あらすじ
ニューヨーク、国連本部。イラク攻撃を宣言する米国務長官の背後から、「ゲルニカ」のタペストリーが消えた。MoMAのキュレーター八神瑤子はピカソの名画を巡る陰謀に巻き込まれていく。故国スペイン内戦下に創造した衝撃作に、世紀の画家は何を託したか。ピカソの恋人で写真家のドラ・マールが生きた過去と、瑤子が生きる現代との交錯の中で辿り着く一つの真実。怒濤のアートサスペンス!(解説・池上彰)
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Posted by ブクログ
(2025.09.03 再読)
数年ぶりの読み返し。
かなり昔に、ゲルニカの本物を見た。
あのときの胸にせまる感情を思い出しながら、もう一度「暗幕のゲルニカ」を堪能した。
戦争への怒り、悲しみ、挑戦を感じる作品だった。
ゲルニカ自体が反戦をかたる作品だけに、強い思いが込められている。
二十世紀パートはピカソの史実にのっとり、二十一世紀パートはアメリカで起こった911テロをモチーフにしながら、主人公の瑤子といっしょに奮闘したくなる。
あらためて読み返すと、作者の原田マハさんご自身もキュレーターとして活躍されており、911の犠牲者のなかに知人もいたのではなかろうか……。
そして、大作家ピカソの代表作を主軸にしているのだから、筆がのりまくり。
ゲルニカの描写と戦争への思いが何度となくくり返され、やや冗長にも感じられた。
後半のマイテや作品のその後や、登壇した瑤子のゲルニカの発表など、もう少し欲しかったと欲張ってしまう。
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(2022.03 初読)
2022年2月、ロシアがウクライナへ侵攻をはじめた。これは現実である。
偶然とはいえ、いま私の手元に「暗幕のゲルニカ」がある。
この小説は、
ピカソが「ゲルニカ」を描いた背景とその後の時代と、
アメリカに起こったテロ9.11のあとに、ピカソ展示会のために奔走する2003年、
という二軸を、史実とものがたりを入り交えながら小説に仕上げている。
どこまでが歴史でどこからが小説なのか、確かめたくなるほど溶けこんでいる。
(アートの解説や史実は専門知識のあるマハさんなので信頼できる)
それぞれの時代にはピカソの作品を愛し守り抜こうとした女性、
ピカソとその作品に燃え上がるほどの愛情を捧げたドラ、
10歳で「ゲルニカ」を見てピカソの虜となったMoMaキュレーターの瑤子。
まったく時代の違うストーリーが交互にくり広げられるが、二人のゲルニカにかける思いは同じだ。
「ゲルニカ」はピカソの故郷スペインの内戦でゲルニカに受けた爆撃を描いたもの。
阿鼻叫喚する人々、亡くなった子を抱く母、倒れる兵士、いななく馬、逃げる女……
圧倒的な、悲しさ、惨さ(むごさ)。
ピカソが戦争に立ち向かった作品。
絵筆一本で、闘うのだ。
国連に掲げられていた「ゲルニカ」のタペストリーは
ロックフェラー家より2022年2月に再び貸与された。
今、この時だからこそ読むべき作品。
Posted by ブクログ
スペイン内戦〜終戦までのピカソパートと9.11〜2003年までの現代のパートを虚実織り交ぜながら描いたもの。国連安保理のロビーにゲルニカがあったことも知らないし、イラク空爆の会見時にゲルニカに暗幕が張られた話など全く知らなかった。美術については全く知識も興味もないが惹き込まれた。
Posted by ブクログ
ピカソのゲルニカは、知ってはいるけど背景まで知らなかった。スペインの内戦中に起きたゲルニカ空爆に憤ったピカソが、戦争批判のために描いたアートだったんだな。9.11の時に、アメリカでゲルニカに暗幕がかけられていたというところは事実のよう。それをみてショックを受け、このお話を書き上げた原田マハさんはすごいなあ。
また、何よりドラマールの強さに泣いた。ピカソにいつ捨てられるか分からない恐怖、自分では繋ぎ止めておけない焦り、すごく分かる。彼女のおかげでゲルニカの制作風景は後世に残された。けれど、それだけが自分の存在意義や価値だと思っている彼女をみるのと辛いなあ。
原田さんの作品読んでると、わたしも人生を変えるような自分にとって衝撃的な絵に出会ってみたいなと思う。少し違うかもしれないが、一度美術館でみて、なぜか引っ掛かり忘れられなかった作品は、フェルナンクノップフの「打ち棄てられた街」です。