あらすじ
平成の30年間は、グローバリゼーションの進展の中で、戦後に形成された日本的システムが崩壊していく時代だった。政治、経済、雇用、教育、メディア、防衛――。昭和の時代にはうまく回っていたものがすべて機能不全に陥り、そこから立ち直ろうとする挑戦の失敗と挫折の繰り返しが、平成史を特徴づけている。「平成」という時代を過去に葬り去ることなく、失敗の歴史を総括し、未来への指針を示すために。各分野の第一人者が10のテーマで見通す、最もリアルな平成史。
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多角的評論で読ませる
平成という最早元号で区切ることに、象徴以外での意図がなくなった初めての時代をあえて区切り、変化を評論する一冊。
正直必ず出てくると思っていたジャンルであり、様々な形でこれからも出てくるだろうが、本書は結論ありきな部分はありながらも、筋道を立てつつ難解なこの時代に名前をつけようとしてくれている。
平成時代を低迷や失敗が誰の目にも明らかとし、その原因に戦後形成された成功モデルが破綻し次策を構築できない経済や政治、官僚システムを挙げている。昭和後期からの兆候など納得できる点も多いが、あの時代だからこそ成功した特殊モデルであることは強調して欲しかった。無論著者たちは分かっているのだろうが、現在の失敗を注視するあまり対比となる「戦後昭和の成功」が書かれすぎているように感じる。
また複数の学者から広く集めている故か、一部の学者の評論からは平成時代のグローバリズムの混沌さの上昇と対比するように、昭和時代の秩序ぶりを書いているがそんなことはないと思う。例えば6章のメディア論からは昭和の新聞は討議を重ねる場があったとするが、当時だって話題性優先の報道はあっただろうし、ネット上だからこその世代身分を問わない議論の価値はあるはずだ。
もちろん多角的著者の視点は良いところもあり、訳に個人的に7章の文は面白かった。評論というと違うかも知れないが、漠然と物事を一元化してはいけない考える姿勢の重要性が伝わる。
総じて良い部分、悪い部分を自分で考えられる評論集。世代を問わず平成の日本を生きた方は一読しても良いと思う。