あらすじ
美しい娘の死霊が、燈籠を提げ下駄を鳴らして恋人のもとに通う怪異談。改版。(解説=奥野信太郎/注=横山泰子)
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Posted by ブクログ
15日間で1種の話をまとめた当時の寄席を講談速記したものだそうで、読み応え抜群。負の連鎖による奇妙なめぐりあわせ。有名なお露と新三郎の話が進む傍らで、孝助の物語が同時進行している。読み終えると、忠義の従者による仇討譚という印象が強まった。お露にも新三郎にも罪がないので、ふたりの結末は気の毒としか思えない。死者の執着より生者の悪行のほうが目立ち、孝助側は胸がすくような勧善懲悪の物語だった。
Posted by ブクログ
複雑な人間関係に翻弄されて少々読みにくい印象があるが、怪談としての秀逸さは相変わらず。
牡丹燈籠が怪談の中でも特徴的な理由は次の二つ。
まず、ここに登場する幽霊は、怨みつらみで化けて出る霊ではない。
次に、幽霊であるにもかかわらず「足がある」。
以上を踏まえてぜひ読んでいただきたい。
露の想いの強さに、打たれる何かがあってほしい。
Posted by ブクログ
感想より何より、まず一番驚くのは「あの日本三大怪談の一つである牡丹燈籠には本物の幽霊は出てこない」ってこと。びっくりだ。
いや出てたのかもしれないが。どっちにも取れる。
もちろん幽霊はお話に出てきます。あの有名な駒下駄をカランコロンいわせてるとか、描写も細かく力入っていて怪談物らしくそこは物語のハイライトでもあります、が。後半で伴蔵が実は幽霊は自分がでっち上げたんだという発言をし。
で、考えてみればお露の幽霊に会っているのは萩原以外には実は伴蔵だけ(声だけならおみねもだけどこの二人はグルだし)、ということなんかに気づく。合理的に考えればこれがモロに答え。
っていうことなんだけど、読者はやっぱり地の文を信じなきゃいけないのがルールなんです。そっちでは先にいったようにさもお露の幽霊が本当に出てきたかのように書かれている。伴蔵の話を信じるならそこだけ地の文は故意に嘘を語ってるってことでやっぱり違和感がある訳です。あとから考えると普通は意識されない「これは誰の目が見ているんだ?」ってことを感じてしまう。それ思われた時点で地の文の信頼感かかなり揺らぎますが。
一方で伴蔵の話信じるなら信じるで「あの十両は?」とか「お札剥がして云々の部分とかメリットのない嘘の部分はなんなんだろう」なんて疑問が結構出てきます。
ていうか牡丹燈籠はやっぱり本物の幽霊が出てくる話って一般に思われているお話ですし。どうなんでしょうか。
そして中身は探偵小説ばりにガンガン人が死んでいくお語でした。「じゃあ殺しちゃおう」ってすぐ思うんだものこの登場人物達は。そして思ったことは即実行。素晴らしいですね。
しかしこんなに長くて登場人物も多く結構関係複雑なお話、今の私達は文字で読むから良いけど、元はこれ落語。話して聞かせてたっていうんだから。どう考えたってお客さん途中で飽きる。そもそも話が面白いとか関係なしに人の話を聞き続けるのは結構集中力使うし続かないだろう。それを飽きさせないで語り通せた(しかも理解もさせられた)って想像を絶する名人だ。聴いてみたかったなー。