あらすじ
障害者について考えることは、健常者について考えることであり、同時に、自分自身について考えることでもある。2016年に相模原市で起きた障害者殺傷事件などを通して、人と社会、人と人のあり方を根底から見つめ直す。
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Posted by ブクログ
『なぜ人と人は支え合うのか 「障害」から考える』渡辺一史
先日公開されていた映画『こんな夜更けにバナナかよ』(未見)の原作者であり、ジャーナリストの渡辺一史さんによるビギナー向けの新書。
映画の中で描ききれていなかった障害者の自立生活へ向けた運動の歴史、声を挙げる運動あってこそ駅のバリアフリーが普及し、ベビーカーや高齢者も恩恵を被っていること。「障害者・障がい者・障碍者」の表記の議論について。言葉を選ぶことで「いい人(ちゃんと配慮している人)に見られたい」自分を見破られ、戸惑う。
相模原の施設で起きた殺傷事件から、ネットでは見るに耐えない言動が撒き散らされる中、「その人に価値があるか無しかではなく、価値を感じられる人間がいるかいないかだ」とひとり一人に問いかけてくる。
この本についてはあれこれ書けば書くほど嘘っぽくなるので、読んでほしいとしか言いようがない。いろんな事件の中で「役に立つものしか認めない」風潮が見え隠れする、「今」の空気に、流されないためにも。
もう亡くなって数年経つが、直前まで元気だった義母が脳出血で倒れ、あっという間に人の助けがなければ生活を営めなくなった時、福祉が行き届いた社会を作ることは「明日の家族や自分のためでもある」と痛感した。
ゆる夫は、重度の障害を持つこどもたちのデイケアで勤めている。主体的に仕事をしようとしないまま生きてきた彼が、「俺がおらんと(職場が)回らへんねん」と自分の意志で仕事を続けている。
こどもたちの生活を支えると同時に、彼も支えられている。塾講師時代、何度も中学生に教えた吉野弘の詩『生命は』の1フレーズが浮かんでくる。
「生命はすべて/そのなかに欠如を抱き/それを他者から満たしてもらうのだ」
書き手自身が答えを模索する旅に、同行する気持ちで読んだ本だった。
Posted by ブクログ
「こんな夜更けにバナナかよ」の著者による一冊。相模原の事件を冒頭に、障害者たちがどう生きているか、またどう自立生活を文字通り『勝ち取って』いったか、さらにはその制度に甘んじてしまういまの障害者/介助者世代への危機感も書かれている。わたしは自分がASD・うつ病のふたつの障害を持っており、(運良く)自活していることもあって、読みながら「この人は何をいいたいんだ?」とまだるっこしく思うこともあったが(本書に描かれる人たちはほとんどが身体の障害者、というのもあったかもしれない)、振り返ると、人と人との付き合いというものについて、丁寧に論を運んでいた感じがあった。
ニーズがないと「居ない」と思われる。それがいちばん刺さった文言だった。……ただ、それとはまたべつに、守られていなくても、あるいはたとえ「守られていて」いるとされる範疇にあっても、ひと/自分が閉塞感を感じたときそれを打破しようとすることを妨げない/られないことが全体に必要であり、また、実際の付き合いを大切にしていくことの重要性もひしひしと感じた。