【感想・ネタバレ】あこがれ(新潮文庫)のレビュー

あらすじ

おかっぱ頭のやんちゃ娘ヘガティーと、絵が得意でやせっぽちの麦くん。クラスの人気者ではないけれど、悩みも寂しさもふたりで分けあうとなぜか笑顔に変わる、彼らは最強の友だちコンビだ。麦くんをくぎ付けにした、大きな目に水色まぶたのサンドイッチ売り場の女の人や、ヘガティーが偶然知ったもうひとりのきょうだい……。互いのあこがれを支えあい、大人への扉をさがす物語の幕が開く。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

一文の長さ。次々と思考が湧き上がる思春期の一人称を表現されているなと思った。
リズミカルで甘酸っぱい世界観。

「もっとちゃんと考えてから、もっとちゃんと答えればよかった」

あこがれとは未知へのとらわれ。
自分なりの美しさ(ミスサンドイッチ)へのあこがれ。
自分なりの正しさ(家族像)へのあこがれ。

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2021年08月07日

Posted by ブクログ

ネタバレ

「あこがれ」が小さな冒険につながっていくふたつのお話。第一章は小学四年生の麦くんのお話で、第二章は六年生になった麦くんの親友の女の子、ヘガティーが主人公のお話です。

このさき、ネタバレありです。というより、今回はネタバレばかりです。読んだことのない方には「てんでなんのことやら」かもしれませんが、あしからず。



海外文学ぽい感じを試したのかなあと最初は思った第一章。ストーリーからの感想などの、本来メインともいうべき感想からは離れたようなことを言うことになります。

主人公・麦彦のおばあちゃんの人となりが感じられるところがよかったです。人間の老化は避けられません。でも、まだ十分に動けていた過去というものは消えることはなく、たとえば主人公の少年の記憶の中には、おばあちゃんがしっかり歩いていたり話していたりしたときの様子が残っている。老いて介護が必要になったおばあちゃんが今のおばあちゃんなのだから、そのおばあちゃんという人間は老いて動けなくなった人だというふうに理解され、接せられようになっている。でも、そこばかり見ていると、なんら無味乾燥な見方しかしていなくて、実はなにもわかっていないと言えるものだったりもする。その人が生きてきた経過、内容、過程。音楽だって、最後の10秒だけ聞いてもわからないのといっしょで、人間だって、たとえば最後の1年だけ見ていてもその人という存在はわからないのだと思う。本書でおばあちゃんについて書かれているところは短いです。それなのに、しっかり「人」を理解するためにとらえておくポイントがわかって書かれているから、おばあちゃんが出てくると、なんだか胸が温かくなるのだと思う。

これは、主人公があこがれる若い女性・ミス・アイスサンドイッチが最後に主人公と喋るところもそう。そこでミス・アイスサンドイッチにやっと平熱とでもいえる温度が宿って、それまでの距離感からくる「他人的な理解」から、しっかりその人の人生を肯定した「隣人的な理解」へと印象が変わり、そのうえで人物が描かれているように感じられた。ミス・アイスサンドイッチにもまぎれもなく血が通っていて、考えて感じてその都度選択をして生きていて、自分の人生を歩いているさまがある。おばあちゃんと同じようにミス・アイスサンドイッチも、短い会話シーンだけでもう立体的かつ愛すべき人間として描かれていて、それは作者の優れた筆力のほかに人間観から大きくきているだろうことなので、そういった豊かさのこもっているところがいいなあ、と僕は思いました。

海外文学的な乾いた文体で表面的に文章が流れていく感覚が強めのスタイルに挑戦しての本作なのではと思えたのだけれど、おばあちゃんとミス・アイスサンドイッチ、この二人に人間の良心が反応するものが息づいていて、それは本作では子ども視点で書かれているものゆえに、ちらりといった程度でのそういった人間性の登場になったのでしょうが(なぜかというと、大人が大人になっていく過程や大人として生きていくなかで培われるものだろうからです)、作者の才能の本流はその、ちらりのほうだよな、と僕には感じられました。

第二章。
四年生から六年生になり、そして男子から女子へ主人公も変わって、言葉で世界をとらえる解像度が上がっているし、考えることの深みも増しています。ひょんなところから、主人公・ヘガティーに異母姉がいることがわかり、ヘガティーの心理が変わっていく。お父さんに対する心理についてはもうそうですが、そのお姉さんの姿を一目ながめてみたい、と思うようになる。そして、会うことが出来て、姉の家に招かれたところの様子からがとくに引きこまれました。姉は、自分の実父のことなんかどうでもよいと考えているし、妹がいることにも何とも思わないと率直に述べるのですが、この姉とその母に対するヘガティーとの距離感、場違いな感じにはたまらないものがあります。他人同士の気づかいよりも近く、そして肉親の距離感にしては嫌悪感みたいなものがある息苦しい空気が醸し出されます。こういう居づらい感じってときにあるよなあ、と僕も思い出しながら読んでいました。そして、この家を出てからが圧巻のスピーディーな流れに巻き込まれることになります。剥き出しの自分のままぶつかっていくように生きているところの描写、といえばいいでしょうか。著者はそういった生々しく激しいところを活写する力が相当ある方だと思います。そして、そういった力で畳みかけられて、圧倒されるようになって、書かれている言葉を、がぶがぶあっぷあっぷと飲み干すような読書体験になるのでした。この最後の数十ページで、『あこがれ』という作品の高みがぐっと持ち上がった感じがします。

というような、「作品紹介」ではなく、「個人的雑感」といったレビューになりました。執筆終わりでへろへろになっているときはこんなものでしょう……。とはいっても、今回三作品目となった川上未映子さん。もうこの方は、作家としての力はすごいものだ、手に取るときに躊躇することはないぞ、という思いが確たるものとなりました。相性もあるのでしょうが、そういった作品に出合えたこと、この世界に存在することを知り得たことは、自分にとってものすごく幸せなことなんじゃないだろうか、というような、ちょっと噛みしめるような喜びがあるのでした。

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2023年09月18日

Posted by ブクログ

ネタバレ

洋画を読んでいるような感覚。群れない2人がかっこよかった。思春期真っ最中ながらも悶々とするのではなく行動に移していってるのが立派すぎる。

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2025年06月20日

Posted by ブクログ

ネタバレ

周りに見える景色を羅列していくことで、沈黙を表現できる。
どうでもよい具体的な考え、会話を書く。目が大きい人は視界の黒枠も広がるのだろうか。とか
川上さんの文章はやっぱり好き。ヘヴンより百倍明るいが女子リーダーとか麦くんの母の謎の仕事とか、少し影もある。

アルパチーノ(^^)/~~

第一章
ミスアイスサンドイッチ 小4 麦くん
ぼくはスーパーのサンドイッチ屋のミスアイスサンドイッチが気になり、彼女の絵をたくさん描く。クラスの女子がミスの顔を整形だと笑っていてざらり。友達のヘガティーと会いにいくとミスは辞める予定だと言う。最後にぼくが絵をプレゼントすると喜び、結婚する予定だと言った。その日ミスとそれに似た姫や犬の自分の出てくる絵本の夢を見る。
優しいおばあちゃんは死んで、相変わらずお母さんは家で占いサロンをしていて、ヘガティーは銃撃戦の映画の真似をする。
屁が紅茶の匂いだからヘガティーって……笑

第二章 小6 ヘガティー
苺ジャムから苺をひけば
わたしのお父さんが実は昔別のお母さんと結婚していた。麦くんはむりやり女子と付き合わされた。麦くんの母が懇意のパワーストーン屋で火事。麦くんの母再婚。
別の母の娘、姉の調査。家に行くも「妹と思わないし、お父さんが死んでも何とも思わない」と言われる。実は父にも先方にも来るのは全部バレていた。

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2025年05月01日

Posted by ブクログ

ネタバレ

川上さんの本は、なんだか狂気的な気がする。
オーディブルの読み上げだと特に、なにか日記を読んでいるような、誰かに読ませるように書いていないような不思議な感じの文体。

途中までは、つまらなかったんだけど途中からの引き込まれる感じもすごい。

小学生が主人公だけど、脳内は小学生レベルではない感じ(笑)
血が繋がっていても、他人は他人。
なるほど。

たしかにそうなんだけど、たしかにかなりヘビーな内容だと思う。人間の関わり合いって。型にはまった考えとそうでないものがある。

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2022年03月24日

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