日

Posted by ブクログ

拉致監禁犯の男とその被害者の間にできた子供の話。男から逃げ、大人になり、結婚し子供ができた後、父が脱獄してきた。
ヘレナと父との心理戦。ヘレナが父を追い詰める様子、沼での暮らしが交互に描かれ、緊迫した状況を作り出す。沼での子供時代を通して、ヘレナがどうして今のヘレナになったかが、わかる。
父の行動を読む娘、娘の行動を読む父、追い詰めるところ、追い詰められるところはかなり白熱していて、ハラハラしっぱなしだった。

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2023年10月21日

Posted by ブクログ

ネタバレ

被害者のその後を描いた作品(ルームとか、棺の女とか)が好きで結構読んでるのですが、少し毛色が違って、被害者の娘さんのお話。ややオオカミに育てられた子ども系の要素あり。

ヘレンがリアリティがあって、本当に存在するこんな背景を持つ人かと思うほど。両親に対する冷静な評価と、拭いきれないこもごもが丁寧に描かれていて、キリキリしながら読みました。
父親が母親を(逆も同じだけど)軽んじている家庭で子どもが育つことの怖さがさらっと描かれていてゾワっとしました。それでも幼いヘレンが良いと思うことをしようとする逃走の場面がとても良い。クライマックスよりも心に残る。

それにしてもこれは、もはや犬小説。。自然とかあまり関心ない私ですが動物は好きです。犬は好きです。犬小説としても読めます。

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2023年08月01日

Posted by ブクログ

挿入話のアンデルセン童話「沼の王の娘」は、アンデルセンらしく一癖も二癖も読みようによって変わる、およそ“童話”らしくない物語。
その物語を副旋律として作家は現代の問題点を「束縛という最強の暴力の中から生まれた娘」の話を創作した。
ネイティブアメリカンのような生活を描き、あたかもアイデンティティの相違を理由としているように見えても、実は一人の男のエゴから生まれた悲劇であることを描き忘れてはいない。
生まれた娘は、与えられた環境の中でしか判断できないことから当然に善悪の理解は世間と相違する。前半の「ふりかえり」は、そういった意味からとても重要な悲劇の描写。

物語の後半に入り、大切な家族を持ったことで新たな感情が生まれ、父に対して毅然として対峙するさまが、前半とのギャップを生み出して、読者に深い感情を覚えさせる。

自らの出生の境遇に対し、周囲の目と自らの感情を消化し、社会で自立していくことがいかに難しい事か。
人が人を束縛するという現代社会の問題が加わったことで、「ジャングルブック」など異質の世界で育った子供の社会への順応を描いた物語などとは、一線を隔すことになった。

これは、すぐれたテーマを持った作品だと、私は思う。

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2022年06月17日

Posted by ブクログ

ネタバレ

拉致監禁犯の男とその被害者の間にできた娘。
そんな父と子をめぐるスリラー。

複雑な感情と深刻で壮絶な過去。その語りが淡々としている分、響いてくる。
自分と向き合い清算していく姿を根気強く見守りながら、事実が明らかにされる度に息を飲んだ。
どこまでも父の子でありながら、私は私であるという強さを手に入れていく成長ぶりは読み応えがあった。

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2020年11月29日

Posted by ブクログ

ある誘拐犯が脱走して
そのニュースを聞いた女は
「この犯人を止めることができるのは
自分だけだ」と思う。
彼女はその犯人に誘拐された女性から生まれ育てられた娘だった…
娘は父親の狩りを開始する。

読む前に期待していたのはディーヴァーの様なスリラーで、帯にも「衝撃の〜」とある。
読んでみると二つの場面が切り替わりながら進む
現在:誘拐犯の父親を狩る
過去:父母と生活していた頃
そして章の頭で物語のモチーフであるアンデルセンの「沼の王の娘」の一編が挟み込まれる。

ハラハラする要素はあるけど、過去の"生活"誘拐犯と誘拐の被害者の娘の奇妙な親子の関係性の描写が間に挟まることで、ぐいぐい引き込む速度のある物語というより、現在で起きている事件に対する深さ、暗さを濃くしていく物語になっていて
ちょっと期待していたのとは違った。

最近は立て続けに「あらすじを読むとエンタメ寄りかな?と思いきやそうでもない」が続いてる。
面白いと言うか、どうやったらこの登場人物の気持ちや設定を考えつくのか?と言うことばかりが気になった。
それくらい異常な状態で起こりそうな考え方、事態を描いている。
まだ、「奇妙な親子の話」と一言で片付ける様な整理がつかない。

映画化されたら観てみたい。

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2019年05月18日

Posted by ブクログ

設定が凄すぎる。凶悪犯の父が刑務官二人を殺害の上脱獄した。娘は家族を避難させ、父を狩るために、原始の森へ帰ってゆく。かつて父に教えられ、父を超えた、あの狩りの技術を駆使して。そういう設定である。

 12年前。ヒロインのヘレナは父に誘拐監禁された母とともに森の中の父による幽閉生活から脱出し、父は終身刑を課され重警備刑務所で獄中にあった。その父が脱獄したのだ。

 ぼくとしてはワイルドなアメリカ・カナダ国境の山の奥で、父と娘の壮絶な闘いがずっと演じられる作品を思い描いていた。C・J・ボックスの『鷹の王』が描いたネイト・ロマノスキーの凄まじい闘いのように。サバイバル技術に長けていた映画『ランボー』のように。

 しかしこの物語は、闘いに向かう現在よりも、むしろ、完璧に幽閉され、外の社会を全く知らずに育ち切ってしまったヘレナの過去に重心が置かれる。その特異性、独自性に物語の奥行きは存在し、その暗闇ゆえに、父娘の愛憎がもたらす、のっぴきならない底深さを、読者は否応なく思い知らされるのだ。

 14歳の時に誘拐され、森の中のキャビンに幽閉され、そこで虐待され、レイプされ、子を産んだ。精神の底から100%の奴隷と化してしまった母。父から森と狩りの教育を施され、逞しく育ったヘレナ。ヘレナの一人称で語られる、独自で偏った過去と、現在がクロスしながら物語は進む。

 時折カットバックされるのが、ヘレナが読んでいたとされるアンデルセン童話『沼の王の娘』からの抜粋。沼の王とは父のことであり、娘とはヘレナのこと。過去と現在の描写、そして童話の暗示するもの。三つの断章により語られるヘレナという人間像。父という男の暗闇の正体は、やはり過去の虐待にあったという。暴力の連鎖。汚れた血の系譜を断ち切るために暴力から非暴力へ。普通の暮らしへ。

 全編、そんな幼き少女の悲鳴という圧力が充満した物語なので、読むほうも心してかかりたい難物、かつ重厚、そして確かな読みごたえを感じさせる大自然の描写。街を離れた完全自給自足生活。狩猟民族の系譜。力と頭脳の対決。愛と憎悪のひしめき。

 本作は、ミステリの重鎮が多く獲得している名誉ある賞バリー賞の最優秀作品賞受賞の栄誉に輝いた。『一人だけの軍隊』(映画『ランボー』原作)の作者デイヴィッド・マレルからのエールもあったようで、作者は彼に、登場する猟犬の名ランボーの名を冠し、さらにあとがきでの謝意表明で応えている。

 サイコ・サスペンスと言われてもいるが、ワイルドなサバイバル小説、あるいは懐かしい冒険小説のジャンル名も似合いそうな骨太な、否、骨太すぎる力作である。

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2019年05月06日

Posted by ブクログ

こういう作品、日本じゃ絶対世に出ないよなぁ。
その点、アメリカは創造に対して自由だよなぁ。

ガチで娘が父親を狩ってた。すごい。
映画化するらしいけど、映像で見るとえぐそうだな。
父と娘のラストシーンはちょっと切なかった。

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2019年04月26日

Posted by ブクログ

ジャングルの中で異能親子がバトルを繰り広げるのかと思いましたが、沈み込むような心象風景を主に描いているので、思いのほか地味でしたが、その分読み応えありました。
母を誘拐して自分を産ませた父への愛憎と、沼地への憧憬と親しみ、家族への愛。普通とは何ぞや。

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2023年09月28日

Posted by ブクログ

刑務所から脱走した父を追う娘
母を含めた三人の過去の話が多く
父を追う現在の話が少なく薄く感じてしまいました

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2020年04月18日

Posted by ブクログ

面白く読み進んだが、エンディングが胸糞悪い。
主人公が異常な父親をいまだ愛している部分がありそうで、
母を理屈でしか受け入れていないみたいで、ほんと嫌。
母に対する後悔が小さく、人を殺した後悔もそれなりしかなく、なんかすべてを自分に都合よく解釈して生き残ってるところが父親そっくりで、ああ、嫌、絶対嫌

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2019年06月20日

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