あらすじ
Amazonでも、googleでもない。
2020年、東京オリンピック後の日本社会を構想するヒント
阪急電車、宝塚歌劇団、東宝株式会社など、明治から昭和にかけて手がけた事業は数知れず。大衆の生活をなにより重んじ、日本に真の「近代的市民」を創出することに命を捧げた天才実業家の偉大なる事業と戦略とは?
【小林一三(こばやしいちぞう)の手がけた事業】
阪急、宝塚、東宝、阪急百貨店、第一ホテル(後の第一ホテル東京)、阪急ブレーブス(後のオリックス・バファローズ)、昭和肥料(後の昭和電工)、日本軽金属、東京楽天地など。
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Posted by ブクログ
久々に長編の本を読んだ。クリステンセンの「イノベーションの最終解」以来だな。
こんなイノベーティブな実業家がいたのかと驚かされる本だった。年代的には渋沢栄一の子供くらいの世代だろうか。マーケティングの授業でセグメンテーションの切り口として年齢、性別、所得レベル、地域、人口などの項目を教わるのだけど、自己流で歴史人口学に着目して次々と新規事業を連鎖的に考えて日本の生活インフラを変えてしまった人だ。
小林一三は、新規事業家のようなクリエイティブなイノベーターには普通の生い立ちではとてもなれないのかも・・・、と思えるような複雑でドラマのような家庭環境で育つ。ただし、彼のように最初に銀行へ就職し、計数感覚を身に着けてその後実業家に転職して次々と事業を起こす。人口変化に注目して市場の利害関係者をあっという間に把握する洞察力とビジョナリー精神、先見性を磨く。こんなキャリアを歩めば、少しは近づけるのかもしれない。
今は産業構造の変化もあわせて考えることになるので複雑だし、当時のような人口が増加する段階ではない。少子高齢化社会を踏まえた補正が必要だ。それでも、このキャリアは少しは私のような凡人にも参考になりそうだ。
産官の連携が叫ばれる中で、相容れない摩擦もあるのだろう。この問題も垣間見えるトピックがある。いくつかの企業(阪急電鉄、宝塚、第一ホテルなど)の取締役社長の後に国政まで経験している。キャリアに幅というよりも奥行きがある人を初めて見た気がする。なお、ひ孫がテニスプレーヤーの松岡修造氏だから多様性に満ちた華麗なる一族って感じだ。
やれDXだの、AIだ、IoTだ、5Gだと新規技術に沸き立って異業種連携のお祭り騒ぎの現代を彼が見たらどう思うのだろう。彼の思考回路を学びまねてみるもよし、この思考回路を自己流にアレンジするもよし。技術&社会をどう設計&実装するか、よくよく考えてみたい。
Posted by ブクログ
序章 小林の「人口増に乗った経営」を切り口にするのが、本書の独自性なそうな。私の常識が問題なだけですが、ここまで広範囲に携わっていたとはおどろきでした。
P43 三井銀行の三井社長 頭取じゃないの?
P56 小林24歳、恋人こう16歳
P108 宝塚少女歌劇団 「少女にしたわけ」で、自分は16歳の恋人とゴタついておきながら……と思ったのでした。
P154 阪急、阪神の争い。球団で存続したのは、阪神でしたけど。一文字での略称で阪神=神なのは、せめてもの名残?
P171 鉄道時代になって、地の利がなくなった 鉄道史を知ると、何もなかったので鉄道が敷けたのがわかります。地下鉄は除きますけど。
P207 東京電灯は表記ゆれ?
P226 宝塚大劇場4000人、当時としては大きすぎ?
P242 ヴァイタフォン はじめて知りました。映像と音声の分割はdtsと同じかと。dtsはCDが紛失したとか。まあ、日本では普及しませんでしたけど。
P447 敗戦後でも、革新官僚による統制経済 既に官僚統治が……
P467 第一騎兵師団、キャンプ・ドレイク たぶん、朝霞駐屯地近辺?東宝争議への投入戦力がちょっと大げさかと。連隊未満かと。